↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/45

第39話 不登校支援研修会攻略RTA!②【魔法使いの攻撃!】

 市民会館大会議室。

 ステージのスクリーンが二分割されていた。

 左側には、宵闇ユラの配信待機画面。

 右側には、教育委員会主催のオンライン会議画面。

 オンライン会議画面の発表者欄には、「不登校子」の文字だけが表示されていた。


 自室のマイクの前で不登校子は、小さく息を吸った。

「え…え〜と…」


 会場が静まり返る。


「き、今日は、このような発表の機会をいただき、ま…誠にありがとうございます」


 しん、とした空気。


(や、やりづれえ〜!!)

(こんな人数の先生相手とかムリゲーだって……!)

(でも、逃げちゃだめだ)

(今日は、私がこの場を変えなきゃ!)


 勇気を振り絞るように顔を上げた。


「えっと…まず皆さん、VTuber配信で勉強って『何だそれ?』って思ってますよね?」


 あちこちで参加者がうなずく。


「実は、それ、うちの校長先生にも聞かれました」

 少し背筋を伸ばし、校長の口調を真似する。

「なぜVTuber配信だったのですか」

 さらに続ける。

「eラーニングだけでは駄目だったのでしょうか」


 校長たちの間から小さな笑いが起きた。

(よし…)

 少しだけ肩の力が抜ける。


「配信って、録画した映像を見せることじゃないんです」

「リアルタイムで、誰かとつながること」

「だから今日は、皆さんにも実際に配信へ参加してもらいます」


 スクリーンいっぱいにQRコードが映し出された。

「こちらが、本日の限定公開配信です。アカウントをお持ちの方は、お手持ちのスマホやタブレットで読み取ってください」


 会場中でスマートフォンが一斉に持ち上がる。


《読み込めました》

《入れました》


 配信画面の参加者一覧へ、次々とアカウントが表示されていく。


 校子はそっと一覧を見る。

(…501)

 もうログインしてる。

 胸が少しだけ軽くなった。

(501がいる)

(配信なら…ここは私のフィールドだ)

(やるぞ!)


「それでは――配信開始です!」

 待機画面が切り替わる。

 3Dのアバター、宵闇ユラが大きく手を振った。

「はーい!こちらが私が普段使っているアバター、宵闇ユラです!よろしくお願いしまーす!」

 アバターがぺこりと頭を下げる。


「おお…」

 会場から感嘆の声が漏れた。


「じゃあ最初は、漢字と数学です!」

 画面が切り替わる。

 左側にはアバターの宵闇ユラ。

 右側には白いメモ画面。

「漢字を書くときは、こんな感じでペンタブレットを使います」

 さらさらと文字を書き始める。

『疲』

「あれ?」

 首をかしげる。

「書き順……これで合ってましたっけ?」


 会場から思わず声が飛ぶ。

「違う違う!」

「どなたかコメントで教えてくださーい!」

 一瞬遅れて会場がどっと笑う。


 すぐにコメントが流れた。

《やまいだれは上の点からですよ〜》


「ありがとうございます!」

 にっこり笑って書き直す。

「こんな感じで、コメントを見ながら勉強してます」


 続いて画面がeラーニングへ切り替わる。

「数学は、eラーニングの画面を配信しながら解くことが多いです」

 画面に問題が映る。


«次の連立方程式の解を、グラフを書いて求めなさい»

