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第25話 宵闇ユラからの重要なおしらせ④ 校長対決突破しました!

 担任の凡蔵昌平が、クラスへ「来週からオンライン授業を実施する」と伝えた翌日。

 不登校子は、自室の机の前に座っていた。

 パソコンの画面には、配信ソフトの待機画面。

 開始ボタンの上でマウスが止まる。


 昨日の母の言葉が頭をよぎった。

『でも…これで全部うまくいくとは、思ってないでしょ?』

『もし…出席扱いも、成績としての評価も認められなかったら?』

 その通りだ。

 中壁校長は学習プログラムと総合的な学習のテーマは大筋了承してくれた。

 出席扱いの検討にのせると言った。

 だが、あくまでも「検討」だ。成績の評価についても、未確定だ。


(まだ勝ってない)

(でも…)

 校子は深く息を吸った。

(だからって止まる理由にはならない)

(今の私にできることをやる)

 マウスをクリックする。

 配信開始。


 画面に3Dアバターの宵闇ユラが現れ、一礼する。

「皆様、ごきげんよう」

「本日は学校攻略RTAシリーズの最新状況をお伝えいたしますわ!」

 コメント欄が一気に流れる。


《待ってた!》

《校長対決どうなった!?》

《結果報告だー!》

《続き気になってた》


 ユラは胸を張った。

「結論から申し上げますわ」

「校長先生は、ワテクシのクエストロードマップ(学習プログラム案)と修行記録(学習記録)を、おおむね了承してくださいました!」

「自宅や教育支援センターでの学習も、出席扱いの検討にのせてくださるとのことです!」


《おおおおお》

《やったじゃん!》

《攻略成功!》

《ボス撃破!》

おーるど★すたぁ《やりましたな!ユラ殿!》

ユウキ《すご!》


 ユラは得意げに笑う。

「当然ですわ!」

「伊達に何十時間も攻略準備しておりませんもの!」


《草》

《そこは努力認める》

《ガチ勢》


 だが、ユラは少し表情を曇らせた。

「ただし…」

「成績評価については、校長先生も言葉を濁されましたわ」

 コメント欄が静かになる。


《あー》

《そこが本命》

《難しいやつ》

《大人の事情》

《ずるい》


 ユラは肩をすくめる。

「ワテクシもそう思いますわ」

「ですが、実際に運用してみないと、校長先生だけでは決められないこともあるそうですの」


《評価が難しいのかな》

《役所案件》

《ラスボスまだいた》


 ユラはうなずいた。

「その代わり…」

「校長先生から新しいクエストを依頼されましたの」


《クエスト!?》

《何それ》

《続編きた》

《嫌な予感》


 ユラは少し苦笑した。

「なかなかのハードモードですわ」

「来週から、新しい挑戦が始まります」


《気になる》

《何するの?》

《もったいぶるな》

《発表はよ》


 ユラが説明しようとした、その時だった。

 コメント欄に見慣れない名前が現れる。


@s1g-074《来週のオンライン授業、頑張ってください》

@s1g-074《○○中の2年生ですよね?》


 ユラが首をかしげる。

「…え?」


《?》

《オンライン授業?》

《何の話?》

《え、知り合い?》


 数秒後。

 再び書き込みが流れた。

@s1g-074《凡蔵先生の授業ですよね》

@s1g-074《凡蔵先生、はりきってますよ》

@s1g-074《あ、でも、ちゃんと端末の設定とかできるのかな?w》


 校子の指が止まる。

 胸の奥がざわついた。

 ユラは慌てて笑顔を作る。

「個人情報に関するコメントはお控えくださいまし」

 だが、相手は止まらない。


@s1g-074《あれ?ちがった?2年3組の不登校の子でしょ?》


画面の向こう側で、ユラの配信を見ていた模部勇気の指が止まった。

(なんだこいつ…まさか、クラスの誰かか?)


《おい》

《やめろ》

《身バレ狙うな》

《個人情報やめろ》


 コメント欄がざわつく。

 しかし。

 相手ははむしろ楽しんでいるようだった。


@s1g-074《知ってる子に声がそっくりなんだけど…》

@s1g-074《間違ってたらごめんねw同じ学校の子かと思っちゃった》


 校子の背中に冷たいものが走る。

 この感じ…知っている。

 逃げ場を塞いで。

 空気を支配する。

 でも決して直接的な攻撃の証拠は残さない。

 あのやり方。


「な…」

 ユラの声が震えた。


 模部勇気は、配信画面を見つめたまま動けなくなっていた。

(!…まさか…本当にユラが…校子?)


