34.the Oracle of Ruin 05
セラフのハッキングが始まってしばらくの時間が過ぎた。リオの視界の端には、彼が行う処理のログ情報が流れていた。情報量とその流れる文字の速さに彼女は眩暈がする。
「複数人発見。マークします。マークした人間の傾向的に、この地域に向かうほど多くなってますね」
セラフの言葉とともに、リオとアンジェの頭にスラムの周辺マップデータが送られてきた。リオもデータを確認する。地図上に赤い点がどんどん増えていく。セラフがマークした該当者であった。その赤い点たちはある一ヵ所に向かうほど多くなっていく。
「そこがネクサスの製造拠点? たぶんベネラがいるところ?」
「今回のハックでわかるのはベネラ製ツール使用者の位置だけですが、状況的にはその可能性が高いでしょう」
ハッキングを止めたセラフのカメラアイは、点滅状態からいつも通りの落ち着きを取り戻していた。
「ありがとうセラフ、助かったわ。真実がどうであれ唯一の手掛かりよ」
アンジェがそう締めくくり出発しようとする。
「私も付いていきましょう。リオのバディですから」
「あのとき限定じゃなかったんだ」
「あなたに何かあれば、ミールにまた怒られますので……」
「ふーん」
リオは何かが引っかかる。だが確信は持てなかった。気を取り直しアンジェの方を向いた。
「とりあえず、ネクサスを買いたくて仕方ないジャンキーっぽいふりして行く?」
「まあ、そんな感じで行くしかないわね」
――――――――――――――――――――
一行は目的地へ進んでいった。人気も少なくなってきており、先ほどの闇市のような活気はなくなっていた。そして見えてきたのは錆びれた工場であった。
その工場が見える物陰に身をひそめながら様子をうかがう。機械音などが響いて聞こえてくることから、ただの廃工場ではなく今も使われているようであった。
「スラム奥地にあるにしては大きな工場ね」
「五十年前に廃棄された『ジェネラル・サイエンス社』の工場ですね。書類上解体破棄とされてますが、まあ施設を適当に横流ししたんでしょう」
「企業がやりそうなことね。時効かしら?」
「会社自体がもう存在しないので罪に問えませんね」
「そう」
「工場の設備的に電子ドラッグ用のチップ量産も可能ですね」
「じゃあ、ここで決まりじゃん」
アンジェたちの会話から、ここが捜査の目的地に違いないとリオは確信した。あとはどう潜り込もうか。そう考えていると、セラフが器用に機械音声のまま慌てた声をあげた。
「ああ、まずい」
「え?」
その突然の声にリオは間抜けな声を漏らしてしまった。視界の隅に映しっぱなしだった地図の様子がおかしい。先ほどまで散らばっていた赤点が、明らかに自分たちの元に集まってきていた。
「バレたかしら?」
冷静そうにアンジェは言うが、その顔はすこしぎこちなく、冷や汗が垂れていた。
「囲まれます。排除しますか?」
「ここでそんな強行手段はまずいでしょ。スラムのど真ん中よ」
セラフの戦闘能力が未知数だが、それなりに力のある超能力者がふたり。しかもサイボーグ化はほぼないとはいえ、ハイエンドモデルのナノマシンで強化もされている。実力行使が出来ないわけではなかった。
近くの赤点がどんどん増えてる……かなりまずい状況では?
