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第38話 不登校支援研修会攻略RTA!①【前衛の攻撃!】

 市民会館大会議室。

 各校による不登校支援の実践報告が、次々と進んでいく。


 不登校特例校。

 教育支援センターとの連携。

 別室登校。

 校内教育支援センター。


 参加者たちは真剣な表情でメモを取り、ときおり質問を書き留めていた。

 しかし、その様子をオンラインで見つめる不登校子には、内容がほとんど頭に入ってこなかった。


(ダメだ…)

(心臓が、バクバクする…)

 手のひらにはじっとりと汗がにじむ。

 マイクはミュート。カメラはオフ。

(逃げたい…ログアウトしたい…ホントに私が喋っていいんだろうか…こんな真面目な会議で…)


 画面の向こうでは、研修会が淡々と進んでいく。

 やがて司会席の若狭指導主事が立ち上がった。

「それでは最後の実践報告です」

 会場の視線が前方へ集まる。

「『オンライン授業参加とVTuber活動を活用した不登校支援の実践』と題しまして、市立第一中学校、中壁校長先生、凡蔵先生、よろしくお願いいたします」


 拍手が起こる。

 中壁校長は演台へ進み、ノートパソコンを操作した。

 スクリーンに発表資料が映し出される。

 演台の少し後ろには担任の凡蔵が控えていた。


 中壁校長は会場を見渡し、静かに口を開いた。

「それでは、発表を始めさせていただきます。」


 一枚目のスライドが切り替わる。

『対象生徒の概要』


「対象の不登校子さんは、中学二年生への進級後、担任・校長との面談のため登校した以外、登校しておりません」


 会場は静まり返っている。

「本校では、教育支援センターと連携し、不登校子さんの学習を三つの柱で支えました」


 次のスライド。

『支援の全体像』

・eラーニングによる教科学習(自宅・支援センター内)

・オンライン授業参加

・VTuber活動を活用した実技・総合学習


「社会を除く五教科はeラーニング、社会はオンライン授業への参加、実技教科と総合的な学習の時間ではVTuber活動を活用しました」


 会場のあちこちから小さなざわめきが起こる。

「VTuber…?」

「配信を授業に?」

「実技はどうやったんだ?」


 中壁校長は落ち着いたまま続けた。

「本日の発表は三部構成です」

「制度設計を私が説明し、オンライン授業の実際を担任の凡蔵先生が紹介します」

「そして最後に、不登校子さん本人による実際の配信をご覧いただきます」


 ざわめきが一段と大きくなる。

「本人が?」

「オンライン参加してるのか?」


 司会の若狭指導主事がマイクを取った。

「不登校子さんは、ご本人から発表参加の希望があり、保護者の了承を得てオンラインで参加されています」

「ご質問は、発表終了後の質疑応答でまとめてお受けいたします」


 ざわついていた会場は再び静かになった。


 中壁校長は資料を切り替える。

「まず、eラーニングにつきましては、自宅および教育支援センターで、学校配布端末を用いて学習しました」

「社会については、オンライン会議システムを活用し、教室の授業へ参加しています」


 スクリーンには、学習の流れと評価方法が図で示される。


「評価方法ですが、社会は授業参加状況、ワークシート、そして定期テストにより評価しました」

「定期テストは、教育支援センターにおいて、職員立ち会いのもと実施しています」


 数人の校長が顔を上げた。


「一方、eラーニングで学習した教科については、学習進度に合わせて学校作成の単元テストを実施し、理解度を確認しました」


 参加者たちが一斉に資料へ書き込み始める。

(定期テストじゃないのか)

(単元ごとに評価する?そういうやり方もありなのか?)


「eラーニングの進捗は、担任と教育支援センターが定期的に確認しました」

「学習状況は記録として蓄積し、必要に応じて学習プログラムを見直しました」


 今度は腕を組んで聞いていた他校の教頭がゆっくりとうなずいた。

(ここまで仕組み化しているのか…)


 中壁校長は次のスライドを映す。

『実技教科・総合的な学習の時間の評価』


「実技教科および総合的な学習の時間についても、通常の生徒と同じく、学習目標と評価基準に基づいて判断しました」

「まず、各副教科の知識確認のための筆記テストは、教育支援センターで実施しました」

「支援センター職員に立ち会っていただき、答案は学校へ提出。各教科担当が採点しています」


 スクリーンに、校子の学習記録が映し出される。


「しかし、実技教科の評価は、筆記テストの点数だけで決まるものではありません」

「作品、制作過程、活動記録、振り返りなども含めて、各教科で求められる知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度を確認しました」

「具体的にお示しします」


 次の資料が表示される。

『美術・技術家庭』


「美術では配信のサムネイル制作や衣装制作デザインについて評価しましたが、完成した作品だけを見るのではありません」

「デザインの工夫、材料の選択、制作計画、作業工程、完成後の振り返りなどを記録し、学習成果として確認しました」


「家庭科では調理や裁縫の手順を記録し、美術や技術では制作過程を動画や記録資料として残しています」

「本人の顔を映すことなく、学習の過程を確認できるよう工夫しました」


 さらに画面が切り替わる。

『保健体育』

「体育では、単元に応じてストレッチ、ダンス、体力づくり運動などをアバターで実施し、アバターの全身を映した映像を記録として活用しました」

「活動動画や振り返りを通して、運動への取組や改善点を確認しています」


「また、VTuber活動は、美術、技術・家庭、国語、情報活用など、各教科で身に付けた知識や技能を活用する教科横断的な学習活動として位置付けました」

「その上で、総合的な学習の時間では、『VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する』というテーマで探究活動に取り組みました」


