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世界を呪う僕の祝福された物語  作者:


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2/2

何も無いことが救い


 空っぽの部屋の中で割れた花瓶を見下ろし胸を押さえてしゃがみ込み勝手に笑いと涙が出る。


 「は…はははっ!」


 唯一の死すら奪われるのか。安らかな眠りすらこの使えない体には与えられないのか。僕が…僕が一体、何をしたというのか…っ!!


 「……はぁ…」


 笑い続けた僕を怯えたメイドが逃げていく。それを冷ややかに見つめ1人でベッドに手をついて立ち上がる。僕の周りには誰もいない。何もない。それは成長した時でも過去に戻った今でも変わらない。


 まさか、こんなことに少しでも安堵する自分がいるとは思わなかった。


 鏡に手をやりクマだらけのかわいらしさのない痩せこけた目元を撫でる。まるで小さな老人だ。


 窓の外に目をやり下で姉上と兄上が仲睦まじく遊んでいるのが見えて、僕は小さな身体で唯一持てた時計を窓に投げつけ叩き割る。時計が窓の外に落ちて色々な悲鳴と姉上と兄上の泣き声がして、少し胸がすいた。


 「何をやってるんだ、ぼくは」

 ふぅと息をつきかいた汗を腕でぬぐって舌打ちをする。とりあえず過去に戻ったことは確実だ。この痛む体も窓の外の景色も嫌と言うほど記憶に残っている。


 幸いなことに病が進行する前のため多少動いて痛む程度は耐えられる。当時は死ぬほど苦しかったはずだが、成長してからのほうがもっと苦しかった。それに比べればなんてことのない痛みだ。


 目についた上着を羽織って壁に手をつきよろよろと外に歩く。陽が見たかった。もう十数年も見えてない陽が。過去に戻ったことでまだ融通が利く今しかみれないとわかっているから苦しくても痛くても歩き、騒ぎになっているその空間へ向かい裸足のままで外に出た。


 久々に浴びた太陽に肌がひりつく。けれどそんなことが気にならないほど空は青く美しく風が心地よかった。泣き声も騒ぎの声も気にならず空を見上げ目を伏せる。


 僕はこの世界が大嫌いだ、この世界を憎んでいるしこの世界のことを僕ほど呪った奴もいないだろう。けれど今この瞬間見上げた空だけは愛せる気がした。


 「なぜ…」

 産まれてこの方愛なんて実感したことないけれど。


 薄っすらと目を開けて僕の兄と姉である双子の兄妹を見つめ目を細める。


 「僕のこと、みえてたんですね?」


 会いにも来ない、弟のことをみることはできたんだ?と嫌味を言えば、幼い2人の兄妹は僕を見て唖然とする。僕は何度も見ていたのに。ずっと傍に行きたくて2人のことをじっと見ていたのに。2人は僕なんてどうでもよかったんだと証明するようで少し疲れた。


 兄の方は僕が投げた時計のせいで少し怪我をしたようだが、大したことはないだろう。出血も少ないし。


 2人に軽く目を向けていたのを別のところに向けて歩き出す。適当な枝を持ち杖代わりに歩き出すと慌てた周りとそして、僕のせいで怪我をした兄が僕の腕を掴む。



 「何をしているんだよ!!」

 僕の弱った体など関係ないとばかりに強く握られた腕を見下ろして目を細める。


 「てっきり、兄上はぼくのからだにさわりたくないのだと、おもっていました」


 ぎょっとする兄上と姉上。力が緩んだその瞬間に歩くことを再開する。確か昔見た城の地図ではこの先に池があったはずだ。僕の小さな力ない体ならその中に身を投げれば簡単に死ねるだろう。


 よろよろと歩く僕をなぜか兄上と姉上、そして、その側近や護衛たちが慌てて付いてくる。


 無視して池につくと彼らを振り返り首をかしげる。


 「何か用ですか?」


 兄上と姉上がビクッとしてすぐに気を引き締めた顔で僕に言う。


 「ベッドに戻れ!」「ベッドに戻るのよ!」


 二人のセリフにうんざりしながら首をかしげる。

 「なぜ?」

 「それは…父上や母上がそうすべきって言ってたから…」

 「僕のことを決めるのはぼくでもいいではないですか」


 どうせ見る価値もない息子とのことなんてあの人たちは忘れている。ていっと池に飛び込めば二人の悲鳴が水の中でも聞こえた。


 終わらせてもらえないのなら動けるうちに死んでおかねば。またベッドの上でひたすら過ごすなんてこと僕はしたくないから。




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