↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/33

第16話 宵闇ユラからの重要なおしらせ② 第一関門突破しました!

 担任の凡蔵昌平との面談から一週間後の夜。

 校子は部屋のカーテンを閉め、マイクとWEBカメラのスイッチを入れた。

 机の横には、先日学校へ持っていった書類一式のコピー。

 eラーニングの学習ログや配信実績をまとめた学習記録。

 横道逸子と一緒に作った学習プログラムのたたき台。

 Vtuber配信を総合的な学習のテーマとして、探究の中で副教科の学びを取り入れる学習プラン。

 すべて横道がコピーしてくれたものだ。

 全部、ちゃんと提出できた。


「…よし」

 深呼吸。

 配信開始ボタンを押す。


「こんばんわ〜〜!!宵闇ユラです」

 コメント欄が一気に流れる。


《こんばんわ!》

《待ってた》

《ユラ様だー!》

《どうだった!?》

《学校イベント攻略できた!?》


 宵闇ユラは、わざと大げさに目を閉じた。

「皆様、本日は―ワテクシから、重要なおしらせがございますの」


《来た》

《重要おしらせ助かる》

《引退だけはやめろ》


「学校攻略RTAシリーズの…経過報告です!」

「あ、初めましての方は、概要欄から前回の動画をご覧くださいまし」

「さて、ワテクシの人生がかかったクエストロードマップ(学習プログラム案)と修行記録(学習記録)ですが…」

 そこで一拍置く。

『クランリーダーである担任の先生に、無事受け取っていただきましたの』


《おおおおお!!》

《やったじゃん!》

《前進してる!》

《スゲエ》

《偉すぎる》


 コメントが高速で流れていく。

 その中に、ひときわ勢いのあるコメントがあった。


おーるど★すたぁ《おおっ!やりましたな!ユラ殿ぉ!》


 校子は少し笑った。

「受付嬢と、入念に準備したかいがありましたわ!」

「無論、まだ“完全クリア”ではありませんけれど…」

 彼女は机の端のファイルを見る。

 横道逸子。担任の凡蔵。母の顔が浮かぶ。

「先生は、“手は加えるけど、配信やコスプレ制作も学習活動として組み込めるか検討する”って…言ってくださいましたの」


《おお!?》

《マジ!?》

《学校つよ》

《理解ある先生じゃん》

《時代変わったな…》


「コスプレ衣装制作には、先生も目を白黒してらっしゃいましたわ(笑)」


《そりゃそうだ(笑)》

《その場面見たい》

 おーるど★すたぁ《おじ…気持はわかりますぞ!》


 コメント欄が盛り上がる。

 校子は少しだけ肩の力を抜いた。

 正直、凡蔵にはもっと否定されると思っていた。

 「前例がない」「遊びだろ」で終わると思っていた。

 でも、違った。

 完全に認められたわけじゃない。

 それでも、“話を聞いてもらえた”。

 それだけで、面談はかなり大きかった。

 その時だった。


 流れるコメントの中に、一つだけ妙に引っかかる名前が混ざる。

 ユウキ《すごいな…怖くないの…学校のルートから外れても…?》

「…」

 コメント欄の名前を、もう一度見る。

 ユウキ。


(…偶然?)

(…まさか) 

 模部勇気。

 プリントを届けに来た時の顔が頭に浮かぶ。

 気まずそうに立っていた姿。

 兄の話をした時の、あの表情。

(いや…でも、そんなわけ…)