@s1g-074《あれ?違ってたか〜》


《やめろって》

《通報》

《BANしろ》

 コメントが流れる。


 だが、校子には新規アカウントの書き込む画面の文字だけが異様にはっきり見えた。


@s1g-074《いや、ごめん、やっぱ私の勘違いかも。だって…いきなり“ワテクシ”だもんwびっくりしちゃった》

@s1g-074《でもすごい感動したよ!こういう配信、もっと色んな人に見てもらえたらいいのにね!》


 呼吸が浅くなる。

 手が震える。

 画面の向こうにいるのに。

 まるで教室の真ん中に立たされているみたいだった。

 その時。

 コメントが飛び込んだ。


501《管理者権限で「ユーザーを非表示」にしろ》

ユウキ《おい!やめろ!!》

おーるど★すたぁ《即BANですぞ!》


 だが。

 校子にはもう画面を見る余裕がなかった。

 マウスを掴む。

 震える指で。

 配信終了。

 画面が真っ黒になる。


 静寂。


 心臓だけがうるさく鳴っていた。

 呼吸が苦しい。

 手が震える。

 止まらない。

 身体が覚えている。

 教室で。

 廊下で。

 何度も味わった。

 この追い詰められる感覚を。


「…あいつだ」

 モニターを睨みつける。

 新規アカウント。

 証拠はない。

 顔も、声も、わからない。

 確かめる方法なんて、どこにもない。


 …それでも。

 校子の頭に浮かんだ名前は、一人しかいなかった。

 校子は震える指でスマホを開いた。

 クラス連絡アプリ。

 昨日の連絡。

『欠席中の生徒について、来週よりオンライン授業を開始します』

 送信者。

 凡蔵昌平。


 校子は画面を見つめた。

 あのコメントを書ける人間は限られる。

 そして。

 その中で。

 こんなやり方をする人間を一人だけ知っていた。


日神ひがみ

 奥歯を噛み締める。

玲奈れな

 唇が震える。


(見つかった…!)

(あいつに…見つかっちゃった…)

(みんなにも…ばれちゃった…)

(宵闇ユラの中身は…不登校子だって)

(ただの痛い、不登校の、無価値な子だって…)

(もう…終わりだ…何もかも…)


 校子の中で、何かが崩れた。

 その日から、宵闇ユラの配信は止まった。





〈ステータス〉

_________________________________


名前:不登校子ふとう・きょうこ

状態:不登校(支援センターに接続済)

状態異常:匿名性低下の呪い NEW!


【五教科】

 英語 Lv.中2 ■■□□□□

 数学 Lv.中2 ■■■□□□

 国語 Lv.中2 ■□□□□□

 理科 Lv.中2 ■■■□□□□

 社会 Lv.中2 ■■□□□□

経験値:△取得可能

※経験値反映には学校の確認が必要

 派生クエスト

□ オンライン授業へ参加する


【副教科】

 音楽 / 美術 / 技術・家庭 / 保健・体育

※学習活動として接続可能性あり

※学校確認・評価対象化は未達成


【総合的な学習】

探究テーマ案:VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する

※学校との協議中


【スキル】

① 保護者と学校の連携

Lv2 進行中

→学校協議フェーズへ移行

 派生クエスト

☑ 担任へ制度利用を相談する

☑ 学習記録の共有方法を決める

☑ 担任と面談する


② ICT等を活用した学習活動

Lv1 解放

 →学習ログ作成可能


③ 対面指導の実施

Lv1 解放

→支援センター通所中

※学校との連携・出席扱い手続中


④ 理解度に応じた計画的な学習プログラム

 Lv1 進行中

派生クエスト

☑学校とプログラムを共有する

☑校長へ説明する


⑤校長による学習状況の把握

Lv1 解放

→出席扱い判断に必要な確認フェーズ



【人間関係(パーティー/NPC)】

501:【謎の分析おじさん】(信頼度:Lv.1)

横道逸子:【コスプレネキ】(信頼度:Lv.3)

不登通子:【家ボス(母)】(圧:Max)

模部勇気:【ユウキ】(親密度:1)

□関係再接続イベント発生

_________________________________




お読みいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブクマ、評価や感想をいただけると今後の執筆の励みになります。

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