↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/34

第31話 半透明の出席!Vtuber 学校に降臨!?

 不登校子のオンライン授業参加が流れてから、二週間後。

 水曜日、一時間目。

 2年3組の教室では、凡蔵昌平と模部勇気が教卓の周りで慌ただしく動いていた。


「先生、それHDMIこっちです」

「あ?これか」

「違います。それ充電ケーブル」

「あ〜、ややこしい!」

 模部が苦笑しながらノートパソコンを操作する。


 今日の一時間目は社会。

 担任・凡蔵昌平の授業だった。


 教室中央の席。

 日神玲奈は無表情のまま、その様子を眺めていた。

『なんで、不登なんだ?』

 凡蔵に聞かれた言葉が頭から離れない。

(なんで…?)

 自分でも答えは分からない。

(理由なんて…いちいち気に障るってだけで…)

 同じクラスになった最初から、不登校子という存在は気に障った。


 校子は、空気が読めないわけじゃない。

 むしろ、人一倍まわりを気にしている。

 陰キャで。

 他人の目を気にして。

 自信なんて全然ない。


 そのくせ――。


 妙なところだけ、絶対に譲らない。

 体育祭の時もそう。

 学校指定の鉢巻の色を選ぶ日。

 クラスの女子はみんな同じ色を選んだ。

 でも校子だけは、一人だけ違う色を選んだ。

 誰にも合わせなかった。


 あの時も。

(…なんなの)

 そう思った。


 そして――。

 あのイラスト。


 昼休み時間だった。

 校子がノートに描いていた絵を、何気なく覗き込んだ。

「ふ〜ん…校子って、そういうの描くんだ」

 思わず声が漏れた。

 校子は顔を真っ赤にして。

「あ…いや…見ないで…恥ずかしいから」

 そう言ってノートを閉じた。


(だから…すぐ分かった)

(宵闇ユラは、校子だって)

 あのアバター。

 あの日見たイラスト、そのものだった。


(あれは仮面なんかじゃない)

(むしろ――)

(あっちこそ、本当の校子)


 皮肉で。

 毒舌で。

 孤高を気取って。

 誰にも媚びない。


(だから私は…)

