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受付嬢三年目・魔法世界の悪魔

 完全に避けることが出来ない。けれどこんなところで取り込まれるわけにはいかないのだ。

 少しでも避けようとララの体勢を倒した私だったが、右腕を引き寄せられてフワリと何かに包まれる。


「大丈夫?」

「あ、あんたなんで!」


 魔物と戦っていたはずのロックマンが、私を抱きかかえながら防御の膜を張って渦を止めていた。

 シュテーダルの魔法と奴の防御がぶつかり合って爆風が起きる。


「あまねく神と血の聖霊たちよ――」


 目をカッと開けて、私はロックマンを見た。


「ま、待って!」


 奴は守護精の呪文を唱え始める。

 代わりに私が魔法を出そうとするも、抱えられたときと同時に両手をグッと抑えられてしまっていた。


「我がハーデスの名のもとに告げよう。大地を灼熱の炎で焼き尽くし、天を赤く染め上げる。生きとし生ける全てのものの力となり、太陽にも負けぬこの輝きは、その血の源となろう」


 指先から渦を巻いた炎が出ようとしている。

 けれど守護精の呪文はその人間の魔力を最大限に引き出す魔法でもあるのだ。そしてロックマンはシュテーダルが現れたその時から絶え間なく魔法を使っている。防御から攻撃まで、皆のために使っていた。ただでさえ次々と魔法使い達が倒れていく中、奇跡的に、いや元々の魔力が膨大にあったせいかロックマンが苦しそうな表情をすることはなかった。だが外に出てだいぶ時間も経ち、ここにきてこの魔法。


 ロックマンの左手の指先から、パキパキと氷が音を立ててその身体を包もうとしていた。


「駄目、やめてぇええ!!」

「グリニュード(焼き尽くせ)」


 必死に止める声を聞くこともせず、私を抱くその腕は締め付けを強くした。

 シュテーダルは炎の渦を見て効きはしないとたかをくくったが、それは相手の予想を遥かに超えて、シュテーダルを上の競技場に叩きつけるほどの威力を発揮していた。地響きのような音とともに、建物の一部が崩れ落ちたのを目にする。


「ロックマン!」


 ユーリがボンと音を立てて消えてしまい、土台を失ったロックマンを私は慌てて支えた。全体重がずしりとのしかかり、その身体に嫌でも力が入っていないことを思い知らされる。


「アルウェス隊長!」

「おい隊長が、隊長が倒れちまった」


 ロックマンの状態は波紋のように騎士達の間へと届いた。


「ゼノン殿下!」

「わかった。――全員一度戻れ!」


 ゼノン王子へ声をかけ、一旦退くことを伝えた。王子は今このままで戦っても意味がないと判断したのか、外で戦っている皆に一度中へ戻るようにと指示する。

 ララに頼みシュテーダルが怯んでいるうちに下の防御膜の中へと連れていく。

 いつも助けられてばかりで悔しいけれど、今回ばかりは自分が不甲斐なさすぎた。万年二位と言われていたのも、こんな惨状じゃ頷ける。反論もしようがない。


 けれどこんな、こんなところで、


「あんたをなくすわけにはいかないのよっ」


 息も小さく、薄く目を開いているものの、いつロックマンのそれが閉じられてしまうのか、私はシュテーダルが現れた時以上に恐怖を感じた。


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