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異世界で処刑された召喚士、冷遇された少年に宿りました~最強の召喚獣たちとダンジョン配信で成り上がり、奪われた人生を取り戻す~  作者: 桜塚あお華
第02章 王虎の戦姫編

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第60話 王虎の戦姫はただ一人を求める【ヴィーシャ視点】

 あたしは、強いモノが好きだ。

 それが人間だろうが何だろうが、強ければどうでもいい。

 

 そんな同じ願いを持つ、双子の弟だっている。


 王虎族として生まれたあたしたちは、腹の中にいた頃から多分似たような飢えを抱えていたんだろう。


 ――強いものと戦いたい。

 ――強いものを噛み砕きたい。

 ――強いものに勝ちたい。


 王虎族にとって、それは誇りだ。

 けど、あたしと弟にとっては少しだけ性質が悪かった。

 生きることと戦うことが、最初からほとんど同じだった。

 牙を磨くことも、爪を研ぐことも、自分を強くすることも、全部が当たり前だったし当たり前すぎて退屈ですらあった。

 だって弱いやつを裂いても、腹は膨れても心は満たされない。

 痛みに悲鳴を上げるだけの相手をいくら踏み潰したって、何にも残らない。


 だからずっと、探していた。


 あたしたちを本気にさせる奴。

 あたしたちが本気で殺したいと思える奴。

 そしてできるなら、あたしたちを本気で殺し返してくる奴を。


 そうして出会ったのが、ノアだった。

 最初に見た時から、変な男だった。


 ノアは最初、人間だろうと化け物だろうと手を伸ばし、優しい男だった。

 だからこそ、召喚獣たちはノアに惹かれていったのかもしれない。

 

 でも、それだけじゃなかった。


 あいつは平気な顔で残酷なことをする。

 必要なら敵を容赦なく切り捨てるし、味方を守るためなら躊躇なく誰かを囮にも使う。

 情に厚いくせに、戦場ではどこまでも冷たかった。


 ――だから面白かった。


 強くて、優しくて、そして残酷だった。

 その全部が、矛盾しないままノアの中に入っていた。


 あんな奴は後にも先にも見たことがない。


 あたしはすぐに好きになった。

 もちろん、甘ったるい意味じゃない。

 戦いたいと思った。

 何度も会いたいと思った。

 もっとその顔を見たいと思った。

 追い詰めた時の顔。

 守るものを背負った時の顔。

 本気で殺しにくる時の顔。


 あたしにとって、それはどれも最高だった。


 だから、何度も戦った。


 戦場で会えば殴りかかって、あいつの召喚獣に噛みつかれて、ルクスには露骨に嫌われてはノアには心底面倒そうな顔をされた。

 それでも、あたしにとっては全部が楽しかった。

 弟は時々笑ってた。

 弟も同じように、いや、多分残酷なのは弟の方だ。

 楽しそうに、ノアと戦った。


 好きだとも。

 好きだからこそ殺したかった。

 好きだからこそ、あたしの全力をぶつけたかった。

 あたしの全部を受けて、それでも立っていられるやつなんて、ノア以外にいなかったから。


 ――なのに。


 ノアは、あんな終わり方(人間たちに処刑)してしまった(されてしまった。)


 処刑されたと聞いた時、最初は信じなかった。

 あのノアが?

 戦場を何度もひっくり返して、国を勝たせて、化け物みたいに生き残ってきたあの男が?

 人間どもの法廷で、みっともなく殺される?


 ――冗談じゃないっ!


 でも、それが本当だと分かった時、あたしの中で何かが切れた。

 正直、国ごと滅ぼしてやろうかと思った。

 いや、実際かなり壊した。

 ノアを殺したやつら。

 ノアを追い詰めたやつら。

 あいつを兵器みたいに使って、最後は切り捨てた連中。

 あたしはそいつらを一人ずつ探して、苦しませて、踏み潰して、蹂躙した。

 同族からもやりすぎだと言われたが、弟と一緒にやりすぎるぐらいやった。

 でも知らない。

 あたしからすれば、あれでも足りなかった。

 ノアを殺したんだ。

 あたしの獲物を。

 あたしが何度でも噛みつきたかった相手を。

 あたしが一生追いかけてもいいと思った唯一の男を。


 ――それを、あんなつまんない終わらせ方で奪われた。


 怒りで頭がおかしくなりそうだった。

 全部終わったあとに残ったのは、ひどい空白だけだった。

 もう二度と出会えないんだと思った。

 ノアみたいな存在は、あれきりなんだと。

 強くて、優しくて、残酷で。

 守るために前へ出るくせに、自分が壊れることにはやたら頓着がなくて。

 召喚獣たちにあんな風に本気で慕われて、なお平気な顔で一人になろうとする。


 そんなやつ、二度と現れるわけがない。


 だから、裂け目に飲み込まれた時も、最初はどうでもよかった。

 世界の境目が歪んで、空間が軋んで、気づけば知らない場所へ投げ出されていた。

 けれどそんなこと、あたしには大した問題じゃない。

 どこだろうが、何だろうが、強いものがいるなら壊して進むだけだと思っていた。


 なのに。


 あの広間で、あの気配を見つけた。


 中心にいた人物は、身体は違っていたけれど間違いなく、ノアだった。


 ノアーーあたしの、たった一人の宿敵(こいびと)


 ああ、あの瞬間のことは多分、死ぬまで忘れない。


 嬉しかった。

 本当に嬉しかった。

 胸が裂けそうなくらい、心の底から嬉しかった。

 生きてた。

 会えた。

 またこの目で見られた。

 だったら、やることは一つだ。


 あたしは、ノアを全力で殺しにいく。


 それが礼儀だ。

 それが再会だ。

 それが、あたしにとってノアを好きだって事の証明だ。

 甘い言葉なんかいらない。

 抱きしめる必要もない。

 あたしは戦うために生きてきたし、ノアだってそういう男だ。

 あいつに会えたなら、全力をぶつける。

 あいつが生きているなら、全力で殺しにいく。

 それ以外の再会なんて、あたしたちには似合わない。

 ルクスもガルドも、あたしを見る目が本当に嫌そうで笑えてくる。

 ああいうのも好きだ――あいつらはちゃんと分かってるから、あたしがノアをどう見ていて、ノアがあたしをどう見るかを。

 だからこそ、あんなに殺気立つ。

 でも譲らない、譲るつもりはない――ノアはあたしの獲物だ。

 あたしが追い続けて、あたしが噛みついて、あたしが殺したいと願ったたった一人だ。

 例え世界が裂けても、身体が変わっても、その事実だけは何も変わらない。

 あたしはノアのために生きる。

 ノアと戦うために強くなる。

 ノアを殺すために牙を研ぐ。

 そして最後は、ノアのために戦って死ねたら、それがいちばん綺麗だ。


 それ以上の終わりなんか、いらない。


 だから笑う――嬉しくてたまらないから。

 会えて、戦えて、今また目の前にあいつがいるから。

 あたしは牙を見せて、金の瞳を細めた。


「本気で来いよ、ノア」


 その一言に、あたしの全部を乗せた。

読んでいただきまして、本当にありがとうございます。

「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!

ぜひよろしくお願いします!

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