79.グランドベアーロード討伐
優夜がグランドベアーと衝突した頃、ティーネは森の入り口付近まで来ていた。
「早く戻らないと……あ、あれは……?」
ティーネは入り口辺りから聞こえる声を聞き取ると更に速く走る。
「やはりっ!グレンさん!」
ティーネはグレンの姿を確認すると歓喜の声で叫ぶ。
「あれ?ティーネさん?どうしたの?そんなに焦って」
事情を知らないミルはティーネの姿を見て、驚く反面困惑する。
「森の奥でグランドベアーロードそして、グランドベアーの群れを発見しました。グランドベアー達はこちらに向かって進行していて、今は優夜様が抑えています。そこで皆様にお願いがあります。足の速い者は今すぐにスカーレットさん達へ報告を。そして、他の者は私と一緒に付いて来て欲しいのです」
騎士達がその言葉にざわつき始める。
「グランドベアーの群れだって?グランドリザードの見間違いじゃねえの?」「グランドベアーって確かもっと東にいるはずだろ?何でこんな所に……」「それより狩りの続きしようぜ。さっきサーベルウルフ見つけたんだ」「おっ、それ良いな。行こうぜ」
しかし、ティーネの言葉は騎士達の胸には届かず、残ったのはたったの一人だった。
「貴方…名前は?」
「私はマルタって言います。よろしくお願いします!」
また女ですか……いえ、今は関係ありませんね。
「貴方、足に自信は?」
「体力は無いですが速さでは隊の中でも五本に入ります!」
それは……良いですね。
「では貴方、いえマルタさん。今すぐスカーレットさん達のいる場所まで戻りグランドベアーの事を伝えて下さい。グレンさんとミルさんは私と一緒に来て下さい」
「はい」
「分かった」
「りょーかい」
待っていて下さい優夜様、今行きますから。だから――無茶だけはしないで下さいね。
◇
「おらっ!」
グランドベアーの後頭部に剣が刺さる。
『グアアアアァァ』
グランドベアーが倒れる。
そしてまた刺す、倒れる、斬る、倒れる、殴る、倒れる、蹴る、倒れる、斬る、倒れる………。
このやり取りを続ける事約十分。
グランドベアーの数は一向に減らず、優夜の体力だけが削られていく。
「くっそ。ティーネが戻るまでまだ時間がかかるはず。それまでは何としてでも抑えないと」
グランドベアーは冒険者ギルドの推定でBランク。優夜からすれば雑魚も同然なのだが、数が多過ぎるのである。先程から倒し続けているが一向に終わりが見えない。流石の優夜も疲弊していた。
「はあ…はあ…。何でこんなに多いんだ!?それに……他の熊よりでかいあいつ。あれがティーネの言ってたグランドベアーロードだよな。流石にあいつも相手するのはきついな……」
優夜はグランドベアーを倒しながら奥でどんと構えているグランドベアーロードを見る。
鑑定したくねえなあ……。でも、見るか。
優夜は目に力を入れる。
種族 グランドベアー(上位種)
レベル 50
スキル 自爆(自身の命と引き換えに周囲に大爆発を起こす)
体力 55000/55000
攻撃力 16000
防御力 15000
俊敏 15000
弱点属性 火
何だこれ?ステータスおかしく無いか?レベル50で体力が55000って。それ以外は15000だし。スキルが自爆だけってのも変だな。今までの奴らとは全然違うぞ?
「変だけど……攻撃力とかがそんなに高くないだけマシだな。後は自爆に注意だな。……でも弱点属性が火か…。ここで火属性の魔法なんて使ったらもっと酷くなるよな。だけど街の近くまでおびき寄せて自爆なんて使われたら不味いし。やっぱりここで倒すしか無いか」
優夜はグランドベアーを更に一体倒したところで一旦距離を取る。
「このままだとこっちの体力が持たないからな。魔力消費は激しいけど使うか。神聖魔法『神の監獄』」
優夜が魔法を使うと、グランドベアーロードとその周りのグランドベアーを檻が閉じ込める。
『グアッ!?』
グランドベアー達は檻を壊そうと暴れるが、グランドベアーロードに動く様子は見えない。
「……どうなってんだ?あれ」
優夜がその様子に首を傾げていると背後の草むらが揺れるのを感じる。
「っ!?」
優夜はとっさに身構えるが、出て来た正体が分かると警戒を解く。
「ティーネか。それにグレンにミルも。もう戻って来たのか。もうちょっとかかると思ったけど」
「グレンさん達が森の入り口付近に居たので。スカーレットさん達は今別の人に呼びに行ってもらってます」
「そっか。それは良かった。……戻って来て早速で悪いが、手伝ってくれるか?」
「はい、勿論です」
「当たり前だ」
「良いよ。短剣の試し斬りもしたいしね」
三人は嫌な顔一つせず即答する。
「ありがとう。作戦はもう考えてる。まあ、作戦って言ってもあのでかい熊とどう戦うかだけどな」
優夜は一度言葉を区切り、また続ける。
「あいつのステータスはそんなに高く無い。注意するのはスキルの自爆と、馬鹿みたいに高い体力だ。それと、あいつの弱点属性は火だった。だけど、出来るだけ火属性魔法での攻撃は避けてくれ」
三人は頷くと、ティーネが手を挙げる。
「優夜様。ではどうやってグランドベアーロードを倒すつもりですか?」
「ああ、それもちゃんと考えてある」
優夜はティーネの質問に返答するとミル、グレンと目を合わせる。
ミルとグレンは「ああ」という顔をすると、ぐっと親指を立てる。
「さて、でかいのはほっといてまずは周りの熊を片付けるぞ!」
「「はい」」
「応」
優夜が走り出すとティーネ達もそれに続き武器を構える。
そして、優夜が走り出したと同時に檻が壊れ、グランドベアー達が放出される。
「うわっ!あんなにいるの!?」
ミルがグランドベアーの数を見て顔を引きつらせる。
「ミル、無駄口叩くな」
グレンはグランドベアーを斬り伏せながらミルを叱る。
「これでも減らした方だぞ」
優夜も会話に参加し、ティーネは無言でグランドベアー達を魔法で倒していく。
「ええ!これで減ってるの?これは大変そうだね…」
ミルは早くもやる気を失っている。
「終わったらみんなで飯食いに行くぞ」
優夜がミルのやる気を取り戻そうと一つの提案をすると、
「お、それ良いな」
グレンがそれに乗ってくる。
「お前が食いつくのかよ……」
「私もそれ良いと思うよ!」
グレンに続きやる気を取り戻したミルは破竹の勢いでグランドベアー達を倒していく。
そして、グランドベアーの数に終わりが見えてきた頃、
『グアアアァァアアアア!!』
それまで一度も動こうとしなかったグランドベアーロードがついに動き出した。
【投稿予定】
8/16 80.グランドベアーロード討伐②




