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78.合同訓練③



 班決めで早速公私混同させた騎士達は、スカーレットさんの手によって綺麗に四等分された。

 最初は愚痴を言っていた騎士達だったが、ミルやティーネの容姿を確認するとすぐに黙り込んだ。やはり可愛い女の子というのは強い……!そしてスカーレットさんの班はというと……騎士達を一人一人殴り黙らせていた。

 スカーレットさん。それ日本でやったらパワハラで訴えられますよ……。


「さてと、別に指揮をするつもりは無かったけど成り行きでこうなったんだし仕方ない。俺らも始めるか」


「はい、優夜様。スカーレットさん達はもう始めて既にモンスターも何体か狩っているようです」

 さっきスカーレットさんが付け足しで、「ちなみに、モンスターを一番多く狩った班の者には褒美があるぞ」と言ったせいか、騎士達の士気はぐんと上がり、破竹の勢いでモンスターを狩っていた。

 このまま負ける訳にはいかないよなあ。俺だってスキルのレベル上げのために来たんだし。何も狩らずに帰るのだけはやめたい。せめてレベルが一上がるくらいは狩らないと。


「みんな、聞いてくれ。俺は指揮とかそうゆうのは上手くない。だから、みんな自由に戦ってくれ。それぞれの戦い方で戦って、そしてスカーレットさん達に勝ってご褒美を貰うぞ!」

『おおおおおっ!!』

 あっ最後本音が出ちゃった。まあいいや。騎士達の士気は絶好調みたいだし。


「じゃあ、いったん解散だ!モンスター狩りに行くぞ!」

『おおおおお!狩りだ―――――!!!』

 この班単純な奴ばっかで良かった……。っと。みんないなくなったし俺は大物でも探しに行くか。

 騎士達が散らばったのを確認してから、優夜とティーネは草原を離れ、森の方へ入っていった。



 ここは三班――つまりグレンとミルが指揮する班だ。


「スカーレットさんと…優夜ももう始めてるのか。確か訓練は今日の夕方までだったな。で、依頼がここ辺りのモンスターの掃討と…。じゃあ何か決まって狩る訳じゃないんだな」


「そうだね。だからみんな近くにいるモンスターを狩ってるよ」

 グレンの呟きにミルが返答をする。


「……なら俺達は別の場所でやるか。ここにいても優夜やスカーレットさんに取られるだけだ」


「うん!そうしよ!」

 グレンの提案に嫌な顔一つせず同意するミル。

 こうして頭を働かせた三班(グレン達)は草原から少し離れ、森の入り口辺りで狩りをする事となった。



「えっと、どうしましょうリンカさん。もう既に優夜様達は狩りを始めています」

 スタートに未だ踏み切れてない班が一つあった。それは四班―-エリスとリンカの班だ。


「うーん。僕が言ってもあの人達が動くとは思わないんだよね。だから指揮はエリスに任せたよ。僕はメルと一緒にぼちぼちやってるから困った時は言ってね」

 リンカはそう言い残すとメルを連れてどこかへ行ってしまう。


「ううぅ。どうしましょう。……いえ、ここは王女たる者騎士達を導いてあげなくては!」

 不安に満ちた表情のエリスは覚悟を決めると騎士達の前に現れる。


「皆さん。えっと……その……あの!他の班の方達に負けないよう頑張りましょう!」

 ああ……失敗した……。

 エリスは自身の言葉に絶望しかけたその時だった。


「おおおおお!!王女様直々のお言葉だ―――――!!お前ら、やるぞ!!!」

『おおおおおおおお―――――!!!』

 一人の騎士が剣を掲げると、それに続くようにして騎士達は次々と剣を掲げていく。

 その光景を目にしたエリスは少しの間ポカンと口を開いたまま唖然としていた。


「これは……どういう事でしょうか……」

 そしてエリスは一つの答えに辿り着く。

 ああ。私はここまで信頼されていたのだ。私があんなにも下手な言葉を掛けただけでここまで喜んでくれる人がいるのだ、と。


「皆さん!私も頑張ります。だから、皆さんも頑張って下さい!」

 今度は自身に満ちた顔で言葉を伝えられたとエリスは心の中で喜んだ。


『はい!!!』

 騎士達の元気な返事を聞いたエリスは満面の笑みを浮かべた。



「ここら辺まで来れば誰も来ないだろ」

 大物を狙って森に入った優夜とミルは人気が無くなったのが分かると立ち止まる。


「恐らくはそうですね」


「あとは何か良いのが出てくれれば……ん?あれは……?」

 優夜が周りを見渡すと、木々の間から一体の熊が歩いてくるのが見える。


「あれはグランドベアーですね。確か生息地はもう少し東のはずでしたが何故この森に……?」


「前オークエンペラーをさっきの草原で倒したんだ。多分それでここら辺の生態系が変化してるんだろ」

 今さらっと言ったけどよくよく考えたらそれってやばくね?それ。俺とグレンとミルで生態系まで変えられるのか……。すげえな。


「そんな事が……。流石ですね、優夜様は」

 オークエンペラーを倒したと聞き、ティーネは驚きを隠せなくなっている。


「まあな。…おっ、熊の奴こっちに気付いたな。さて、二日何も狩ってないからな。ここは俺がやるわ」


「はい。では私は見守っていますね」


「ありがとう」

 優夜はティーネに一度視線を送った後縮地を発動する。


「ほいっと!」

 グランドベアーの死角まで移動すると二本の剣で首を深く斬る。


『グアアアア!?』

 グランドベアーは致命傷を受け、そのまま前に倒れる。


「よし、取り敢えず一体狩ったな」


「優夜様!」

 優夜が剣を鞘にしまおうとした瞬間ティーネが大声を出す。


「ん?どうしたティーネ?」


「奥を見てください」

 ティーネは森の奥を指差す。


「奥?」

 優夜はティーネから視線を森の奥に移すと衝撃の光景を目にする。


「なっ!?何であんなに熊がいるんだ!?」

 先程倒したグランドベアーが、目視できるもので30は超える程の数で押し寄せていた。


「優夜様、それだけではありません。グランドベアーの上位種、グランドベアーロードもいます。これは不味いですよ」

 ティーネは迫り来るグランドベアー達を見ながら苦しい表情をする。


「まじかよ……。くそっ。…でも取り敢えずこの状況をスカーレットさんに伝えないと。ティーネ、戻ってこれを伝えてくれ。それまで俺が耐える」


「そんな!私も戦います!」


「このままでいても戦況はきつくなるだけだ。早く行け!」


「っ!」

 ティーネは森の入り口の方を向くと全力で土を蹴り、一刻も早く状況を伝えるために、優夜を助けるために走る。


「これで良し。確かに今の状況はきつい。だけど同時に好機でもある。ここでグランドベアーを倒せばスキルのレベルは上がるはず。……全部は無理でも10…いや20は倒す!そんで後はティーネ達(あいつら)に任せる」

 言葉に一区切りをつけると優夜は剣を構える。


「二日分、きっちり狩らせて貰うぞ!」

 次の瞬間、グランドベアー達は優夜に襲いかかった。

【投稿予定】

8/13 79.グランドベアーロード討伐

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