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第13話 今さらじゃん

 月城るるらの直撃の翌朝。

 不登校子は布団にくるまったまま、スマホを見つめていた。

 画面には、昨夜のLINE。


模部:るるらのライブ配信みた? 宵闇ユラって知ってた?


「……」

 返信できない。

 既読もつけられない。

 怖い。

 でも気になる。

 スマホを伏せる。

 三秒後、また持つ。

「うあああああ……」

 布団の中で低くうめいた。


 通知欄には、昨夜の切り抜き動画も残っている。

【(切り抜き)るるらママ新作!? 新人VTuber「宵闇ユラ」が可愛すぎる件】

(可愛すぎる件じゃねえよ……)

 頭を抱える。


 再生数は、また増えていた。

 昨日の夜より確実に伸びている。

(やめて…)

(見つけないで…)

 その時。

 ピコン。

「ひっ」

 肩が跳ねた。

 新しい通知だった。


模部:宵闇ユラの勉強配信ちょっと見た。なんか普通に面白かった


「……」

 校子は固まった。

(見るな!!)

(なんで見た!?)

(いや宣伝されたからだけど!!)

 さらに通知。


模部:同学年っぽいよな。勉強してる範囲、うちと同じだった。


「やめろぉぉぉぉ…」

 布団の中でじたばたする。

 スマホがまた震えた。


模部:あと、なんか話し方、お前に少し似てる。


「――ッ!!」

 校子は勢いよく布団を頭までかぶった。

「無理無理無理無理無理!!」

 心臓が暴れている。

 (いや本人なんだから似るだろ!?)

(でもユラの時は半トーン高めでワテクシ調なのに……)

(やばい、空気感でバレるタイプ!?)

(終わった終わった終わった!!)

(身バレした!!)

(いや待て、確定ではない!!)

 布団の中で足をばたつかせる。


 数秒後。


模部:あ、別に変な意味じゃなくて。話すときのトーンていうか、空気感っていうか。


「空気感で身バレすることある!?」

 思わず叫んだ。

 校子は恐る恐る布団から顔を出す。

 画面を見る。


模部:嫌だったら忘れて。


「……」

 校子は唇を噛んだ。

 なんで謝るんだろう。

 別に、嫌なことを言われたわけじゃない。

 でも。

 胸の奥が妙にざわつく。

 しばらく迷ってから、震える指で返信を書いた。 


『そのVtuberは知らない』

 送信。


「うわああああ送っちゃったぁぁぁ!!」

 即座に布団へ潜る。

 数秒後。

 既読。

 模部から返信。


模部:そっか 


 短い。それだけだった。

「……」

 校子は、少しだけ拍子抜けした。

 もっと追及されると思っていた。


模部:ああいう子もいるんだな。学校は、辛かったって言ってた。


 校子の動きが止まった。

「……」

 スマホの光が、ぼんやり顔を照らしている。

 脳裏に、中学の教室が浮かぶ。

『またズル休み?』

『もう来なくてよくない?』

 笑い声。その少し後ろで、模部は、何も言わなかった。

 見ていたのに。

 あの時、一言だけでも…止めてほしかったのに。


 スマホがまた震える。


模部:前、学校いた時さ。お前もずっとしんどそうだったから。


 校子は画面を見つめたまま、動けなかった。

 模部勇気。

 教室の空気に自然に馴染める側の人間。

 “普通”の側。

 校子とは違う世界の人。

 ずっとそう思ってた。


模部:ごめん


 短い一文。

 校子の喉が、ひゅっと鳴る。

 謝られると思っていなかった。

 むしろ、どう返せばいいのかわからない。


 数分。

 既読だけが続く。

 校子は返信欄を開いて、閉じて、また開く。

(なんて返せばいいの…?)

(重い…)

(いやでも、軽く返せる内容でもないし…)

 布団をぎゅっと握る。

 何度も迷ったあと。

 ようやく文字を打った。


『今さらじゃん』

 送信。


「うわ重っ!!」

 頭を抱える。

「いやでも他に何て返せばいいの!?」

 布団の中で転がった。

 しかし模部の返信は早かった。


模部:うん。本当に今さらだと思う。


 少し間が空いた。


模部:周りの奴らがいろいろ言ってた時さ。何か言おうとは思ったんだ。でも、結局黙ってた。

模部:あの時、俺もクラスの空気を壊すのが怖かったんだと思う。


「……」 


模部:だからさ。許してほしいとかじゃない。

模部:ただ、最近のお前、前よりちょっと楽しそうで。それ見て安心した。


「……」

 校子は、スマホを胸に抱えた。

 『前よりちょっと楽しそう』

 その言葉が頭の中でリピートする。

 学校では、一度も言われなかった言葉。

 胸の奥が、じわっと痛かった。

 返信欄を開く。

 閉じる。

 また開く。

 そして、

『まだ、わかんない』

 そう打って、送信した。



〈ステータス〉

_________________________________


名前:不登校子ふとう・きょうこ

状態:不登校(支援センターに接続済)


【五教科】

 英語 Lv.中2 ■□□□□□

 数学 Lv.中2 ■■□□□□

 国語 Lv.中1 ■■■■□□

 理科 Lv.中2 ■■□□□□

 社会 Lv.中2 ■□□□□□

経験値取得条件:

・課題提出

・学習ログ

・理解度確認

※経験値反映には学校の確認が必要


【副教科】

 音楽 / 美術 / 技術・家庭 / 保健・体育

※学習活動として接続可能性あり

※学校確認・評価対象化は未達成


【総合的な学習】

探究テーマ案:VTuber活動を通して、不登校でも継続できる学びの形を探究する

※学校との協議中


【スキル】

① 保護者と学校の連携

Lv2 進行中

→学校協議フェーズへ移行

 派生クエスト

☑ 担任へ制度利用を相談する

☑ 学習記録の共有方法を決める

☑ 担任と面談する


② ICT等を活用した学習活動

Lv1 解放

 →学習ログ作成可能


③ 対面指導の実施

Lv1 解放

→支援センター通所中

※学校との連携・出席扱い手続中


④ 理解度に応じた計画的な学習プログラム

 Lv1 進行中

派生クエスト

☑学校とプログラムを共有する


【人間関係(パーティー/NPC)】

501:【謎の分析おじさん】(信頼度:Lv.1)

横道逸子:【コスプレネキ】(信頼度:Lv.3)

不登通子:【家ボス(母)】(圧:Max)

模部勇気:【ユウキ】(親密度:1)

□関係再接続イベント発生 NEW!

_________________________________





お読みいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブクマ、評価や感想をいただけると今後の執筆の励みになります。

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