 スクリーンに探究テーマが表示される。

『VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する』


「こちらについては、探究活動の過程を評価するため、ルーブリック(評価基準表)を作成しました」


 画面に評価項目が表示される。

・課題設定

・情報収集

・整理・分析

・まとめ・表現

・振り返り


「評価したのは、配信の視聴者数や人気ではありません」

「自ら課題を設定し、情報を集め、考え、表現し、学びを振り返る。その探究の過程と成果を評価しています」


 中壁校長は会場を見渡す。

「つまり、VTuberだから評価したのではありません」

「確認テスト、提出物、作品、活動記録、そして探究活動の記録を通して、各教科等で求められる力がどのように身に付いたかを確認しました」


 会場のそこかしこでメモをとる音がする。

(不登校だから、特別な基準を作ったわけではないのか)

(学ぶ場所や方法は違っても、評価するのは教科で身に付けたもの…?)

(これは…)

(応用できるかもしれない)

(Vtuberうんぬんより、進捗にあわせて評価する仕組みづくりのほうがうちには向いてるか…?)


 参加者たちは真剣な表情でスクリーンを見つめていた。

 中壁校長は一礼すると、凡蔵へ視線を向けた。

「それでは、オンライン授業の実際について、担任の凡蔵先生からご説明いたします」


 凡蔵が演台へ立つ。

 少し照れくさそうに頭をかいた。

「私のほうからは、実際の運用をご紹介します」


 スライドが切り替わる。

『オンライン授業の実際』

 教室の映像がスクリーンいっぱいに映し出された。

「私の授業は、ノートパソコン内蔵カメラとマイクを使ってオンライン会議システムで配信しています」

「授業への参加確認は、ログインとチャットへの書き込みで行っています」


 スクリーンには、オンライン授業の参加者画面が表示される。

 不登校子のプロフィール画像には、銀色の髪をした少女――宵闇ユラ。


「本人のアバターか…?」

 会場がざわつく。

「ああ…プロフィール画像は本人の希望です」

 凡蔵は苦笑いした。

 会場から小さな笑いが起こる。

 張り詰めていた空気が少しだけ和らいだ。


「授業参加態度については、授業後にGoogleフォームでワークシートを提出してもらっています」

 スクリーンには実際の提出画面が映る。


「グループ討議への参加は難しいですが、チャットで送られた意見は授業中に紹介しています」

「最初はクラスの反応も心配でした」

 凡蔵は少し笑った。

「でも、生徒たちは思った以上に自然に受け入れてくれました」


 参加者たちもうなずく。

(意外と普通なんだな)

(これならうちの学校でもできそうだ)


「なお、社会科の定期テストは、他の生徒と同じ問題を受験しています」

「教育支援センターで職員立会いのもと実施するか、私がオンラインで監督するなど、学校が認めた方法で行っています」


 先ほどまで難しい表情をしていた参加者たちの表情が、少しずつ納得へと変わっていく。

(なるほど…)

(評価までちゃんとつながっているんだな)


 凡蔵は中壁校長へ視線を送った。

 中壁校長は軽くうなずき、再び演台へ立つ。

「それでは最後に」


 会場が静まり返る。


「本人の配信をご覧いただきます」


 照明が少し落ちた。

 スクリーンの表示が切り替わる。


 第3部 『実際の配信』


 画面が二分割される。

 左側には配信画面。

 右側には研修会のオンライン会議画面。


 オンライン会議画面の発表者欄に表示されている名前は――


「不登校子」


 会場の誰もが息をのむ。

 マイクがオンになる。

「こ……こんにちは。不登校子です」


 会場中の視線が、一斉にスクリーンへ注がれた。





〈ステータス〉

_________________________________


名前:不登校子(ふとう・きょうこ)

状態:不登校(オンラインによる学校接続開始)


【五教科】

 英語 Lv.中2 ■■□□□□

 数学 Lv.中2 ■■■□□□

 国語 Lv.中2 ■□□□□□

 理科 Lv.中2 ■■■□□□□

 社会 Lv.中2 ■■□□□□

経験値:△取得可能

※経験値反映には学校の確認が必要

 派生クエスト

☑オンライン授業へ参加する


【副教科】

 音楽 / 美術 / 技術・家庭 / 保健・体育

※学習活動として接続済み NEW!

※学校確認・評価対象化を達成 NEW!


【総合的な学習】

探究テーマ案:VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する

※学校の了解済み NEW!


【スキル】

① 保護者と学校の連携

Lv2 進行中

→学校協議フェーズへ移行

 派生クエスト

☑ 担任へ制度利用を相談する

☑ 学習記録の共有方法を決める

☑ 担任と面談する


② ICT等を活用した学習活動

Lv1 解放

 →学習ログ作成可能


③ 対面指導の実施

Lv1 解放

→支援センター通所中

※学校との連携・出席扱い手続中


④ 理解度に応じた計画的な学習プログラム

 Lv1 進行中

派生クエスト

☑学校とプログラムを共有する

☑校長へ説明する


⑤校長による学習状況の把握

Lv2 解放

→出席扱い判断フェーズ開始

派生クエスト

☑不登校支援研修会に参加


【人間関係(パーティー/NPC)】

501:【謎の分析おじさん】(信頼度:Lv.2)

横道逸子:【コスプレネキ】(信頼度:Lv.3)

不登通子:【家ボス(母)】(圧:Max)

模部勇気:【ユウキ】(親密度:2)

☑関係再接続イベント発生

_________________________________




お読みいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブクマ、評価や感想をいただけると今後の執筆の励みになります。

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