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第32話 宵闇ユラからの重要なおしらせ⑤ 再起動しました!

 配信開始十分前。

 不登校子の自室は静かだった。

 ノートパソコンの画面には配信ソフトが起動済。

 待機画面には、3Dの宵闇ユラアバターの止め絵。

 開始ボタンの上では、マウスが止まっている。


(…怖い)

 コメント欄はどうなるだろう。

 誰も来なかったら。

 身バレコメントで埋まったら。

 胸が苦しくなる。


 それでも…


 校子は、小さく息を吐いた。


(逃げるのは、もう、終わり!)

 配信ボタンをクリック。

 画面が動き出す。

 銀色の髪が揺れ、宵闇ユラが動き始める。


「皆さま、ごきげんよう」

 少し震えた声だった。

「宵闇ユラ、配信再開しますわ」

「お待たせしましたわ」


 コメントが、一気に流れ始めた。


《きたあああああ!!》

《ユラだーー!!》

《待ってた!!》

《おかえり!!》

《待ってましたぞ!》


 その中には見覚えのある名前。

 おーるど★すたぁ。《待ってましたぞ!ユラ殿おおおお!!》

 ユウキ《おかえり、ユラ》


 思わず笑ってしまう。

「ありがとうございます。」

「少し…悪意ある呪いを解呪するのに時間がかかってしまいましたの」


《wwwww》

《呪いだったか》

《呪いはもう大丈夫?》


「それから、大事なお知らせがありますわ」

 コメント欄が静かになる。


「この配信を見ている方の中には、ワテクシの中の人をご存じの方も、いらっしゃるかもしれません」

「ですが、このチャンネルでは、その話は禁止ですわ」

「個人情報、中の人に関する単語は、NGワード設定をしております」

「書き込んでも表示されません」


《了解!》

《当然》

《ユラはユラ》


「そして」

 ユラは笑った。

「アンチや悪意あるコメントをする方は相手にしません」

「悪」

 一拍置いて。

「即、BANですわ」


《wwwww》

《強い》

《それでいい》

《安心した》


「それと…」

「今後、信頼できる視聴者の方へ、モデレーターをお願いしたいと思っていますの」


おーるど★すたぁ《小生、やりますぞ!》

《任せろ》

《おーるど★すたぁ立候補》

《古参が守るぞ》


 校子の胸が少し温かくなる。

「あと…」

 少しだけ照れくさそうに笑う。

「変わらず、登校はしておりませんが…」

「校長先生からいただいた新クエスト、オンライン授業に参加しましたわ」


《え!?》

《すご!!》

《マジ!?》


「まさか、自分が、もう一度あのクラスに参加する日が来るとは思っていませんでした」

「少し怖かったですけれど…」

「クラスの中にも協力してくださる方がいてくれたおかげで…」

「思っていたより、ずっとクラスの皆様が自然に受け入れてくださいましたわ」

「今では、背景オブジェクトのように自然に存在しております」


 コメントがゆっくり流れる。

《よかった……》

《泣いた》

《本当に良かった》

《ユラ頑張ったな》


 その中に、一つ。

 初めて見るアカウント名があった。


《私も不登校で、今まで読む専だったけど、今回は初めて書き込みします》


 校子の指が止まる。

 さらにそのアカウントからコメントが流れる。


《私も不登校で毎日つらいです》

《ユラが希望です。再開してくれてほんとに嬉しい》

《どうしたら、ユラみたいに学校を攻略できますか》


 校子は画面を見つめた。


 喉が詰まる。

 何を答えればいいのか。


 少しだけ考えてから、静かに微笑んだ。

「攻略、ですか」

「ワテクシも、まだ攻略中ですわ」

「まだ成績評価も、進学もどうなるかわかりませんし」

「ラスボスは倒せておりません」


 コメント欄に、笑いが流れる。

《ラスボスw》

《まだ途中なんかいw》


「でも…一人では無理でした」

「家族がいて」

「支援してくださる方がいて」

「応援してくださる皆さまがいて」


「だから、今日ここへ戻って来られました」


 一度だけ目を閉じる。


「ですから…一人で攻略しようとは思わないでください」

「助けを借りてもいい」

「何度コンティニューしてもいい」


「ゲームオーバーは、ありませんわ」


 コメント欄は、一瞬止まり…


《ありがとう》

《泣いた》

《救われた》

《俺も頑張る》

《おかえり、ユラ》


 画面いっぱいに流れる「おかえり」の文字。


 その中に、一つだけ。

 見慣れた名前が流れた。


501《配信を続けろ》


 たった、それだけ。


 校子は、小さく笑った。

「はい」

「分かってますわ」


もう。この配信は、一人のものではなかった。



〈ステータス〉

_________________________________


名前:不登校子ふとう・きょうこ

状態:不登校(オンラインによる学校接続開始)


【五教科】

 英語 Lv.中2 ■■□□□□

 数学 Lv.中2 ■■■□□□

 国語 Lv.中2 ■□□□□□

 理科 Lv.中2 ■■■□□□□

 社会 Lv.中2 ■■□□□□

経験値:△取得可能

※経験値反映には学校の確認が必要

 派生クエスト

☑オンライン授業へ参加する


【副教科】

 音楽 / 美術 / 技術・家庭 / 保健・体育

※学習活動として接続可能性あり

※学校確認・評価対象化は未達成


【総合的な学習】

探究テーマ案:VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する

※学校との協議中


【スキル】

① 保護者と学校の連携

Lv2 進行中

→学校協議フェーズへ移行

 派生クエスト

☑ 担任へ制度利用を相談する

☑ 学習記録の共有方法を決める

☑ 担任と面談する


② ICT等を活用した学習活動

Lv1 解放

 →学習ログ作成可能


③ 対面指導の実施

Lv1 解放

→支援センター通所中

※学校との連携・出席扱い手続中


④ 理解度に応じた計画的な学習プログラム

 Lv1 進行中

派生クエスト

☑学校とプログラムを共有する

☑校長へ説明する


⑤校長による学習状況の把握

Lv1 解放

→出席扱い判断に必要な確認フェーズ



【人間関係(パーティー/NPC)】

501:【謎の分析おじさん】(信頼度:Lv.2)

横道逸子:【コスプレネキ】(信頼度:Lv.3)

不登通子:【家ボス(母)】(圧:Max)

模部勇気:【ユウキ】(親密度:2)

☑関係再接続イベント発生

_________________________________




お読みいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブクマ、評価や感想をいただけると今後の執筆の励みになります。

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