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第40話 不登校支援研修会攻略RTA!③【ラスボスのターン!】

 本丸城一教育長の手が、ゆっくりと上がった。

 その瞬間、実演で沸いていた会場の空気が、一気に引き締まる。

 参加者全員の視線が、本丸教育長へ集まった。


「教育長、質問どうぞ」

 若狭指導主事がマイク係にマイクを渡すよう促す。

 マイクを受け取ると、本丸教育長は穏やかな口調で話し始める。

「大変興味深い実践報告でした」

「質問が二点あります」


 中壁校長は静かにうなずいた。

「お願いします」


 本丸教育長は資料を開きながら問うた。

「まず一点目です」

「不登さんのVTuber配信は、もともとは生徒個人が始めた私的活動ですね」

「それを学校が学習活動として位置付けた法的根拠は何でしょうか」


 会場が静まり返る。


 中壁校長は一呼吸置いて答えた。

「本校では、文部科学省通知に基づき、教育支援センターと連携して不登校子さんに最適化した学習プログラムを作成し、それに基づいて支援を行いました」

「その学習プログラムに沿って、自宅でのオンライン学習等も実施しました」

「つまり、既存の出席扱い制度を最大限活用し、その中で、VTuber配信を含めて、継続的に不登校子さんの学習活動を把握・支援したのです」


「ただし、本校が学習活動として認めたのは、VTuber配信そのものではありません」

「VTuber配信は、その学習を実現するための一つの手段です」


 本丸教育長は質問を続ける。

「つまり、学校は生徒の私的な配信を学習活動として扱った、という理解でよろしいですか」


「いいえ」

 中壁校長は首を横に振った。

「学習活動として扱ったのは配信サービスではありません」

「配信という手段を用いて行われた学習活動です」


 本丸教育長は小さくうなずく。

「なるほど…」

「では学校は、その配信に具体的にどのように関与したのでしょう」

「『継続的に確認・支援した』とは、具体的には何を行ったのですか」


 会場のあちこちで頷く姿が見える。

(そう…そこが知りたかった)


 中壁校長は追加の資料を画面に示した。

「担任は配信アーカイブとeラーニングの学習履歴を定期的に確認しました」

「教育支援センター職員は週一回の面談で配信記録と学習記録、理解度等を確認し、その内容を学校と共有しています」

「確認した内容について、学校から指導が必要な場合は、その都度本人及び保護者にフィードバックしました」


 本丸教育長は質問を重ねる。

「定期的とは、どの程度でしょう」

「担任は毎回リアルタイムで配信を見ていたのですか」


「いいえ」

 中壁校長は即答した。

「配信はアーカイブで保存されますので、担任は月に1〜2回必要な場面を視聴して、教育支援センターからの情報と突合《とつごう》しながら、学習履歴や配信内容を確認しました」

「その際、配信内容が学習活動として評価可能かどうかについては、必要に応じて各教科の担当教員の判断を仰いでいます」


 本丸教育長は腕を組み、数秒考えた。

 やがて静かに口を開く。

「…制度上の説明は理解しました」


 会場に小さく息を吐く音が広がる。


 しかし、本丸教育長は続けた。

「では、二点目です」

 その一言で、再び空気が張り詰めた。


「学校は、この配信者が本当に不登校子さん本人であることを、どのように確認したのですか」


 会場がざわつく。

(そこか…)

(本人確認…)


