9月5日 PM3:40~PM27:00 とある憲兵さん(32)の一日
室外機の上にハトが巣を作り、ハトの親子が一家団欒の時を過ごしているんだが。
9月5日 PM3:40
腕に刺した注射器の中身がゆっくりと体内に入り込む。
それは液体状の赤い物質が体内に入りきった直後のことだった。
「っつ!!」
熱が右目の奥で爆発する。
熱は痛みに代わり男性の目を 脳を 体を蝕んでゆく。
思わず持っていた注射器を床に落とし、その場に膝をつく。
カラカラと軽い音を立てながら軽くなった注射器は床を転がる。
どれほどの時が経ったのだろうか。
熱と痛みは引き、痛みを和らげるためにその場でうずくまっていた男性は顔を上げる。
「ハァハァ......」
目の前には床に転がっているαの注射器。
それを拾い上げようと手を伸ばす。
ーがそれを拾い上げることが出来なかった。
「......?」
男性は思わず首をかしげる。
手をどれだけ伸ばしても、それを掴もうとしても空を掻くばかり。
「......」
男性はまじまじと己の掌を見る。
いつもと変わらない手だ。
男性は再び首をかしげながら手を伸ばす。
距離感を見誤ったのか上手く掴むことが出来ず、指先に触れる。
その勢いで再び転がりだす。
顔を動かさず、目だけで追っていた男性だが転がる注射器は死角に入る。
......なんか若干視界が狭くなった気がする。
脳裏でそんなことを考えながら男性は立ち上がり、注射器を膝立ちのまま追いかける。
それは家具の隙間に吸い込まれるように入っていった。
男はため息を一つ吐きながら地面に這いつくばる。
そして左目を閉じ、隙間を垣間見る。
そこには闇が広がっている。
光が一筋も差し込まない純粋な黒が。
それが左目を閉じた瞬間に男を襲った。
「......?」
男は違和感に気付き、身を起こす。
フラフラとランプの灯るテーブルに近づき、炎を見る。
そこにはいつも通り赤い光が右へ左へ小さく揺れている。
男は両目を開けたまま右目を手で覆うようにして隠す。
光などない純粋なる黒が広がっていた。
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9月5日 PM8:00
突然 招集命令が下り、ニメ=フルフィア内の全ての憲兵は街の中心部、『アスガード軍 ニメ=フルフィア支部』に集合する。
それは勿論右目の視力を失った男性も含まれる。
男性はいそいそと街の中心へ急ぐのだった。
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9月5日 PM11:30
片目を失明した男性はニメ=フルフィアの街をゆっくりと進む。
月は雲に隠れており、明かりは手に持つランプだけが頼みだ。
表向きはパトロール......なのだが、実際は収容所から脱走した隣国の諜報員と思しき人物を捕獲するためである。
「......」
男は手に持つランプで照らされた石畳を眺めながら一つの考えに至る。
......もし逃走中の人物にこれを打ち込めば......
ポケットに忍ばせているβの注射器に触れる。
荷物に同封された手紙によると注射器の中の成分は「能力」と呼ばれる魔術とは似て非なる力を与えるらしい。
その「能力」を使用してこの街でひと暴れしてくれたら軍部はそれの対応に追われ、支部の守りは薄くなるだろう。
守りが薄くなるということは任務の成功の確率が跳ね上がる事を意味する。
男性の口元は微かに歪んだ。
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9月6日 AM3:00
いた。
男性はボロボロのフード付きマントを纏った人物が走るのを遠方から目撃した。
その人影は長時間走り続けたのだろう。
見るからに疲弊しており、一歩進むのがやっとというほど足がガクガクと震えている。
と、その時 その人影は倒れこむようにして路地裏に逃げ込む。
男性はその路地裏に急いだ。
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何とか立ち上がり、逃げなくては......
フードを深くまで被った人物は家と家の狭間で何とかして動こうと躍起になる。
しかしその意志とは裏腹に足は動いてくれない。
「......クソッ」
罵倒の文句を小さく漏らす。
隠れていた月が雲から飛び出したのだろう。
暗かった路地裏に微かな光を与える。
と、同時に一人の影が目に飛び込んできた。
その人物は青い軍服を着ている。
......この街の憲兵だ。
フードの人物はゆっくりと首を振る。
「嫌だ。戻りたくない......」
その声は届かなかったのだろう。
軍服の人物は目の前に立ち、何かを首に向かって振り下ろした。
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横に首を振る汚らしいボロキレを纏った人物。
それの前に私は立つ。
どうやら荒み切った心にも道徳心は少しばかり残っていたのだろう。
若干の躊躇いが私を襲う。
もしこれを目の前の人物に注入したらどうなるのか。
人体に害をなす物質ではないのか。
私のように体のどこかに異変が現れるのではないか。
この行動が果たして街を守る、憲兵として正しい行動なのか。
いくつもの疑問が私を取り巻く。
赤い物質が入った注射器のような物を持つ左手が小刻みに震える。
「カシュッ」
軽い音が街に響いた。
ハイ。どうもこんにちは。おっさんです。
ハトってかわいいよね!と思っていました。昔はね。
ですが現在は忌むべき対象ですよ。
いつからでしょう。
ハトの鳴き声で目が覚めるんですよ。
で、ベランダを調べたらいるんですよ。ハトが。室外機の上に。
ここまではかわいかった。うん。
ですがそれから一週間ほど。
まー五月蠅いこと五月蠅いこと。
せっかくの休日に動画でもみるかーっと開いても聞こえるのはハトの鳴き声だけ。
......割と投稿時間がヤバいので今日もこの辺で。
気が向いたらこの続きを。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
それではまたどこかで!! ではまた!!




