表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクなギルド受付嬢は、 魔獣にしか興味が無いはずだったのに  作者: 都鳥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/6

ギルドでの騒動~オタクと馬鹿にされるのに慣れているけど~

「てめえ! 俺の倒した魔獣を盗んだな!」

 荒っぽい大声がギルド内に響いた。


 声の主は常連冒険者のジャンさんだ。冒険者としての腕はそれなりに良いのに、気性が荒くて態度が乱暴なので私は苦手だ。

 彼が怒鳴っている相手はスティーグさん。

 彼がこのギルドに来て十日ほど。その間にランクをCまで上げた。異例のスピードだ。やっぱり元から腕がよかったらしい。


「それは言いがかりだ。このボアは俺が倒して手に入れたものだ」

「嘘を言うんじゃねえ! この辺じゃディグボアは見つけるのも難しいんだ。お前みたいな新入りが簡単に見つけられるわけがねえ!」


 ジャンさんの言うことは間違ってはいない。

 確かにこの辺りではディグボアはなかなか見かけない。いくらCランクになったとはいえ、まだこの辺りの地理に詳しくないスティーグさんに見つけることは難しいだろう。

 でも……

「ジャンさん、これディグボアじゃないですよ」


 ディグボアはリュフタケという地中に生えるキノコを好んで食べる。そのおかげで、ディグボアからはほんのりキノコの良い香りがする。

 でもこのボアからはその香りがしない。

 そしてディグボアのもう一つの特徴は、ボア種に付き物の牙がないことだ。確かにこの個体には牙が無いように見える。


 横たわるボアの口を素手でこじ開けると、折れたのか短くなってしまっていたが、牙があった。

「何かの理由で牙が折れたんでしょう。これはディグボアでなくて、ファングボアですよ」

 それを伝えると、ジャンさんは「ケッ」と一言面白くなさそうに言うと、乱暴に扉を開けてギルドから出ていった。



 ボアのよだれでべたべたになった手を拭いていると、スティーグさんがこちらへ来た。

「すごいな。よくわかったな」

 私が応える前に、マチルダ先輩が割り込んでくる。

「ああ、この子。オタクなんですよ」

「オタク?」

「んー、魔獣が好きっていうか。好きの度合いが過ぎているというか。魔獣が好き過ぎて受付嬢になったんですって。で、好きが高じて、大抵の魔獣の素材は見ただけでわかっちゃうらしいです」

「ふーーん。見ただけで、ねえ……」

「変わった子ですよね」


 そんな会話が、マチルダ先輩のクスクスと笑いと一緒に聞こえてくる。

 図書館でスティーグさんが笑っていたのとは明らかに違う馬鹿にしたような笑いだ。この場にいるのが嫌になってきた。


「じゃ、じゃあこのボアを解体場に持っていっちゃいますね」

 急いでマジックバッグに魔獣をしまうと、それを言い訳にしてその場から離れた。


 先輩方にオタクと言われて馬鹿にされるのは慣れている。でもそれをスティーグさんに、しかも馬鹿にしたように話されるのは嫌だった。

 やめてほしいのに、そうは言えない。せめてこうやってその場から逃げて、聞かなかったことにしたいと、心の中で耳を塞いだ。


 * * *


「しまった」

 一人でいるのに、ついつい声がでた。

 目の前の書類をもう一度見直す。やっぱり魔獣の鑑定結果の欄が空欄になっている。控えておくのを忘れたらしい。

 解体士は冒険者たちが町に戻って来てからが忙しいし、この時間ならまだ誰かいるだろう。書類を持って解体場に向かった。


「なんだ、フリーダか。ちょうど良かった。ちょっとコイツを一緒に見てくれないか?」

 こちらを向いた解体士のハリーさんの隣に、何故かスティーグさんが立っている。

「あれ? スティーグさん、こんな所でどうしたんですか?」

「いや、魔獣の解体を見学させてもらおうと思ってね。君は残業か。大変だな」


「フリーダはいつものことだよ。なあ」

 横からハリーさんが言葉を挟んだ。

「いつも、なのか?」


「ああ、あの…… 私は別にいいんです。帰りに寄りたいところもないし。家で私を待っている人もいないし。そんなことより、かなり立派なワイバーンですね」

 心配そうな顔をするスティーグさんになんだか申し訳なくて、話題を変えた。

「そうだろう」

 ハリーさんは、何故か自分の手柄であるように、胸を張って応える。


 今日のあの騒ぎの後、スティーグさんはさらに別の依頼を受けて、今度はなんとBランクの魔獣ワイバーンを狩ってきた。解体台の上にのせられているのはそのワイバーンだ。


「で、フリーダ。解体する前にコイツを見てくれ」

 ハリーさんの言葉に、スティーグさんは不思議そうな顔をした。

「鑑定の魔道具を使うんじゃないのか?」

「生憎、魔力切れでな。こいつに使う魔力石はギルド長が持ってるんだが、この時間だともう帰っちまってる」

「もしかしてフリーダは鑑定スキル持ちなのか?」

「いいや。神官じゃあるまいし、鑑定スキルなんて使えるわけがない。でもフリーダは魔獣オタクだからな。こと魔獣に関してはすげえ知識がある。見る目も確かだ。ちゃんとした鑑定は明日の朝にやるがだいたいのアタリくらいはつけたいだろう?」

 スティーグさんは、へえと感心するような目でこちらを見た。なんだか恥ずかしくてこそばゆい。


「ええと、ちょっと待っていてくださいね」

 ワイバーンを一通り、あちこち確認する。普通に見ても質が良さそうだ。

 このまま伝えてもいいけれど、ハリーさんに期待値をあげられちゃったし、ちゃんと見ておいた方がいいよね。ワイバーンに向けて、じっと目を凝らした。


 遺骸の前に浮かびあがった文字を読む。

 うん、やっぱり結構良い結果だ。きっと高値が付くだろう。

「結構良い状態です。余計な傷も少ないし、肉質も締まっていて良さそうです。良いお値段付くと思いますよ」

 誤魔化(ごまか)しの為に、最後に「と、思います」と付けておいた。


 ワイバーンがどんどん解体されていくのを横目に見ながら、解体場の隅の机で先ほどの書類に足りない鑑定結果を書き込んだ。

 これで今日の仕事はおしまいだ。さっさと帰ろう。


 最後に書き上げた書類を確認していると、さっきまで解体を見ていたスティーグさんがこちらにやってきた。

「魔獣が好きだと言っていたが、好きなだけでなく詳しいんだな」

「あ…… は、はい……」

 オタクですからなんて、自分からは言いにくい。

「もしよかったら、今度の休みに俺と付き合ってくれないか?」

「え…… ええ!?」

お読みくださりありがとうございます♪


クスクス笑われるの、嫌ですよね(・ェ・)

フリーダ、めげるな!!

というわけで、続きは明日の更新です。

よろしくお願いしますー!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