21.5 太宰
俺たち兄弟は親父の所有していた山で育った。親父には小さい頃から狩りや釣りの仕方、罠の掛け方、キノコの種類や山菜採り、猟銃や刃物の扱いを教わった。親父が逝ったあと、その技術を活かせないかと試行錯誤しているうちに色々と認可を受けて、狩りや山菜採り、畑で野菜を育てたりして、───それからの生業は主にネットを介して依頼された分だけ獲った肉や野菜を売った。
ある日、兄貴の提案で何か動画を撮ってネットに載せようということになった。狩りや釣りなどの生活の一部をボディカメラで撮影して、あとでその動画を編集してネットに載せた。獲物の解体や肉の調理、燻製にしたりと多方にわたった。兄貴は物作り、車やバイクが好きだったので森林の中で小屋を作ったり、車やバイクの改造整備をする、そんな日常も動画に残してネットに載せたりもした。最初は振るわなかったが、今や収入源の大部分はそれらが占めている。ネットの反響は上々、食い扶持や収入もそれなりにあったし、村の連中より良い生活をしていたんじゃないかと思う。
たまに山から村へ降りて、都市部の方へ顔を出すと俺たち兄弟は良い意味でも悪い意味でもよく目立った。俺たちの身長は一八〇センチを超えていた。それに肩幅が広い。身体付きも筋肉質だったため、スポーツや格闘技をしないかと誘われたこともあった。
山には魚の泳ぐ川がある。村からしばらく離れたところに海もあった。釣り好きには持ってこいの地形なんだが、俺はその日も夕暮れまで釣りをしていた。
帰路、敷地内の山道で見慣れないタイヤ痕を見つけた。一台、いや二台……五台と。都市部で知り合った兄貴の友人かとも思ったが、なぜだか、胸騒ぎがした。自宅へ近付くに連れ、数回の銃声音が聞こえた。俺は家から少し離れた山道でバイクを止め、有るだけの刃物を持って足早に急いだ。
兄貴が自宅の前の広間で倒れていた。複数人の見知らぬ男女が兄貴の前で何やら話をしていた。当然、俺はそんな状況を見て冷静でいられなかった。出だし、四本の刃物を投げ付け、両手にナイフを持ってそいつらへ襲い掛かった。
一人、二人目と致命傷を負わせ、三人目の外国人に刃先を向けた。それから俺には記憶がない。どうやら、一発殴られたようだった。
目覚めると辺りは夜になっていた。数台の車のライトがやけに眩しく、暗がりの中で兄貴が横になっているのを見つけた。意識はなく、額、口から血が流れていた。周りにはヤバそうな男女が二〇人ほど立っていた。
スーツを着た男だけは、どこか場違いというか、その男だけには逆らっちゃいけないと本能が告げていた。
彼は言った。
「非、能力者に二人もやられてしまうとは……」
先ほど、俺が殺めたと思った二人が何事もなかったかのようにのうのうとして立っていた。二人は彼に深々と謝罪した。
男はため息を吐いて続けた。
「───仕方ありません。……さて、本題に入りましょうか。今回、私たちがこの場所へ訪れたのには理由があります。この場所に我々の拠点を建てたい。日本支部を建てたいのです」
俺はそんな要求を素直に聞いてやるつもりもなく、再び、反抗しようとした。すると、胸の辺りが痺れ出し、激痛に変わった。隣で横になっていた兄貴も同じように苦しんでいた。
男は冷徹に言った。
「貴方たちの命はお預かりしました。私の意に背けば、貴方たちの生命は絶たれます。この言っている意味、わかりますか?」
俺は胸の激痛に耐え切れずその場で倒れ込み、気を失う直前、その言っている意味を理解した。
従うしか、───ないと。