リオも自分たちが急速に追い詰められ始めた状況に肝が冷えた。アンジェの指示を窺うため、そちらに視線を向けようとした。
「油断しすぎだ、表のブルジョワ共。諦めて我々についてきてもらおう」
頭を動かそうとしたが後頭部に硬い筒状のものがあたる。見えないが十中八九、銃口を突き付けられているのだろう。
後ろだけでなく続々と人影が姿を現した。その姿には統一性がない。みな中途半端な剝き出しのサイボーグ化をしており、様々なメーカー製の銃で武装をしていた。どれも海賊版だろうか、リオの目には不正な製品である事を示すデータが表示されていた。
『見た目ヘンテコだけど、みんな重サイボーグだよ。どうするアンジェ? 実力行使は厳しいよ……』
『様子を見るわ。プランB考えといて』
『ちょっと――』
アンジェに脳内通信で相談をかけるが、むこうも現状を打破する一手は特にないらしい。
「物騒ね、何者よ」
その言葉に相手の集団の中では、少しだけ小ぎれいにしている中年男性が代表として答えた。重サイボーグらしく巨漢だが、どこか知的な顔つきだ。他との空気感的にも、この中のリーダー的存在であることはリオでも推測できた。
「お前たちがネクサスを追ってきた役人なことは把握している。我らは神の使徒、予言者の守護者。さあ武器を渡せ。大人しく従うのであれば、神の敵といえど丁重に扱おう」
平坦な口調であった。野蛮さは感じられないが、別種の危険な臭いを醸し出している。それに目が赤く、若干挙動がおかしかった。
ネクサスを使ってる? しかもカルトくさい……ということはベネラはカルト関係者? ちょっとショック……。
『面倒になったわね。ネクサスと武装カルト集団が繋がってるなんて』
『今は大人しく従ったほうがいいでしょう。彼らの拠点に入ってから、ビーコンで突入部隊を要請すれば現場も押さえられます』
『その方向でいきましょう』
リオが推していたアーキテクトが、予想以上に胡散臭い連中と繋がっていた。その事実に衝撃を受けている間に、回線上でアンジェたちが方針を決めていた。
「話し合いは終わったか? 喜べ、お前たちは我らが『予言者』に選ばれた。大変名誉なことだ。そこのドローンにも下手なことさせるなよ」
リオたちは顔を見合わせ頷く。腰のスタンニードルガンを地面に落としながら、彼はドローンじゃなく電脳を積んだ人間であることを伝えた。
目の前の男たちは落ちたスタンニードルガンを拾い、それを眺めながら言う。
「非殺傷だが良い銃だな、さすが政府の犬様だ。そのドローンが人間かは信じられないが、まあ、いい。付いてきてもらおうか」
リーダー格の男の言葉と共に、リオ達は後ろから銃口で押され進んだ。そのまま工場の方へと向かい中に入っていく。
「私たちに何の用よ……」
アンジェの言葉に、前を歩く男は少しだけ顔を振り向いたあと、すぐに前を向いた。
「知らんな。我らは予言者の指示でお前たちを連れていくだけだ」
工場内は普通の廃工場といった雰囲気であった。何人もの人が地べたに座っており、老若男女様々だ。置いてある機械達は電源が入っているようだが、何かを生産している様子ではなかった。ネクサスらしいチップも置いていない。手持無沙汰な機械達の無駄に大きな待機音だけが響いていた。
「ここで違法ドラッグ作ってるんじゃないの?」
「ネクサスのことか? あれの生産はもう終わっている。最終ロットをこの前バカな官僚共に売ったところだ」
外務省職員のことだろうか。
歩みは止めないが、質問には律儀に返事をしてくれるようであった。男のあとを付いていきながら、リオはさらに踏み込んでいく。
「そんなペラペラ喋っていいの?」
「隠すことでもない。我々はやましいことなど何もないゆえ」
「……違法ドラッグだけど」
リオのその言葉は鼻で笑われた。
「それはお前たちが勝手に決めたことだろ? この区画に警察は来ない。政府の手が届かないからな」
「舐めてる?」
「いや、舐めてるのはお前たちだ」
案内されるがまま地下への階段に差し掛かると、セラフが突然電源を失ったように落ちていった。
「あっまずい……リオ通信が…」
