表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/63

48 モテる男は良いよな、こんなに命を狙われて


 廃工場に、硬質な金属音と火花が散る。

 熾祈が振るう『紅蓮の剣』が、英莉花の漆黒の短剣を弾き飛ばす。だが、その衝撃で英莉花の細い手首が折れることを恐れ、熾祈は無意識に力を緩めてしまう。


「あははっ! 優しいね、しきぴょん。でも、その優しさが私を狂わせるの!」


 英莉花は魔具から溢れ出す黒い霧を纏い、まるで獣のような動きで熾祈の懐に潜り込む。熾祈は銀色の銃を向け、彼女の足を止めるためにあえて床を撃つ。火花が英莉花の足元を叩くが、彼女は怯むどころか、歓喜に瞳を輝かせて突きを繰り出した。


 正面の英莉花を捌く熾祈の背後。音もなく、死神の鎌のような鋭さで冥が肉薄する。

 熾祈は直感だけで銀色の銃の銃身で背後の刃を受け流すが、その衝撃は重く、鋭い。


「熾祈。貴方の剣は、あの子を斬るのを拒んでいる。そして、私を斬ることも」


 冥の瞳は、底なしの沼のように冷たい。彼女が放つ一撃一撃は、かつて熾祈が彼女に教え込んだ効率的な殺しそのものだった。


「思い出させてあげるわ。貴方の手が、どれだけ赤く染まっていたかを」


 正面から英莉花の狂おしい連撃。背後から冥の冷徹な一刺。

 熾祈は赤の剣で冥の刃を抑え込み、銀の銃で英莉花の進路を阻む。赤と銀の残光が夜を切り裂くが、守るべき玲奈を奪われた喪失感と、目の前の二人を傷つけられない葛藤が、熾祈の動きを確実に鈍らせていた。


 熾祈の頬を英莉花の刃がかすめ、鮮血が舞う。


「しきぴょん、私の傷になって。私を、一生忘れられない痛みにして!」


「やめろ……英莉花……!」


 英莉花の叫びに呼応するように、冥が熾祈の脚を狙って深く踏み込む。

 熾祈は咄嗟に赤の剣を地に突き立て、衝撃波で二人を弾き飛ばそうとするが、魔具の影響か、英莉花は衝撃を無視して突っ込んでくる。


 ――避ければ、英莉花の剣が自分を貫く。

 ――斬れば、英莉花を殺してしまう。


 熾祈の思考が、刹那の迷いに捕らわれた。

 その隙を逃さず、冥の剣が熾祈の肩を深く貫き、英莉花が彼の腹部に組み付いた。


「……っ、がはっ!」


 膝をつく熾祈。紅蓮の剣が消滅し、銀色の銃が手から零れ落ちる。


「これで終わりよ、熾祈。貴方はここで、私と一緒に朽ちるの」


 冥が冷たい宣告と共に、最後の一撃を振り上げた。

 

 万事休す。

 

 熾祈が死を覚悟したその瞬間、廃工場の天井が凄まじい衝撃と共に爆散した。


 電子の火花が戦場を蹂躙し、冥と英莉花の動きを強制的に停止させる。


「全く。少し目を離すと、すぐこれだもの」


 土煙の中から響いたのは、凛とした、そしてどこか呆れたような女の声。

 オッドアイを輝かせ、水無月鏡香が、処刑台のような光景を見下ろして立っていた。


「その女に振り回されている情けない男を地獄へ連れて行きたいのなら、私の承認を得てからになさいな。熾祈の”おっかけ”さんたち?」


 鏡香の冷徹な宣戦布告。

 絶体絶命の窮地に、MCA最強の美女が降臨した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