 配信画面の向こうにいる誰かなんて、分からない。

 名前だけで決めつけるのは変だ。

 宵闇ユラは、配信者の声を崩さないまま続けた。

「もちろん怖いですわ」


 コメント欄が少し静かになる。


「学校の“正規ルート”から外れるということは、

この世界の呪いに逆らうということですもの」

「でも…動かなければ、このルートは“学習してる”って、学校に認めていただけませんから」

 校子は自分でも驚くほど、落ち着いた声で言えた。

「やるだけですわ」


おーるど★すたぁ《それでこそ、ユラ殿!》

《かっけえ》

《ユラ様つよ》

《泣いた》

《行動力えぐい》


 その中で、また《ユウキ》のコメントが流れる。


ユウキ《知り合いにも不登校の子がいて…応援するよ!》


「――」

 一瞬だけ、言葉が出なかった。

 コメント欄はもう次の話題へ流れていく。


《次は何作るの!?》

《新衣装進捗!?》

《学校コラボ編始まる?》


 宵闇ユラは、意味ありげに笑う。

「ふふ…次なる装備制作も進行中ですわ」

 そう言いながらも。

 校子の視線は、さっきの名前の残像から離れなかった。    


 配信終了。

「……はぁ」

 ヘッドセットを外した瞬間、どっと疲れが来た。

 静かになった部屋で、パソコンのファン音だけが回っている。

 校子は無意識に、アーカイブ画面を開いた。

 コメント欄をスクロールする。

 いた。

ユウキ《すごいな…怖くないの…》


 スクロールする指が一瞬動かなくなる。

「ユウキ?…」

「いや…違うかもしれないし…」

 でも。

 もし本当に模部勇気だったら。

 なんで見てるの。

 教室で笑ってたくせに。

 なんで今さら、宵闇ユラの応援なんかするの。

 この間、LINEで謝罪したから?


 校子はスマホを手に取って、コメントしたユウキのアカウントをチェックする。

 チャンネルには公開コンテンツなし。

 個人のSNSもなし。

「…何やってんだろ、私」

 スマホを伏せる。


 …数秒後。

 また手が伸びた。

 自分でも意味がわからなかった。

 なのに、また気になってしまう。

 コメント欄を開く。


ユウキ《応援するよ!》


 その一文だけが、妙に目に残った。

 なんで。

 嬉しくない。絶対嬉しくない。

 なのに、何回も読んでる。


「…最悪」 


 もし学校の誰かに見つかっていたら。

 もし、教室側の人間に“宵闇ユラ”が繋がってしまったら。

 今まで分かれていた世界が、一気に混ざる。

 ユラは、ユラだから話せた。

 不登校子じゃないから、話せた。

 ユラと不登校子が繋がったら…私はどこにも逃げられない

 

 校子は反射的にコメント欄を閉じた。

 頭の中ではまだ文字が流れていた。

 暗くなったパソコン画面に、自分の顔だけが映る。

「…なんなんだよ、もう…」

「…そっち側のくせに」

 小さく吐き捨てる。


 なのに。

 ユウキのコメントが、頭から離れない。

(…意味わかんない)

 校子は額を押さえた。

 そのまま視線が、机の端のコピー資料へ向いた。

(…ていうか)

(凡蔵先生に出した出席扱いの資料…あれ、結局どうなったんだろう)

(凡蔵先生、“まだ途中”とか言ってたし…)

(あの時は、凡蔵先生も「嫌いじゃないけどな」とか、善人ムーブかましてたから期待したけど…)

(冷静に考えると、あの凡蔵先生が、職員室で頭下げてる姿とか…全然想像できないんだけど…)

(あ〜…考えたらお腹痛くなってきた!)





〈ステータス〉

_________________________________


名前:不登校子ふとう・きょうこ

状態:不登校(支援センターに接続済)


【五教科】

 英語 Lv.中2 ■□□□□□

 数学 Lv.中2 ■■□□□□

 国語 Lv.中1 ■■■■□□

 理科 Lv.中2 ■■□□□□

 社会 Lv.中2 ■□□□□□

経験値取得条件:

・課題提出

・学習ログ

・理解度確認

※経験値反映には学校の確認が必要


【副教科】

 音楽 / 美術 / 技術・家庭 / 保健・体育

※学習活動として接続可能性あり

※学校確認・評価対象化は未達成


【総合的な学習】

探究テーマ案:VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する

※学校との協議中


【スキル】

① 保護者と学校の連携

Lv2 進行中

→学校協議フェーズへ移行

 派生クエスト

☑ 担任へ制度利用を相談する

☑ 学習記録の共有方法を決める

☑ 担任と面談する


② ICT等を活用した学習活動

Lv1 解放

 →学習ログ作成可能


③ 対面指導の実施

Lv1 解放

→支援センター通所中

※学校との連携・出席扱い手続中


④ 理解度に応じた計画的な学習プログラム

 Lv1 進行中

派生クエスト

☑学校とプログラムを共有する


【人間関係(パーティー/NPC)】

501:【謎の分析おじさん】(信頼度:Lv.1)

横道逸子:【コスプレネキ】(信頼度:Lv.3)

不登通子:【家ボス(母)】(圧:Max)

模部勇気:【ユウキ】(親密度:1)

□関係再接続イベント発生

_________________________________



お読みいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブクマ、評価や感想をいただけると今後の執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。