「セラフ!」
重力制御機能がなくなったことで、ドローンの素体は階段に叩きつけられ、そのまま下の階まで転がっていった。アンジェが慌てて手を伸ばしていたが、間に合わなかった。
セラフは何度も衝撃を受けたようで、一行が下の階に辿り着くとパーツが散乱していた。脳が入っていると思わしき真ん中部分も大きな亀裂が入っており、中が覗き込めた。
――だが、どう見ても中は空っぽであった。
「やはりな。そいつは遠隔ドローンだ。人の脳なんか積んじゃいない。お前たちも知らなかったみたいだが」
男の言葉にアンジェは唖然としていた。彼女にとってはそこそこの付き合いがあったのだろう。
「そんな、セラフが……」
そんなつぶやきに、目の前に転がる金属の塊は答えない。
「今まで話していた『誰か』は、ここにはいなかったってこと?」
その様子を見ていたリオも言葉を漏らしていた。
遠隔操作――じゃあ中身はおそらく……。
そのときリオたちの頭にノイズが走った。外との通信や情報がまったくわからなくなった。突然クラウド上の身体補助システムや、様々な制御バックアップが切れたことにより、ふたりはふらついた。
「やっと効いてきたか。良いインプラント――いや、ナノマシンか? を積んでるようだな」
頭を押さえつつ壁に手を当てながらアンジェが男に尋ねた。
「何これ、連邦軍の最新ジャマー? でもこんな強力なの……。どこから入手してるのよ」
「言ったろ? 我らを舐めていると。ここは神の使徒たる予言者の神殿だ。お前たちが好きにできるわけがないだろう」
男は振り返り、手を大きく広げ天井を見上げながら、悦に浸りつつ語りを止めない。
「ここは祝福による静寂の地。神との対話に雑音は不要だ」
言いたいことを言ったのだろう。先ほどまでの恍惚とした表情は一瞬で元に戻り、男は落ち着きを取り戻していた。
「ジャマーなだけでしょ。おかげで私の頭の中ノイズだらけ」
「神の声を理解できないお前たちには理解できないだろう」
「知らないよ、そんなの」
リオの彼らの語る神を軽視するかのような態度と物言いに、空気が少しだけ緊張感を持ちはじめた。
「リオ相手を挑発しないで」
「アンジェ……」
でも……少しでも何か聞き出さないと。
「『予言者』がベネラなの?」
「政府のエージェントはお喋りが売りなのか? ここからは神殿だ。口を閉じてもらおう」
男が若干苛立ちを滲ませて、皮肉と警告を返してきた。これ以上の会話の明確な拒否であった。
さすがに、これ以上は無理か。
情報収集を諦めたリオはふたたび黙って付いていった。ネットワークに繋がらないため、若干体に違和感があるものの、もう慣れてきていた。ただ予定していた救援要請をまだしていなかったことが、彼女にとって気がかりであった。アンジェもまだしていなかっただろう。
通信が切れて時間がたてばミールが気づくはず――それにセラフの操縦者も動き出すかもしれない。
そこに希望を持ちつつ地下奥へと進まされていくと、ついに今までより広い空間へと辿り着いた。
「お前たちは下がっていろ」
低いがよく通った女性の声が空間に響いた。
「しかし! 予言者に何かあれば神に!」
そんな男たちの慌てた言葉に、声の主はにべもなく言い放った。
「下がれと言った。未来は見えている。お前たちの役目は『彼女』をここに連れてくることだけだ」
先頭に立つリーダー格の男は先ほどまでと違い、目に見えて動揺していた。汗をたらし一歩引き下がった。
「拝命いたしました。謁見だ、失礼のないようにするんだな」
男はうやうやしく暗い空間の先に頭を下げつつ、リオたちに警告をした。その顔はどこか悔し気で、不満気だ。彼女たちを置いて男たちはもと来た道を戻っていった。
「古代のごっこ遊びに付き合う気はないんだけど……」
連れてきた男たちが完全にいなくなると、暗闇から不規則な足音が聞こえた。ゆっくりとだが人影が見えてきた。
「私は『リオという少女』だけを連れてこいと言ったが、仕方ないか。隣の女も関係者だろう。ついでに聞いていくといい」
アンジェに用はない? 自分が目的?
