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その勇者はバス停から異世界に旅立つ 〜休日から始まった異世界冒険譚〜  作者: たや
第五章 父と娘と爆ぜる火山龍 アヅラタン編
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人魚の追憶


お兄様、お兄様、お姫様(しふら)は暇を持て余していますよ


おお、すまない

俺としたことが可愛い可愛いお姫様(妹)の事を放っておいて勉強をしてしまっていた

今の勉強を終えたらまた巨鯨骨で遊ぼう




お兄様、お兄様!お姫様(シフラ)はこの本の続きが読みたいです!


その本は…ちょっとまだお姫様(妹)には速いな

それよりもこの本はどうだ?恋物語が好きなお姫様(妹)で楽しめる…ダメ?

そうか…




お兄様、お兄様、お姫様(わたくし)は少し緊張していますよ


大丈夫だお姫様(妹)よ

お前はこの__を統べる特別な__がある

堂々と立ち振る舞えるように今から練習しよう

それにお姫様(妹)には俺がずっと着いているさ




お兄様、お兄様、お姫様(あたし)は何を間違えたの?


大丈夫だ俺の可愛いお姫様(妹)よ

お前はまだ幼い、あれは事故だ

父上や兄上もそれを分かってくれているに決まってる

少しだけお休み

俺もそばにいるから




お兄様、お兄様、お姫様(シフラ)は寂しいです、お兄様はどこですか


お兄様、お兄様、お姫様(シフラ)はお母様にももう一度会いたいのです


お兄様、お兄様、早くお姫様(あたし)に会いに来てください


お兄様、お兄様……お兄様?


「シフラ、詳しく説明してる暇はない。すぐにこの国からお前を逃がす」


何故ですかお兄様 シフラはこの国が大好きです


「分かっている。だからこそ今のこの国にお前を置いていくわけにはいかない。まずは陸に上がる」


久しぶりの陸は少し怖いですが…お兄様がそう仰るのなら…


「よし、トパス兄さんの追手は来ていない。この先のナフィコでルエホ(じい)が待っている。急ぐぞ」


ルエホ(じい)も?一体何が起こってるの?


「落ち着いたら話すよ。とにかく今から俺達は今までの人生を捨てる。人魚であることも極力伏せる。幸い、あの国は情報統制をして長いから俺達の素性を知っている人間も少ないだろう」


分かりました…


「逃げろシフラ!俺達は大丈夫だ!お前が何処に、誰といても、絶対お前を迎えに行く!自分を守ることだけ考えて逃げろ!」


お兄様!お兄様!お姫様(シフラ)は…お姫様(あたし)は…!


