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もしかしてこれって異世界転移?  作者: ぬか漬けプディング
第三章 王都 アスガルド
107/123

ムガルの呪い

ムガルという生物に噛まれると麻痺が広がって死ぬ。

これがムガルの呪いなんです。そうなんです。

9月12日     PM5:37


「なんでアリノがここに...まさか治療法が見つかったの?」

シルフィンは目の前のアリノに期待を持って訊ねる。


その質問に首を振るアリノ。

「ごめん。まだ分からない。それよりもショウヘイがムガルに噛まれた。」


「!?」

シルフィンは目を見開く。

ムガルに噛まれることは死を意味する。

これはムガルの持つ特性であり、長くとも1か月程度で死に至るのだ。

因みに先ほどシルフィンが言っていた『治療法』はこのムガルに噛まれても生き延びる方法を指す。


シルフィンは唾を飲み込み、アリノに声を抑えて聞く。

「噛み傷の数は?」

「...体中。多分10以上はある。」

「10以上...」

シルフィンは絶句した。


一つの傷を中心に麻痺が進行するのだ。

体中に10以上の噛み傷が付けばその分、麻痺の進行が速くなり死ぬ。


「シルフィン、どうした?」

部屋の奥から声がした。

「スミス...!!ちょっと待ってて。」

シルフィンはアリノに一言告げてから部屋の奥に消えていった。


それから十秒ほどでシルフィンは戻ってきた。

「詳しい話は中で話そう。」

アリノは頷き、部屋の中に入った。


――――――――――――――――――――――

9月12日     PM5:38


「やあアリノ。久しぶりだね。」

ベッドの上で上体だけ起こしてこちらに笑いかける男性はスミス。

俺を保護してくれた人物であり、ムガルに噛まれ現在下半身麻痺でベッドの上での生活を余儀なくされている。


「久しぶり...あれ、オネェキャラは辞めたのか?」

俺は素朴な疑問を目の前の人物に投げかける。

「うん。もうそうする必要が無くなったし。」


スミスははにかみながら答えた。


「ところで本題に戻るけど、ショウヘイがムガルに襲われたらしいね。」

彼はこちらを見ながら言う。

「ムガルに噛まれた張本人から言わせてもらうと噛まれた直後から少しずつ麻痺が広がる。

 憶測に過ぎないけど...ショウヘイの命は大体2日程度だと思う。」

「2日...」

具体的な日にちを伝えられて俺は戸惑う。


「だからアリノはその間ショウヘイと一緒にいたほうが良い。

 アリノは覚えてないけど彼にはアリノとの思い出もあるだろうし。」

「...。いや、俺はまた森に潜る。」

アリノはスミスの意見に首を振って反対する。


「どうしてだい?彼に残された日は少ないから無駄にしない方が良いん...」

「残り少ないからこそ無駄にしたくない。」

「!!なんでそうなるんだ。君も疲労が蓄積しているだろう?なんでそこまで...」

「2日で麻痺を治す方法を見つければいいだけだ。」


俺はそう言いのこし、部屋を出ていった。


「「...」」

「シルフィン、お願いがある。」

「何?」

「アリノを手伝ってくれないかな。」

「まぁ...いいけど。」


シルフィンは頷き、アリノの後を追い部屋を出ていった。


――――――――――――――――――――――――――

9月12日     PM5:39


果たしてこの行動が正しいのか分からない。

ショウヘイと残りの二日間共に過ごして俺の記憶について聞いた方が良かったのだろうかと考える。


いや、俺の選択に間違いは無いはずだ。これできっと良いんだ。

無理やりでも自分の行動が最適であると言い聞かせ、俺は森に行こうと宿屋のドアのぶに手を掛ける。


その瞬間、背中に軽い衝撃を覚える。

「私も森に行くよ。」

そう言うのはシルフィン。


「全部アリノに任せるのは悪いからね。」

へへへと笑いながら彼女は頬を掻いた。


かくして俺とシルフィンの二人で再び森に向かうことになった。


――――――――――――――――――――――――――――――

9月12日     PM6:26


ニメ=フルフィアから離れ、王都アスガルドにて。


「は~...」

盛大な溜息と共にマチルダはベッドに飛び込む。

柔らかな感触が身を包むが彼女は全く安堵していなかった。


あの白髪の紳士に連れられて救護院に行ったのはいいが、そこにもイザベラがいなかった。

まぁ彼もイザベラ探しに加担してくれると言ってくれたのは心強いが。

そんな事よりも、だ。


ショウヘイが未だ帰ってこないのだ。

「ま、まぁショウヘイは帰ってくるのは遅くなると言っていたから今日帰ってくるとは思わなかったけど。

 それにショウヘイの事だから何があろうと大丈夫でしょ。

 絶対に帰ってくると言ってたし。」


―彼女はショウヘイの命の灯が消えようとしていることなど露知らずである。


―――――――――――――――――――――――――――

9月12日     PM6:54


アリノとシルフィンは森の前に立つ。

昼間とは異なり、全てを拒むかのように闇がそこにはあった。


「よし、行くか。」

そういい、俺は右手から炎を出す。

「あ、アリノ魔術使えるようになったんだ。」

「ん?...まぁな。」

以前ならはしゃいでいたのだろうが、今はそんな心の余裕なんてないアリノは素っ気なく返答し、ズンズンと森の中へ歩いていく。


どこか冷たいアリノの返答を聞いたシルフィンはふくれっ面でアリノの後ろを小走りで付いて行くのだった。


―――――――――――――――――――――――――――

9月12日     PM8:36


