表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第3部6月から開始】異世界で処刑された召喚士、冷遇された少年に宿りました~最強の召喚獣たちとダンジョン配信で成り上がり、奪われた人生を取り戻す~  作者: 桜塚あお華
第02章 王虎の戦姫編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/86

第39話 班分け

 翌日のホームルームは、いつもより少しだけ落ち着きがなかった。

 教室のあちこちで、班分けの話が続いている。

 誰と組みたいだの、あいつとは嫌だの、実習そのものよりそちらの方が重要らしい。

 俺は机に肘をつき、前方の黒板を眺めていた。

 興味がないわけではない。ただ、期待はしていなかった。

 だって、こういう場では、大抵ろくなことにならないだろう?

 そもそも、俺となんて組む相手なんて居るわけがない。


「ふぁあ……」


 元々は期待していなかったので、思わず欠伸をしてしまった。

 すると、担任が出席簿を机へ置き、気怠そうに言った。


「昨日伝えたダンジョン実習の班分けを発表する。文句は聞くが、基本は変更なしだと思ってくれ」


 すぐに教室の空気が張る。

 担任はそんな生徒たちの反応を気にも留めず、プリントをめくった。


「一班――」


 順に名前が呼ばれていく。

 教室のあちこちで、小さな安堵や不満の声が上がる。


 そして。


「四班。久城乃亜、榊原理央、三枝透花、花宮澪」

「……ん?」


 一瞬、何も音がなくなった気がした。

 次いで、近くの席から「えっ」とか「うわ」とか、そんな小さな声がいくつも漏れる。

 俺は目を閉じたくなる――面倒だなと思ってしまった。

 そう思いながら横を見ると、少し離れた席の榊原理央が明らかに顔をしかめていた。

 声には出していないが、口元がそう言っている。


 ――よりによって、そんな顔だ。


 透花は目を見開いたまま固まった後、何故かガッツポーズをしていた。

 驚いた後、何かを決意したかのような顔をしていた。何故だ?

 花宮は花宮で、プリントと俺たちの顔を見比べながら、小さく肩を揺らした。


「うわ、濃い……」


 あいつだけは、ほとんどそのまま口に出した。

 担任がそれを無視して続ける。


「以上だ。班ごとに実習前の簡単な打ち合わせをしておけ。危険時の役割確認、記録端末の担当、基本の連携くらいは決めておけよ」


 そのように言いながらホームルームは終わった。

 だが、教室の空気は終わらない。

 多分、俺たちの班の方が浮いているのかもしれないと感じてしまった。

 まず、俺が問題児扱いされていること。

 そして久城乃亜は、理央と透花が幼馴染であること。

 花宮がこういう面倒事の中心に巻き込まれやすいこと。

 多分、全部まとめて“濃い”のだろう。


「……最悪だな」


 誰にも聞こえないくらい小さく呟くと、後ろから声が飛んだ。


「いやほんとそれね」


 振り返ると、花宮がいつの間にか机の横に来ていた。


「久城くん、今ぜったい面倒って思ったでしょ」

「ああ、思った」

「否定しないんだ」

「間違いなく、事実だからな」


 そう返すと、花宮は妙に面白そうに笑った。


「まあ、あたしも思ったけど」

「だろうな」

「でも、逆にちょっと楽しそうじゃない?」


 楽しそう、ね。

 俺はその問いに答えなかった。

 花宮のこういう軽さは、時々ありがたいが、信用できるものではない。

 その時、理央が椅子を引く音がした。

 振り向くと、あいつは露骨に気まずそうな顔のまま、こちらへ歩いてくるところだった。

 短い髪。鍛えた身体つき――いかにも前へ出るタイプの人間だが、今はそれ以上にどう声をかけるべきか分からない顔をしている。


「の……久城」

「何だ」

「いや、その……実習のこと」


 言葉が続かない。

 理央は昔から、不器用なところのあるやつだった。

 だが、今の詰まり方には別のものも混ざっている。

 気まずさ。

 後ろめたさ。

 それでも話さなければならないという、妙な責任感。


「班、一緒になったし」

「そうだな、一緒になったな」

「そういうことじゃなくてだな……」


 理央が眉を寄せる。

 その横へ、透花がそっと近づいてきた。


「り、理央くん、いきなりそういう言い方だと」

「いや、俺だって分かってるけど」

「でも」

「でもじゃないだろ」


 そこで花宮が割って入る。


「はいはい、いったん落ち着こ。まだ実習始まってもないのに空気最悪なんだけど」

「お前な……」

「だってそうでしょ?今のままじゃ班行動どころじゃないって」


 花宮は軽い調子のまま言うが、間違ったことは言っていない。

 理央は少しだけ息を吐いて、頭を掻いた。


「……悪い」

「別に構わない。俺は俺でやっていくから気にするな」

「よくないけどね、班になっちゃったんだから協力しないといけないよ、久城くん!」


 花宮が呆れたように言う。

 透花も小さく頷いていた。

 俺は三人を順番に見る。


 榊原理央(さかきばらりお)

 昔を知っている幼馴染。放っておけないくせに、近づき方が分からない男だと認識している。

 しかし、信用できない。

 何せ、この男も奴らと同じだからだ。

 乃亜の事を助ける事をせず、疎遠にしていたのだから。

 俺は静かに息を吐く。

 花宮の言う通り、実習で行動を共にする以上、完全に無視はできない。


「で」


 花宮が手を叩く。


「放課後、軽く打ち合わせしない?このまま本番突っ込むのはさすがにやばいでしょ」

「それは必要だな」


 理央が即座に頷く。

 透花も「そうだね」と小さく同意した。

 視線がこちらへ向く。


「久城くんは?」


 花宮の問いは軽い。

 だが、俺が拒否する可能性も考えている目だった。


「いやだけど、やっておいた方がいいからな。参加する」


 めんどくさそうに答える俺に、理央が微かに反応する。

 すると花宮は「お、ちゃんと乗った」と言って、少しだけ笑った。

 透花も目に見えて緊張を緩める。

 その反応が、少しだけ妙だった。

 俺がそこまで拒絶的に見えているのか、それともこの三人が必要以上にこっちを気にしているのか。

 どちらでも、大差はない。

 前方では、瑠亜が取り巻きたちに囲まれていた。

 優等生の顔を崩さないまま、だがこちらをちらりと見たのは見逃さなかった。

 あいつにとっても、この班分けは面白くないのだろう。

 俺が自分の管理の外にある人間たちと組む。

 それも、幼馴染や花宮のような、少しずつ空気のズレに気づき始めている連中と。


 知ったことではないがな。


 チャイムが鳴り、次の授業の準備が始まる。

 俺は教科書を机へ出しながら、小さく息を吐いた。

 放課後、打ち合わせ――実習そのものより、その時間の方が面倒になりそうだなと感じた。

読んでいただきまして、本当にありがとうございます。

「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!

していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!

ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
班分けはとても意外でした。 学年主任が引き離すと言っていたのが実行されるとは。 担任がそれ無視したら評価に響くからそうしたのか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