第37話 不登校支援研修会スタート!配信者未ログイン?
市民会館の2階。大会議室には、「教育委員会主催 不登校支援研修会」の垂れ幕がかかっていた。
前方には長机が並び、中央には演台。
ステージにはスクリーンが下ろされ、プロジェクターの準備が整っている。
受付を終えた校長や教員たちが、資料を片手に席へ着いていく。
開始時刻まで、あと数分。
司会者席の近くでは、中壁例一校長と担任・凡蔵昌平が、事例報告者席に並んで座っていた。
机の上には、自分たちの発表資料。
「オンライン授業参加とVTuber活動を活用した不登校支援の実践」
凡蔵は、資料を見るたびに落ち着かない気持ちになった。
そのときだった。
「失礼します」
スーツ姿の若い女性が、穏やかな笑顔で近づいてくる。
「教育支援センターの横道です。不登校子さんの支援担当をさせていただいております」
中壁校長は立ち上がり、丁寧に頭を下げた。
「あなたが、横道さんですか。うちの不登さんが、大変お世話になっております」
「いつも校子がお世話になっております」
凡蔵も続けて頭を下げる。
横道は少し笑って言った。
「校長先生、凡蔵先生とは、直接お会いするのは初めてですね」
「そうですね」
中壁校長がうなずく。
凡蔵は苦笑しながら肩をすくめた。
「学習プログラムとか、教育支援センターでの学習記録の確認とかでは、電話とメールでさんざんやり取りしてましたけどね」
「そうでしたね」
横道は思い出したように笑う。
「凡蔵先生、ずいぶん丁寧にチェックしてくださいましたもんね」
「いえ…当然のことをしただけです」
照れ隠しに頭をかく凡蔵。
その様子に横道も中壁校長も思わず笑みをこぼした。
少し場が和んだところで、横道が資料を見ながら口を開く。
「今日の講評、外部の先生なんですね」
中壁校長も手元の次第に目を落とした。
「ええ。民間シンクタンクの研究員だそうです」
「珍しいですね」
「教育委員会も、何か考えがあるのでしょう。」
中壁校長は穏やかに答えた。
凡蔵は次第から目を離し、小さく息をつく。
「それより…」
二人が凡蔵の方を振り向く。
「校子は、本当にオンライン参加、大丈夫なんでしょうか」
凡蔵は会場前方に設置された大型モニターの画面を見ながら、所在なげにつぶやいた。
会場の大型モニターには、オンライン会議にログインした参加者の氏名が表示されているが、不登校子の名前はまだなかった。
「あいつのことだから…急にばっくれるってことは、ないでしょうけど…」
横道は、くすっと笑う。
「ふふ…凡蔵先生も、校子ちゃんが心配なんですね」
「まあ…担任ですから」
凡蔵は少し照れくさそうに答えた。
「大丈夫だと思いますよ。今日は、お母さんも一緒についていてくださるそうですし」
「そうですか…」
その一言で、凡蔵の表情が少しだけ和らいだが、視線は何度もモニターへ向かっていた。
大型モニターには、まだ「不登校子」の名前は表示されない。
その頃――
不登校子は、自宅のトイレにこもっていた。
母の通子が声をかける。
「ちょっと!そろそろ研修会始まる時間だよ!大丈夫なの!?」
「…お腹痛い…」
あきれる通子。
「まったく…昨日はあんなに鼻息荒かったくせに…」
(いや…昨日は大丈夫だったんだよ…昨日は…)
(今日になったら、急に緊張してきて…)
(うう〜やばい…時間が…)
その時、校子のスマホにLINEの通知が表示された。迷わず通知をタップする。
模部勇気:
今日だったよね。研修会
凡蔵先生から聞いた。
大勢の先生の前とか緊張すると思うけど、校子なら大丈夫。
がんばれ。
(勇気くん…)
(そうだよね…)
(いつもの配信だと思えば、怖くない!…はず)
トイレのドアを開く音。
校子の自室の前で待っていた通子は、ため息をついた。
「大丈夫?」
うなずく校子。
「だ…だいじょうぶ!」
研修会会場では、会場の時計が開始時間一分前を示していた。
前方の司会席に、一人の男性が立つ。
マイクのスイッチが入り、会場に声が響いた。
「定刻となりましたので、予定どおり、教育委員会主催・不登校支援研修会を始めさせていただきます」
司会は教育委員会指導主事・若狭だった。
ざわついていた会場が静まり返る。
その時、大型モニターに、新しい参加者名が表示された。
不登校子
「やれやれ…間に合ったか…」
ため息をつく凡蔵。
横道は時計を見ると、小さく会釈した。
「もう始まりますね。それではまた、後ほど」
「よろしくお願いします」
中壁校長とうなずき合い、凡蔵も軽く頭を下げる。
横道は教育支援センター職員席へ戻っていった。
若狭指導主事が進行を続ける。
「それでは最初に、市内中学校における不登校支援の実践報告をお願いいたします」
スクリーンに一校目の学校名が映し出される。
市内各校の実践報告が、順番に始まった。
〈ステータス〉
_________________________________
名前:不登校子
状態:不登校(オンラインによる学校接続開始)
【五教科】
英語 Lv.中2 ■■□□□□
数学 Lv.中2 ■■■□□□
国語 Lv.中2 ■□□□□□
理科 Lv.中2 ■■■□□□□
社会 Lv.中2 ■■□□□□
経験値:△取得可能
※経験値反映には学校の確認が必要
派生クエスト
☑オンライン授業へ参加する
【副教科】
音楽 / 美術 / 技術・家庭 / 保健・体育
※学習活動として接続可能性あり
※学校確認・評価対象化は未達成
【総合的な学習】
探究テーマ案:VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する
※学校との協議中
【スキル】
① 保護者と学校の連携
Lv2 進行中
→学校協議フェーズへ移行
派生クエスト
☑ 担任へ制度利用を相談する
☑ 学習記録の共有方法を決める
☑ 担任と面談する
② ICT等を活用した学習活動
Lv1 解放
→学習ログ作成可能
③ 対面指導の実施
Lv1 解放
→支援センター通所中
※学校との連携・出席扱い手続中
④ 理解度に応じた計画的な学習プログラム
Lv1 進行中
派生クエスト
☑学校とプログラムを共有する
☑校長へ説明する
⑤校長による学習状況の把握
Lv2 解放
→出席扱い判断フェーズ開始
派生クエスト
☑不登校支援研修会に参加
【人間関係(パーティー/NPC)】
501:【謎の分析おじさん】(信頼度:Lv.2)
横道逸子:【コスプレネキ】(信頼度:Lv.3)
不登通子:【家ボス(母)】(圧:Max)
模部勇気:【ユウキ】(親密度:2)
☑関係再接続イベント発生
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