「未来が見えてるにしては、ふたりいることもわからなかったのね」
アンジェが先手でジャブを打つ。会話の主導権を取るつもりだ。
「挑発かい? 悪いけど、それは普通の人間相手の交渉術だ」
そう言って明かりの下にやってきた姿は、ボロ布を纏った女性型のマシナリーだ。ところどころ人工の皮膚が禿げている。扇状的な姿のはずなのに、見えるのは肌ではなく中の機械であった。片方の乳房があった場所はえぐれており、目も片方がなく、奥のカメラアイが赤く光っていた。
「あなたマシナリーなのね――ってことは人工知能の暴走かしら?」
相手がマシナリーとわかり、アンジェの警戒心が少し解けたのをリオは感じた。相手が悪意のある人間ではなく、ただの機械だとわかったからだ。しかし目の前の存在はそんな前提を否定した。
「いいや。私はしっかり自我を持った存在だよ、人間」
「あり得ないわ。人工知能に人格は宿らない。それは証明された確実な事実よ」
アンジェの言葉通りであった。人工知能が生まれて数百年。何度も人類はその知性に「自我が存在するか」あらゆる実験を行った。その結果は自我の否定――フィクションと違い、電子回路に魂が宿らないことは今の宇宙の常識であった。
「私がお前たちの連れてきたドローンと同じ遠隔操作だとでも? この強力な電波ジャマーがある空間でか?」
「それは……」
アンジェは言葉に詰まった。OSIレベルの通信技術でも外部との通信ができない。たとえジャマーに対する特殊な対抗策があったとしても、マシナリーを遠隔操作できるほど高度な通信は、この妨害電波だらけの空間では難しいからだ。
リオは代わりに一歩前へ出た。目の前の存在は未だ肉感的な体つきは健在だが、フレームの耐用限界が見える姿だ。戦闘用でもなく、最新のVTシリーズのようになんでもできる万能型には見えない。武器のない自分たちでも充分制圧が可能だとリオは判断した。
「油断しすぎじゃない? あいつら下がらせて良かったの? 私たちが今すぐあなたを押さえつけることもできるよ」
「壊れかけの愛玩用マシナリーの体に警戒しすぎではないかね? その言葉は事実だが、お前たちは知りたい情報源を潰すのかい?」
「あなたを捕縛したあとでも聞き出せるでしょ」
「もうこの体はボロボロでね。無茶に動かせば私は死ぬだろう。それに外には大勢の信者たちがいる。無事に私の体を持ち帰るのは困難だぞ?」
「……」
沈黙が空間を支配した。目の前の「予言者」とかいうマシナリーに主導権があった。
「話を聞く気になったかな? リオ」
そう言うと、予言者の赤い瞳は「緑」に強く光り始めた。
「!? その目……」
「知っているのか? やはりお前はキーパーソンだな」
緑の目。現代において特別珍しい色合いではない。しかし、リオにとってその瞳の色は最高評議会議長の力を想起させた。
「リオ、何か知ってるの?」
「上司の女は知らないのか。なら間違いないな」
予言者は何かに納得していた。リオは目の前の存在にだんだん不気味さと恐怖を感じていた。
「なんの話をしてるの……」
「この瞳の色を知ってるんだろう?」
「そんな色別に珍しくない」
リオは動揺を隠しつつ会話を続けた。アンジェが知らない以上、自分から最高評議会議長のことを言うのも憚られた。
「そうだな。確かに緑に光る目などありふれているかもしれない。だが、お前にとってその色は特別な意味を持つんだろう?」
「……あなたも同じ存在なの?」
「そうだな、それも含めて話すとしよう。付いて来てくれるかな?」
そう言いながら予言者は腕をあげ、手で空間の奥を指した。
「私にわからない話ばかりね」
「ごめん、アンジェ。たぶん私が勝手に話していいことじゃないかもしれないから」
「わかったわ。どうせこのあとあいつが喋ってくれそうだしね」
リオが言わないのではなく言えないことを察すると、アンジェは肩を竦ませながら深く聞いてこなかった。その後、ふたりは予言者の案内に従い薄暗闇の中をさらに奥へと進んでいった。