① 2x+y=5

② x+3y=0


「まず式を変形します」

 ペンで式を書いていく。

y=−2x+5

y=−1/3x

「ここからグラフを書いて……」

 丁寧に二本の直線を書き込んでいく。

 交点に丸を付ける。

 思わず教員たちもつぶやく。

「ほお…」

「計算の過程が見えるのがいいですね」


「答えは、x=3、y=−1です!」


 自然と拍手が起こる。

「応援はコメント欄でお願いしまーす」


《なるほど》

《これはオンラインでも指導しやすそう》

《グッド》


 教員たちも少しずつ配信の雰囲気に慣れていく。


「次は、私の好きな家庭科です!」

 画面が切り替わり、右側に手元とミシンが映し出される。そして左側には、宵闇ユラのアバター。

「私はコスプレ衣装づくりが趣味なので、裁縫の過程も動画で配信してます」

 軽快な音を立てながらミシンを走らせる。

「こんな感じで、手元を映しながら説明してます」


 前列に座っていた、女性の校長が思わず声を上げた。

「まあ!その衣装、ご自分で?」

「はい」

 少し笑って続ける。

「先生、ご意見はコメントでお願いします」

「あっ、そうだったわね」

 会場が笑う。


 すぐにコメントが流れる。


《素晴らしい作品です!》


「ありがとうございます!」

 少し照れながら尋ねる。

「ちなみに先生、この作品なら何点いただけますか?」


《採点中です(笑)》

《家庭科担当より拍手》

《グッド!》

 ……

 少し間があってから、女性の校長からコメント。

《99点!》


「えっ、一点引かれた理由は?」

 女性の校長も思わず笑いながらスマートフォンに打ち込む。

《私より上手だから(笑)》


 会場が爆笑した。

 笑い声がしばらく止まらない。


「最後は体育です!」

 アバターの背景が体育館へ変わる。

 宵闇ユラの全身が映る。

「最近のAIってすごくて、カメラだけで動きを認識してくれるんです」

「ちょっとカメラの前で動いてみますね」


 屈伸。

 腕振り。

 ジャンプ。


 カメラの前の校子が動くと、アバターも同じ動きを再現する。


「おおーっ!」

 会場がどよめいた。


「ここで本当は、私の渾身の体育配信をお見せしたかったんですが…」

 少し肩をすくめる。

「凡蔵先生から『配信事故になるからやめておけ』って止められました」


《見たかった(笑)》

《凡蔵先生ナイス判断》

 また大きな笑いが起きる。


 壇上で凡蔵が苦笑いした。

「校子のやつ…さっきまでガチガチだったのにな」


「こんな感じで…人とつながり、コミュニケーションをとりながら勉強できるのが、配信です」

「実際の配信では、リスナーの方から別の視点でアドバイスが寄せられることもあります」


 配信画面に、過去の録画が30秒~1分程度の短いクリップとして流される。


「例えば…」

 数学の配信録画クリップでは、宵闇ユラがeラーニングの問題を解いていたが、途中で手が止まる。

「これは…分かりませんわ…」

「なんでここ、マイナスになるんだろう…」


 一瞬、校子が録画再生を止める。

「ちょっと詰まってしまいましたね…」


 そのあと映像が再開されると、ユラに対してリスナーからコメントが寄せられていく。


《途中式をもう一度見てみよう》

《天秤で考えると分かるよ》

《私は借金で考えて覚えた》


「あっ! マイナスを借金って考えるのか! そっちの方が分かる!」


 会場は静まり返っていた。


「このように、オンライン上でも学びのきっかけが生まれていました」

「もちろん、すべてのコメントが正しいとは限りません」

「最終的な学習内容の確認は、教科書やeラーニングの解説を参考にひとつひとつ確認しています」


 実演を見終えて、再び研修会参加者からのコメントが流れ始める。


《学習意欲を引き出す工夫がよく分かりました》

《途中でどこにつまずいたか確認しやすいですね》

《コメントをそのまま正解としない運用は安心しました》

《担任の先生は配信をどのように確認されているのでしょうか》

《配信は学校の教育活動として、どのように位置付けていますか》


 中壁校長は小さく息をついた。

(さすが不登さん…)

(ここまでは、うまくいった)

(問題は、この後だ)


 中壁校長の視線は一人の人物へ向けられた。

 会場前方、主催者席。

 教育長・本丸城一《ほんまる・じょういち》。


 本丸教育長は腕を組んだまま、黙ってスクリーンを見つめていた。

 その表情から感情は読み取れない。


 中壁校長が発表を締める。

「では、これで本校の発表を終了します。ご静聴ありがとうございました」


 会場から大きな拍手が送られる。


 司会の若狭指導主事が、つなぐ。

「それでは、質疑応答に移ります。今の発表に対して、ご質問は?」


 本丸教育長の手がすっと上がった。


 中壁校長、凡蔵が顔を見合わせる。

(来たな…!)



〈ステータス〉

_________________________________


名前:不登校子(ふとう・きょうこ)

状態:不登校(オンラインによる学校接続開始)


【五教科】

 英語 Lv.中2 ■■□□□□

 数学 Lv.中2 ■■■□□□

 国語 Lv.中2 ■□□□□□

 理科 Lv.中2 ■■■□□□□

 社会 Lv.中2 ■■□□□□

経験値:△取得可能

※経験値反映には学校の確認が必要

 派生クエスト

☑オンライン授業へ参加する


【副教科】

 音楽 / 美術 / 技術・家庭 / 保健・体育

※学習活動として接続済み

※学校確認・評価対象化を達成


【総合的な学習】

探究テーマ案:VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する

※学校の了解済み


【スキル】

① 保護者と学校の連携

Lv2 進行中

→学校協議フェーズへ移行

 派生クエスト

☑ 担任へ制度利用を相談する

☑ 学習記録の共有方法を決める

☑ 担任と面談する


② ICT等を活用した学習活動

Lv1 解放

 →学習ログ作成可能


③ 対面指導の実施

Lv1 解放

→支援センター通所中

※学校との連携・出席扱い手続中


④ 理解度に応じた計画的な学習プログラム

 Lv1 進行中

派生クエスト

☑学校とプログラムを共有する

☑校長へ説明する


⑤校長による学習状況の把握

Lv2 解放

→出席扱い判断フェーズ開始

派生クエスト

☑不登校支援研修会に参加


【人間関係(パーティー/NPC)】

501:【謎の分析おじさん】(信頼度:Lv.2)

横道逸子:【コスプレネキ】(信頼度:Lv.3)

不登通子:【家ボス(母)】(圧:Max)

模部勇気:【ユウキ】(親密度:2)

☑関係再接続イベント発生

_________________________________





お読みいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブクマ、評価や感想をいただけると今後の執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。