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もしかしてこれって異世界転移?  作者: ぬか漬けプディング
第三章 王都 アスガルド
99/123

9月10日 PM6:15~9:35 gift 【神からの贈り物】

最近寒い(まあ冬だし。)

9月10日     PM6:15


「日本語が分からない...ということはなんで言葉が分かるんだよ?」

俺は呟く。

「この世界に来る際に体...いや脳をいじられたからだろ。」

ショウヘイは何も気にしていないようだ。


「なんでそんな冷静でいられるんだよ。」俺は声を荒げる。

「俺という人格が書き換えられているんだぞ。俺が俺じゃなくなっているかもしれないだろうが!!」


「...この世界では魔術を使えるんだ。そりゃ元々いた世界の自分の身体と同一な訳ないだろう。」

ショウヘイは目を伏せがちに言った。

「まぁ過ぎたことだしあんまりそんな事気にしないで行こうぜ」

ショウヘイはどこか影がある笑顔を見せた。


――――――――――――――――――――――

9月10日     PM9:35


時は過ぎ、現在アリノは宿屋のベッドの中。


俺は夕方の話を思い出す。


「この世界に来た者の身体は同一でない...か。」

俺は心の中で未だに小さく燻る言葉を口に出した。


...俺には記憶が無い。

この世界に来る前の記憶を含めてもだ。

まぁ記憶が無いとしても別段苦労はしていないのだが。

今もこうして生活しているし。


この記憶喪失の原因はもしかしたら...

異世界転移をしたためではないのだろうか。

この世界に飛ばされる直前、身体の情報の一部を書き換える際に何かアクシデントが生じたのではないか。


...そうであるならば俺の体自体に異変が見られるため、記憶が戻ることは絶望的であるとみなすべきではないか。


「...俺は一体誰なんだ。」

俺は布団に包まり、身体を小さく丸める。


シルフィンの忠告を思い出す。

「ショウヘイはアリノとどこか決定的に違う。あまりショウヘイを信じるな」


唯一の知り合いであろうショウヘイに己の過去を聞きづらい。

仮に事実とは違うことを吹き込まれた場合、更に悪化することが危惧されるからだ。


あの別れの一言、シルフィンからの忠告は呪いとしてアリノを苦しませていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――

9月10日     PM9:35


アリノが布団の中で一人悩んでいる時、この少年も同じく頭を悩ませていた。

そうショウヘイである。


アリノは異世界転移をすることによって体の情報が書き換えられるのではないかといった仮説に自分の存在が揺らぐのではないかと憤っていた。


ベッドに寝転がりながらもショウヘイは考える。


まぁその理由も分かる。アリノは記憶喪失でアイデンティティを喪失している。

アイツが自分について知っている情報はアリノと言う名前と俺と知り合いである点。

そして異世界転移をしてこの世界にやって来たこと。

この3つの事象だけである。

これだけが今のアリノを形作る記号となっている。

こんな断片的な情報だけでアリノは不安に思っているだろうし恐怖を感じているであろう。


だからだろうか。

スミスという他人に降りかかった不幸な出来事をわざわざ背負いこみ、そのネガティブな感情から無意識の内に目を背けているのかもしれない。

もしくは「俺は自己犠牲をしながら他人を救える聖人君子だ。」と自己満足をしているのか。


まぁそんな事はどうだっていい。


ショウヘイは寝返りをうつ。


ただショウヘイが不可解に思っていたことは未だにアリノが過去の自分について訊ねてこないことだった。


まぁ訊ねてこないことはショウヘイにとって非常に有難いことだったのだが。

仮にアリノが問いただしたとしても俺は適当にあしらうだけだからだ。


まぁ勿論俺だってこの状況で心が痛まないのかと聞かれたら首を横に振る。

悪いなぁと内心思っている。


が、これも仕方ないことなのだ。


全てはあの時に失った物を取り戻すためだ。


―――――――――――――――――――――――――

9月10日     PM9:35


少年二人が同じように悩んでいる中、10歳ほどの少女-マチルダは熟睡していた。

仕方ないことだ。

異世界転移をした日からずっと路地で寝食をしてきた―|所謂≪いわゆる≫ストリートチルドレンであったためだ。


久しぶりの温かい布団に横になった瞬間、気を失うように寝てしまったのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


彼女は、マチルダは幸せだった。

ショウヘイと共に過ごすこの日々が非常に素晴らしく、平凡に満ちたなんでもない出来事も輝いて見えた。

何故なら彼は私を、一人で道路に転がる薄汚い少女を救ってくれた。

そして妹のイザベラを必ず見つけて見せると言ってくれた。


例えソレが片手間でやる作業だったとしても、ただ何となくの行動だったとしても確かに私は救われた。


だから私は、彼に付いていこうと決めた。


突如マチルダの肩を背後から抱きしめる、か細い腕が二本。


「!!」


マチルダは驚きで声が出ない。

ただゆっくりと首を動かす。


背後を覗き見る。


そこには私が、いや妹のイザベラがいた。


「...私を一人にしないで。あなたと私はいつも一緒でしょ。」

彼女は微笑んだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「!!!!!」

マチルダはベッドから跳ね起きる。

身体は大量の汗で湿っている。


「今のは夢...?」


彼女は一人しかいない薄暗い部屋の中で呟いた。

ハイどうもこんにちは。ぬか漬けプディングです。


青春期ではアイデンティティの喪失がトレンドというかあるあるらしいからぶっちゃけて言うとアリノの反応がまぁ正しいことになる...んでしょうか?


まぁいいや。


それじゃあまた次回でお会いしましょう。


ここまでお読みしていただきありがとうございました

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