「早くッ!!」


兵士を足止めする兄を助けることもできず、あたしは川へ飛び込んで無我夢中で上流へと泳いで、泳いで疲れて、眠ってしまった




「んっ……」


目が覚めた。

思考回路が働き出した3秒後に体を起こす。


暑い…地面が硬い…あと身体が痛む


「お。起きたか」


声の方を振り向くと何故か上裸のギルドマスター(リント)とスノウにアテラ、それに見覚えないすごい格好をした金髪の女性が自分を見ていた。


「ごめん。ちょっと疲れちゃったみたい」


「無理もねえよ。あんなバカデカい魔法ぶっ放したら誰だって疲れるって。スノウみたいに修行積んでるならまだしも」


「こりゃシフラは山降りたほうがいいな。とっとと出口見つけようぜ」


アテラの提案にこの場にいた全員が賛成したようで行動を開始する。

幸いにも動けるくらいに体力は回復しており道中、スノウが魔法で氷を生成してそれを体に当てたり時には舐めながら進むことでシフラの顔色が大分戻ってきている。


「ところであなたはどなた?」


「私はレリス・フェイル。金の星空(ゴルド・プラネ)のギルドマスターだ。理由あって貴殿のギルドマスターと行動を共にさせてもらっている」


「…あたしこのギルドに入ってないよ?」


「そうなのか?」


「シフラは訳ありなんだ。行く宛がないならずっと俺達といてもいいんだぞ」


どうしよう

ナフィコ以降あたしが会いたい人達となんの連絡も取れていないし……


「ほんと__」


『お兄様、お兄様、お姫様(あたし)は何を間違えたの?』


その言葉に甘え、すがる一言を出してしまいそうになった時、過去が今の心を鎖で縛る。


ダメ

あたしは長居できない


たまたま、あ(・)れ(・)が(・)起こってないだけ


もしまたあれが起こってしまったらあたしはみんなを……


「…シフラ?どうしたの?」


声が引っ込み、少しだけ下を向いてしまったらスノウが歩みを止めて側に寄ってくる。


「なんでもない。あたしもそろそろ一人旅に戻ろうかな」


心配させまいと少しだけ作り笑いでそう言った。


「そっか。もうちょっとシフラと話しておけばよかったな。私いない時多かったし」


「オレもだ。夜にシフラと色々と話すのは結構楽しかったぜ」


スノウとアテラも残念そうにしているがそれはシフラも同じ。


友人と呼べる人間を作ることを許されずに育ってしまった人魚姫。

初めて自分で見つけた居場所を手放さざるを得ない事情が彼女にはあるのだから。


「止まれ」


しんみりとした雰囲気が戦闘を歩いていたレリスの危機感を持った一言で一変する。


シフラとアテラを後方に下げ、殿を努めていたリントが先頭に動く。


「どうした?」


「何か来る。魔獣か人かは分からないが…」


ここはあまり広くない一本道。

戦闘になれば逃げ場はない。


リントは拳を構え、レリスも巨斧を手に取り構えた。

スノウはシフラとアテラを庇うように前に立ちこれからの起こりうることに備える。


物音が近くなり…時は来た。


姿を表したのは人間、黒い鎧を身に着け右手にはロングソードを持っている。

それだけならば冒険者でも珍しくはないがその鎧にはある国を象徴するマークが刻まれていた。


「こいつ…!アヴェダレオ!?」

「待て!様子がおかしい!」


すぐさま先頭に入ろうとしたリントをレリスが止める。


「既に手負いだ。しかしこの覇気の無さは…」


「あ…ぅ…」


不確かな足取りで動いていたアヴェダレオの兵士はうめき声を残してその場に倒れた。


「何が起こっている?この山にアヴェダレオがいるだけでも問題だと言うのに争っている者までいるのか?」


「まずいな。俺やレリスの仲間も危ない目に会ってきゃい__」

「おー?誰かいるな?」


知らない男の声。

口調は軽く声色は落ち着いてはいるが確かな実力を感じさせるほど力強い。

それ故に警戒は必須。


「そんな警戒すんなって。俺はアヴェダレオに襲われた側だぞ?」


姿を表した少年は若々しくもあるが顔の傷や筋骨隆々と呼べる体格から考えるに相当の猛者だと言えるだろう。

身長もリントより高く、もし地球で生を受けていたのならラガーマンになっていても不思議には思わない程の得体だ。


「本当にお前はアヴェダレオではないのだな?」


人一倍警戒しているレリスが問いかける。


「だからそうだって。さっきの爆発みたいなデケえ音が聴こえたと思ったらぶっ飛ばされちまって仲間とはぐれてよ。そしたらたまたまアヴェダレオの奴らとかち合っちまってな」


このタイプの快男児は中々嘘をつくのが上手ではない。

リントと似たタイプだとスノウは感じていた。


「じゃああなたは巻き込まれただけの冒険者って事かしら」


「おうよ!俺はラ(・)ク(・)・(・)タ(・)ノ(・)シ(・)ー(・)!この山と街の食(グルメ)に誘われただけの旅人だ!」


そう高らかに話した。

かなり楽しそうに。


「…悪いやつじゃなさそうだな」


「そう…だな。さっき出会ったばかりのリントと同じ様な感じがする」


「ん?お前そういえば昨日紹介場にいたヤツだろ。あの変な男一発でシメてた」


ラクが指を指したのはリント。

レリスと同様に昨日の紹介場での一見を見ていたようだ。


「あんたも見てたのかよ」


「見てたぜ。ちょっと手合わせ願いたくなるくらいにはな。こう近づいて確信したが…間違いなくお前は俺の好(・)物(・)だ」


その言葉でリント以外の全員が再度警戒態勢を取るがラクはため息をつく。


「流石に今すぐはヤらねえよ。状況も状況だし俺も迷子ったツレを探してえ」


「なーんだ。俺達と目的ほぼ同じじゃん。こっちは仲間を探しつ山を降りる出口を探してるんだ」


「お。じゃあ一緒に行くか?さっき風を感じた場所があるんだ。そこなら出口が近いかも知れねえ」


「そうしようぜ。アヴェダレオもいるんだったら仲間は多いほうが痛てててて」

「ちょっとリント!」


ラクと行動を共にする気であったがスノウがリントの耳を引っ張る。


「社会的信頼があるレリスはともかくこんな得体の知れない上にそ(・)っ(・)ち(・)の(・)気(・)がありそうなやつと行くつもり!?」


「そっちの気の意味は分かんないけど…なんか強そうだし目的一緒なら同行してもらったほうがいいじゃん。出口だって分かんないんだし」


馬鹿正直できょとんとしてそんな事を言われたら問い詰めたこちらの方のばつが悪い。


(確かに出口はシフラのためにも早く見つけたい…それに最悪5対1だからその気になれば…)


「分かったわよ。だけど少しでも私が怪しんだら後ろから攻撃するからね!」


「それでいいぜ。ハナから信頼されるなんざ思ってねえし」


「決まりだ。俺はリント、よろしくラク」


「おう。頼むぜ」


リントとラクは固い握手を交わした。


その一方、着実にリント達には危機が少しずつ迫っていた。



2話くらい没にしたらめっちゃ時間かかりました

ごめんなさい

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