三人目の○○○
謎の少年の回想は今回で終わり
12月7日 AM9:00
「...?ナニコレ?」
鏡に映った自分じゃない自分を見つめる。
この世界に迷い込む前に嫌というほど見てきた自分の顔の面影は全くなかった。
黒い髪が金髪になり、顔の骨格いや、身体全体の骨格が変化している。
しかしこの顔はどこかで見覚えがある。
...そう、自分が奴隷として働いていた時、チラリと見かけた気がする。
「...ご主人様、お着物がお気に召されませんでしたか?」
メイドの子は若干しょんぼりとし、肩を落とす。
「いやいや全くそんなことはございません!最高です!!ありがとうございます!!」
メイドさんのその姿を見て、俺はしどろもどろになりながらも感謝の言葉を述べる。
「ふふっ」
メイドさんは俺の姿を見て、右手を口元に近づけ、微笑む。
「今日のご主人様はなんだかいつもと違いますね。」
-ヤバい!!バレた??
「ええと...そ、そんなことないよ。一体どうしてそう思ったのかな??」
どうにかバレないように自分に言い聞かせながら言葉を紡ぐ。
しかし生来、プレッシャーに弱いせいか変なイントネーションになる。
「今日のご主人様は面白いです。」
彼女は俺に満面の笑みを見せた。
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12月7日 AM9:46
「ごちそうさまー。満腹満腹。」
少し遅めでかなり重たい朝食を食べ終わった俺の元に如何にも執事といった燕尾服を着た初老の男性が近づく。
「お食事の後に失礼します。再び奴隷が一人死にました。替えの奴隷は何人追加いたしましょう。」
執事は商品を追加注文するかの如く気軽に言った。
「...そうだなぁ...取りあえず死んだ奴の顔見に行っていい?」
俺は椅子に座ったまま執事に訊ねた。
「えっ...ご主人様、何を...?」
執事は俺に先ほどの言葉の意味を聞きなおすが、俺はソレを答えることはない。
席を立ち、奴隷たちが就寝する場所である掘っ立て小屋に歩いていく。
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12月7日 AM10:04
今にも崩れそうな小屋に入る。
部屋の内部は薄暗く、気を付けないとつまずいてしまいそうだ。
その小屋を俺は慣れた足取りで進む。
その足取りには淀みなどない。
それもそうだ。ほんの数時間前までここで寝ていたのだから。
ここで急に足が止まる。
見慣れた俺がそこでちゃんと死んでいた。
見慣れた黒い髪。
見慣れた顔。
見慣れた体格。
まぎれもなく俺だ。
俺の目の前にあるのは紛れ御ない死体である。
見ていて気持ちのいいものでは無い...はずなのだが。
死体を前にしても何の気持ちも湧かなかった。
向こうの世界で遺体を見慣れたからなのだろうか。
俺は結局、死体を一瞥しただけで小屋を後にした。
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12月7日 AM10:05
どういう経緯なのか分からないが俺の意識がこの「ご主人様」と呼ばれる人物の身体に宿ったらしい。
今の俺は高揚感に浸っており、不安など一切感じなかった。
奴隷という最低辺の地位から屋敷を持つ主人に一夜になったのである。
この世界の中でお礼状に幸福な人間なんていないであろう。
...あの災害を生き残り、この世界に来たのは幸運であったと言わざるを得ない。
この世界で悠々自適に暮らすのも悪くないのかもしれない。
そう、今更かたき討ちをしても失った人々は戻ってくることは無いのだから。
ハイどうもこんにちは。ぬか漬けプディングです。
寒いですね。冬ですもん。
...それではまた次回お会いしましょう。