 考えかけたところで。

「よし、準備できた」

 模部が立ち上がった。


 凡蔵は教室へ向き直る。

「あ〜…前回は流れたけど…今日からな」

 一呼吸置く。

「不登校子も、オンラインで参加するから」


 一瞬。

 教室が静まり返る。


「え〜!?」

「マジで?」

「ついに学校来るの?」


 凡蔵はため息をついた。

「来ねえよ」

「オンラインだっつってんだろ」

 教卓へノートパソコンを置き、オンライン会議システムを起動する。

 内蔵カメラに、凡蔵の姿が映る。


「あ〜、じゃあ授業始める!」

 凡蔵はノートパソコンのマイクへ向かって声を張った。

「不登、参加してるか?」


 その瞬間。

 模部が教卓横の大型モニターに電源を入れた。

 全員の視線が集まる。

 画面には参加者一覧。

 そこに表示された名前。


 不登校子


 そしてプロフィール画像。

 現れたのは――。

 宵闇ユラ。

 黒と白を基調にしたゴシック調の衣装。

 右目は深紅、左目は金色。

 白い肌は月光のように淡く、黒レースのハイネックとコルセットが静かに光を吸い込む。

 その眼差しは、強く、真っ直ぐだ。


 止め絵の二次元アバター。

 マイクはオフ。

 チャット欄だけが動いた。

『はい、参加してます』


 教室がざわつく。

「え?」

「なにこれ…アバター?」

「あれ見たことある!」

「校子、Vtuber配信やってるって本当だったんだ?」

「マジかよ」


 凡蔵は特に気にする様子もなく言った。

「不登、オンラインでの出席を確認」


 一人の男子がおずおずと手を挙げる。

「…あの〜」

「なんだ」

「不登…なんですよね?」

「ああ」

「その…なんであれなんですか?」

 凡蔵は頭をぽりぽり掻いた。

「あ〜…その、なんだ」

「教育的配慮ってやつだ」

「顔出さなくても参加できるようにってことだ」


 教室に微妙な空気が流れる。


 その時だった。

 大型モニターのプロフィール画像が変わる。

 ユラが小さく微笑み。

 教室へ向かって手を振った。


 模部が自然に手を振り返す。

 すると。

 数人も、つられるように手を振った。


「おー」

「かわいいじゃん」

「意外とちゃんといる感じする」


 日神だけが動けなかった。

 唇を噛み、ようやく絞り出した。

「…ずるくない?」

 その声に、模部がすぐ答えた。

「別にいいだろ?」


 教室の空気が模部へ傾く。


「まあ…学校が認めてるんだし」

「あれはあれで来てるんだろ?」

「そういう時代なんじゃね?」


 凡蔵が黒板をコンコン、と叩く。

「はいはい、静かにしろ」

「授業やるぞ」


 社会の授業が始まった。

 校子は大型モニターの中で静かに授業を聞いている。

 時折、

『はい』

『分かりました』

 短いチャットだけが流れる。


 それだけだった。

 だが、確かに、この教室に参加していた。


 やがて終業のチャイムが鳴る。

 授業終了。

 大型モニターの映像は消えた。

 生徒たちが席を立ち始める。


 凡蔵はノートパソコンを見て顔をしかめた。

「あ〜、面倒くせえな…」

「おい、模部」

「はいはい」

 模部が教卓へ向かう。


 ノートパソコンの画面には、まだミーティング画面が残っていた。

 教室には数人残っていたが、誰も気にしていない。

 その時、画面越しに、校子がこちらを見た気がした。


 一瞬だけ、プロフィール画像が切り替わる。

 手を振るユラ。

 模部は小さく笑う。


 そして。

 誰にも気づかれないように。

 ほんの一瞬だけ――

 ウインクを返した。


 そのままノートパソコンの電源を落とす。

 画面が暗くなる。

 教室は、いつもの教室へ戻った。


 けれど。

 もう以前と同じではない。

 今日から不登校子は、教室にいないまま、教室にいる存在になった。

 


 その日の夜。

 リビングでプリンを食べながら、校子は余韻に浸っていた。


(ぐふふ…)

(やってやったぜ…オンライン授業)

(日神玲奈の顔が直接見れなかったのはちょっと残念だけど)

(まあ…勝利っていっていいよね)

(私と…模部く…勇気くんの…)


通子がキッチンから声をかける。

「なーに?ニヤニヤして…気持ち悪い」

「オンライン授業…上手くいったの?」

「ふふ…バッチリ」

 ピースサインを決める校子。

「ふ~ん…まあ、それだけじゃなさそうだけど?」


「…どういう意味?」

「模部君に、だいぶ手伝ってもらったんでしょ?」

「!…なんで知ってるの?」

「ふふ…ママ友のネットワークを甘く見ないことね」

「本当、いい子よね〜模部君って」


(この流れは…!)

「あ〜…あの、私、そろそろ配信再開の準備しないと…」

そそくさと自室に逃げ込む校子。


「はいはい」

 通子は娘の閉まった部屋のドアを見つめ、小さく笑った。

(一時はどうなることかと思ったけど…)

通子のため息には、安堵の色が混じっていた。




〈ステータス〉

_________________________________


名前:不登校子ふとう・きょうこ

状態:不登校(オンラインによる学校接続開始) NEW!


【五教科】

 英語 Lv.中2 ■■□□□□

 数学 Lv.中2 ■■■□□□

 国語 Lv.中2 ■□□□□□

 理科 Lv.中2 ■■■□□□□

 社会 Lv.中2 ■■□□□□

経験値:△取得可能

※経験値反映には学校の確認が必要

 派生クエスト

☑オンライン授業へ参加する


【副教科】

 音楽 / 美術 / 技術・家庭 / 保健・体育

※学習活動として接続可能性あり

※学校確認・評価対象化は未達成


【総合的な学習】

探究テーマ案:VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する

※学校との協議中


【スキル】

① 保護者と学校の連携

Lv2 進行中

→学校協議フェーズへ移行

 派生クエスト

☑ 担任へ制度利用を相談する

☑ 学習記録の共有方法を決める

☑ 担任と面談する


② ICT等を活用した学習活動

Lv1 解放

 →学習ログ作成可能


③ 対面指導の実施

Lv1 解放

→支援センター通所中

※学校との連携・出席扱い手続中


④ 理解度に応じた計画的な学習プログラム

 Lv1 進行中

派生クエスト

☑学校とプログラムを共有する

☑校長へ説明する


⑤校長による学習状況の把握

Lv1 解放

→出席扱い判断に必要な確認フェーズ



【人間関係(パーティー/NPC)】

501:【謎の分析おじさん】(信頼度:Lv.2)

横道逸子:【コスプレネキ】(信頼度:Lv.3)

不登通子:【家ボス(母)】(圧:Max)

模部勇気:【ユウキ】(親密度:2)

☑関係再接続イベント発生

_________________________________



お読みいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブクマ、評価や感想をいただけると今後の執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。