脚部の調子が素人目に見ても悪い予言者は、歩く度に足音とは別の異音がした。
「話し終える前に壊れないでよ」
「仕方ないさ、信者共の私の使い方は激しい。加減を知らないからな」
予言者は少しだけ顔をリオ達に振り返り、皮肉気に笑いながら言った。自身の体の使用用途を隠そうともしない。
「汚い……」
「ここで影響力を持つために、使えるものは使ってるだけだ」
――――――――――
そして三人は空間の奥にあった、モニターとケーブルだらけの場所に辿り着いた。お世辞にも最新の機器ではない。スラムに流れ着いた様々な機械、そのあり合わせで作ったサーバー室のようであった。
「さて、私の目的の人物はリオだけだったが、ついでだ。そこのオマケも聞いていくといい」
リオたちふたりの前に、二本のケーブルがまるで意思を持つかのようにやってきた。先端には生体用の共通規格の端子が付いていた。
「繋げってこと?」
「そうだ。口で話すより見せたほうが早いこともあるだろう?」
ケーブルを手に持ったリオは手が止まった。彼女の目の前の存在は、急かすように視線を向けてくる。
「繋げられると思う? あなたはたぶん『ベネラ』なんでしょ。頭に何入れられるかわかったもんじゃない」
「いかにも。私はベネラとしてアーキテクトもしている。副業としてな」
「副業なんだ……」
わかってはいた。しかし、憧れのアーキテクトがカルトの親玉で、謎のマシナリーなことが確定したことで、リオは少なくない衝撃を受けていた。
そんな彼女の代わりのようにアンジェが口を開いた。
「ネクサスも副業ってわけ?」
「それもあるが、信者共を未来の言葉と肉欲だけで引き込むのは大変だ。やはりドラッグというのは人間を操るのに便利だからな」
「なんでもありね」
アンジェは左の前腕の真ん中あたりを反対の手で押した。すると、白く繋ぎ目のない美しい腕に切りこみが入り、一部が小さく開いた。腕の一部を収納用のスペースにしているようだ。そこから小さな機械を取り出した。
そのインプラントの存在を知らなかったリオは驚き、目を見開いた。その様子に気づいたアンジェは「言ってなかったわね」と苦笑いしつつ、小さな機械――中継端子のようなものをリオに手渡した。
「リオ、使い捨ての防壁端子よ。これを中継させれば仕組み上大丈夫なはず」
「うん、ありがとうアンジェ」
そのふたりの様子を黙ってみていた予言者は呆れた様子であった。
「ゲストに何かする気はないがね。まあいい、繋ぐ気になったか?」
リオとアンジェは防壁端子を装着し、ケーブルを首のソケットに差し込んだ。ふたりが繋いだ瞬間、その意識は仮想空間へと飛んで行った。
――――――――――
リオは暗い闇の中に体が浮いていた。アンジェがいない。視界のあちこちには小さな光が無数にあった。
「ここは?」
首を回し、周りを見渡していると滲み出るように、予言者――ベネラが現れた。リオと同じように宙に浮いていた。
「宇宙だ。ほら、右下に近隣の銀河が見えるだろう?」
「アンジェはどこ?」
「彼女は本来の招待客じゃないからな。オーディエンスに徹してもらっている」
「宇宙旅行にでも連れてってくれるの?」
リオのその言葉にベネラは無表情のまま、小さく首を振った。
「いや、時間旅行だ」
「え?」
リオにとって予想外の言葉であった。何を話すつもりなのか。
「私を知りたいのだろ? 何者なのか。何が目的なのか」
「さっさと語ってくれれば、こんなことしなくて済むと思うけど……」
「お前たち現代人は五感しかないからな。こうでもしないと、真に理解ができないだろ? いやお前たちは超能力が使えたから六感か?」
「……何を見せられるの?」
ベネラの口元だけが弧を描く、何かを企むみたいに。
そして、周りの宇宙空間が動き出した。星々が線のように光って流れて消えて、また光が現れる。まるで宇宙の歴史が早送りされてるみたいに。
ベネラの声が直接リオの頭に響いた。
『私たちの物語だ』




