第41話 不登校支援研修会攻略RTA!④【仮面の裏】
不登校子は、静かに息を整えた。
そして、ゆっくりと言葉を続ける。
「教育長がおっしゃるとおり、配信だけでは本人確認はできません」
「でも…」
「私は、顔を隠したかったから、VTuberになりました」
会場は静まり返っている。
「学校へ行けなくなったころは、自分の顔も、声も、誰にも見られたくありませんでした」
「でも、家でずっとひとりで勉強しているのは、とても孤独でした」
「誰かとつながりたいけど、怖い」
「だから、最初の一歩は、アバターじゃないと踏み出せなかったんです」
一呼吸置く。
校子は、自分の胸にそっと手を当てた。
「アバターという仮面は、私を守ってくれました」
「でも…その中身は、ずっと私でした」
「笑ったのも」
「悩んだのも」
「漢字を書き間違えたのも」
「数学で止まったのも」
「全部、私です」
会場の誰も、言葉を挟まない。
校子はカメラをまっすぐ見つめた。
「今日は、そのことを伝えたかったので、顔を出しました」
その声は、まだ震えていた。
「今日、私は顔を出しました」
「でも、だからといって、今後VTuberをやめるわけではありません」
「ただ…」
「もし今、昔の私みたいに、顔を出すのが怖い子がいるなら」
「その子には、アバターからでもいいから、始めてほしいんです」
校子の言葉を聞いて、横道逸子の頬を、一筋の涙が伝う。
校子は少し言葉を詰まらせながら続けた。
「ごめんなさい…まだ、うまくまとめ切れなくって…」
「大人は、『いつまで隠れているの』って思うかもしれません」
「でも」
「隠れていたから、私は勉強を続けられました」
「隠れていたから、人と話せるようになりました」
「隠れていたから、今日、ここで顔を上げることができました」
静寂。
その静寂が、校子の言葉を会場全体へと運んでいく。
「匿名も、配信も、逃げるためだけじゃありません」
「もう一度、学び、つながり始めるための場所です」
「だから…匿名でも学べる道を、なくさないでください」
「学校に行けない子がいても…どうか…その子に合う学びの方法を…一緒に探してあげてください」
校子は深く頭を下げた。
「以上です」
数秒。
誰一人、動かなかった。
やがて、本丸教育長が、ゆっくりと口を開く。
「…よく分かりました」
その声は、先ほどまでよりも、ずっと穏やかだった。
「制度は制度として考えます」
「しかし、この実践が一人の子どもを支えたことは、否定できません」
「あなたは、そのことを、自分自身の経験で教えてくれました」
校子は小さく頷く。
「はい」
「私だって…このやり方に穴があることは、分かっています」
「でも、その穴があるからこそ、救われる子がいることも、なかったことにはしないでください」
本丸教育長は静かに目を閉じ、数秒後に再び校子を見つめた。
「不登校子さん」
「今日のご意見は、今後の支援を考える上で、大切な視点として受け止めます」
会場のあちこちで、小さく息をのむ音がした。
中壁校長は深く頭を下げる。
「不登さん、ありがとう」
配信画面の向こうでは、通子が口元を押さえ、声にならない涙を流している。
校子は涙をにじませながら、ぎこちなく微笑んでいた。
横道逸子は涙をぬぐいながら、大きく頷いていた。
凡蔵昌平は、腕組みをしたまま、目を閉じて天を仰いでいた。
会場の空気が、静かに変わっていた。
「匿名だからこそ学べる子がいる」
その言葉は、議論ではなく、一人の当事者の経験として参加者の胸に残った。
誰も、すぐには口を開けなかった。
しばらくの間を置いた後、若狭指導主事が静かにマイクを取る。
「第一中学校の皆様、発表、ありがとうございました」
「最後に、本日の報告及び質疑応答を踏まえて、外部有識者から研修会の総括と講評をいただきます」
「株式会社産業教育技術総合研究所 主任研究員 後藤 始様、よろしくお願いいたします」
スクリーンのオンライン会議画面が切り替わった。
スーツ姿の男性が映り、一礼する。
男性がゆっくりと顔を上げる。
校子の表情が凍りつく。
「……え?」
「株式会社産業教育技術総合研究所の後藤です。本日はよろしくお願いいたします」
同時に配信コメントが一件流れる。
501
《それでは、総括を始めさせていただきます》
校子の瞳が大きく開かれた。
「……お父さん?」
〈ステータス〉
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名前:不登校子
状態:不登校(オンラインによる学校接続開始)
【五教科】
英語 Lv.中2 ■■□□□□
数学 Lv.中2 ■■■□□□
国語 Lv.中2 ■□□□□□
理科 Lv.中2 ■■■□□□□
社会 Lv.中2 ■■□□□□
経験値:△取得可能
※経験値反映には学校の確認が必要
派生クエスト
☑オンライン授業へ参加する
【副教科】
音楽 / 美術 / 技術・家庭 / 保健・体育
※学習活動として接続済み
※学校確認・評価対象化を達成
【総合的な学習】
探究テーマ案:VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する
※学校の了解済み NEW!
【スキル】
① 保護者と学校の連携
Lv2 進行中
→学校協議フェーズへ移行
派生クエスト
☑ 担任へ制度利用を相談する
☑ 学習記録の共有方法を決める
☑ 担任と面談する
② ICT等を活用した学習活動
Lv1 解放
→学習ログ作成可能
③ 対面指導の実施
Lv1 解放
→支援センター通所中
※学校との連携・出席扱い手続中
④ 理解度に応じた計画的な学習プログラム
Lv1 進行中
派生クエスト
☑学校とプログラムを共有する
☑校長へ説明する
⑤校長による学習状況の把握
Lv2 解放
→出席扱い判断フェーズ開始
派生クエスト
☑不登校支援研修会に参加
【人間関係(パーティー/NPC)】
501:【謎の分析おじさん】(信頼度:Lv.2)
→後藤始【お父さん?】NEW!
横道逸子:【コスプレネキ】(信頼度:Lv.3)
不登通子:【家ボス(母)】(圧:Max)
模部勇気:【ユウキ】(親密度:2)
☑関係再接続イベント発生
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