 中壁校長の表情がわずかに引き締まる。

 本丸教育長は続ける。

「VTuberアバターでは本人の顔は映りません」

「仮に保護者や第三者が代わりに操作していた場合、学校はそれを見分けられるのでしょうか」


 会場が静まり返る。


 中壁校長は落ち着いて答えた。

「本人確認は配信だけで行っているわけではありません」

「教育支援センターでの定期面談や、担任とのオンライン面談の中でも配信内容を継続的に本人に確認しています」 

「本人確認は、これらの面談や、eラーニング学習状況の記録確認等と組み合わせて総合的に判断しています」

「VTuber配信だけを根拠に本人による配信、学習と認定したことはありません」


 本丸教育長は静かに問い返す。

「つまり、学校はVTuber配信単独では本人確認できない、と認めるのですね」

「そうなれば、視聴者にも本人かどうかは分からない」


 中壁校長は迷わなかった。

「はい。そのとおりです」


 会場がどよめく。

 会場のあちこちで小さなざわめきが起こる。


(認めるのか……)

(逃げなかったな)

(本丸教育長も、厳しい質問をする…)


 会場は静まり返る。

 誰も続けて発言しない。


 本丸教育長も、中壁校長を見つめたまま動かない。


 重苦しい沈黙だけが流れる。


 若狭指導主事が、マイクを手に取って質疑応答を打ち切ろうとした。


 そのときだった。


 オンライン会議画面から、小さな声が響いた。


「校長先生」


 全員が画面を見る。

 不登校子だった。


「私から、お話ししてもいいですか」


 中壁校長は驚きながらも頷く。

「不登さん…」

「もちろんです」


 画面が切り替わる。


 そこには、宵闇ユラのアバターが映っていた。




 次の瞬間。




 アバターが、静かに消える。




 画面に映ったのは、一人の少女。




 ジーンズ。



 灰色のフーディ。



 少し顔にかかった前髪。



 緊張で震える肩。



 いつもの、不登校子だった。



 会場中が息をのむ。



 横道逸子は思わず口を押さえた。

「校子ちゃん…!」


 配信画面の向こうでは、不登通子が立ち上がる。

「校子!? 何してるの!?」

「顔、映ってるよ!」


 校子は小さくうなずいた。

「うん」

「わかってる」

 足も、手も、声も震えていた。


 会場は静まり返る。


 誰一人として言葉を発しない。


 校子はゆっくりと画面越しに教育長を見つめた。

 そして静かに口を開いた。


「……教育長」

「私から、お話しさせてください。」


 会場の空気が、再び大きく動き始めた。




〈ステータス〉

_________________________________


名前:不登校子(ふとう・きょうこ)

状態:不登校(オンラインによる学校接続開始)


【五教科】

 英語 Lv.中2 ■■□□□□

 数学 Lv.中2 ■■■□□□

 国語 Lv.中2 ■□□□□□

 理科 Lv.中2 ■■■□□□□

 社会 Lv.中2 ■■□□□□

経験値:△取得可能

※経験値反映には学校の確認が必要

 派生クエスト

☑オンライン授業へ参加する


【副教科】

 音楽 / 美術 / 技術・家庭 / 保健・体育

※学習活動として接続済み

※学校確認・評価対象化を達成


【総合的な学習】

探究テーマ案:VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する

※学校の了解済み


【スキル】

① 保護者と学校の連携

Lv2 進行中

→学校協議フェーズへ移行

 派生クエスト

☑ 担任へ制度利用を相談する

☑ 学習記録の共有方法を決める

☑ 担任と面談する


② ICT等を活用した学習活動

Lv1 解放

 →学習ログ作成可能


③ 対面指導の実施

Lv1 解放

→支援センター通所中

※学校との連携・出席扱い手続中


④ 理解度に応じた計画的な学習プログラム

 Lv1 進行中

派生クエスト

☑学校とプログラムを共有する

☑校長へ説明する


⑤校長による学習状況の把握

Lv2 解放

→出席扱い判断フェーズ開始

派生クエスト

☑不登校支援研修会に参加


【人間関係(パーティー/NPC)】

501:【謎の分析おじさん】(信頼度:Lv.2)

横道逸子:【コスプレネキ】(信頼度:Lv.3)

不登通子:【家ボス(母)】(圧:Max)

模部勇気:【ユウキ】(親密度:2)

☑関係再接続イベント発生

_________________________________




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