森の奥深くにて。

アリノは松明代わりに右手から炎を出しし続けながら森の中を進む。

その炎は轟々と燃え続けており、消える予兆は一切ない。


シルフィンはその炎を見て、疑問が思わず口についた。

「右手、熱くないの?」

「...ん?あー...いや、全く。」

アリノはシルフィンに目を合わせることなく、前だけ見て答えた。


「それどうなってるのさ。」

「それが俺にも分かんないんだよ。」

アリノは今もなお燃え続ける右手をマジマジと見つめながら答える。


一見、右手自体が燃えているようにも見えるが、ほんのりと熱を感じるだけで痛みなどないため本当に手が燃えているわけではなさそうだ。


「...それはそうとムガル、一切出てこないな!!」

アリノは思わず声を出す。

奴らがどうやって外敵を感知しているのか未だに不明だが、ここまで外敵を侵入させることなど一切ないようだ。

横でシルフィンも首を捻っている。


「もしかして...ムガルは炎を嫌うから寄ってこないのか?」

アリノは炎を消す。

「いや、それは無いでしょ。スミスが襲われた時ちゃんと焚火を灯していたのにムガルに襲われたし。」

「それもそうだな。」

アリノは頷き、再び炎を出した。


「...もう遅いし、ぼちぼち帰るか...?」

ムガルの気配が一切しないため、一旦帰って体力を回復させるのが最善の手だろう。

このまま森を散策し消耗しきった状態でムガルに襲われたら目も当てられない。


「ちょっと待って!!何あれ!?」

アリノが灯す炎を反射する物質が遠くに見える。

あれは...


「昼間の一枚岩(モノリス)か...」

鈍く光を反射する黒い岩石がそこにはあった。


「何これ...こんなものがあるなんて初めて知った...」

シルフィンはそう言い、ソレに触れた。

「それにこの文字...なんて書いてあるのか分からない」

彼女は鈍く光る黒い巨大な石板に刻まれた文字をなぞる。


「今はそんなよく分からない石板にかまけている場合じゃない。ひとまず帰って体力を回復しよう。」

アリノはそう言い、シルフィンに背を向けた。

「...それもそうだね。」

シルフィンはアリノの後を追いかけた。


――――――――――――――――――――――

9月12日     PM11:28


俺とシルフィンが宿屋に戻ってきたのは夜の11時過ぎであった。


「帰りもムガルに遭遇することなかったな...」

「うん...」

俺はドアノブを回し、ドアを開ける。


そこにはベッドで寝ているスミス...とショウヘイがいた。


「あれ...?」

俺はその光景を見て首を捻る。

幻覚だろうか。

ショウヘイは今頃ベッドで寝ているはずなのだが。


「ちょっと!急に止まらないでよ!!」

俺より身長が低いシルフィンは脇の間から顔を出して前を見る。

「あれ?なんでショウヘイがいるの?」

彼女もショウヘイが見えるらしい。

どうやら幻覚ではなさそうだ。


「...もう一度聞くよ。本当に体に違和感はないのかい?」

ベッドの上で上半身のみを起こした状態でスミスは目の前に立つショウヘイに質問をする。

「無いよ。ただグルグル巻きの包帯で体が動かしづらい程度。」

「ムガルに噛まれた付近は麻痺とかしてない?」

「全く。」

ショウヘイは首を横に振る。


スミスは腕を組んで唸る。

「どうしたんだよ。スミス。」

俺はスミスに訊ねる。

「実際にムガルに噛まれた身だから言うけどね、ムガルに噛まれた直後から噛まれた部分が痺れるんだ。

 で時間が経過するとともにその痺れが広がるんだけど...」

「そんなもん一切なかったです。」

ドヤ顔をしながらショウヘイは親指を立てる。


「なんでショウヘイだけムガルの『呪い』が効かないの...?」

シルフィンが呟いた。

「...!!なぁ、ショウヘイにはお前の魔術掛からなかったよな?」

俺はシルフィンに声を掛ける。

「え?う、うん。」

突然のことに彼女は戸惑いつつも頷く。


「なぁスミス。今ショウヘイに魔術を掛けれるか?」

「分かった。...ほい!!」

「...フッ...何かしたのか?」

ショウヘイはニヒルな表情で浮かべる。


「あー...なるほど。もしかしたらムガルの呪いの正体が分かったかもしれない。」

「魔術...か。」

俺の言葉を遮ってシルフィンが言った。

あぁ...最後まで言いたかったのに...


「いや、それは無いよ。」

スミスは首を横に振る。

「魔術は遺伝子によって異なるものだと言われてい。そして魔術は遺伝していく。少しづつ変化しつつ。

 だから論理的に全く同じ魔術を使える個体は自分の他にいないんだ。」


「...つまり全く同じ個体がいたとしたら、魔術は同じものになる...と言う事か?」

ショウヘイはスミスに聞く。

ベッドの上で彼は頷いた。

「でもそんなこと不可能だ。全く同じ遺伝子を持つ個体なんているはずが無い...」


「クローン。」

ショウヘイが一つの単語を声に出した。

「俺が来た世界では同じ遺伝子を持つ個体を作る研究がされていてね。

 実際に同様の遺伝子を持つ生物が作られた。

 それがクローン動物だ。」


クローン...

どっかで聞いたことがあるような、無いような。


「という事はムガルの『呪い』は魔術によるものなのか...」


ムガルの謎が一つ分かり、歓声を上げる輪の外でシルフィンがショウヘイの事をじっと見つめていた。

はい、どうもこんにちは。ぬか漬けプディングです。


ショウヘイが魔術使えないよーと書いてあるのは

「9月8日 AM4:30~4:35 魔術と拒絶」


魔術は遺伝子で決まる云々かんぬんは

「こどく【孤独】」

というお話に書いたことです。


...~話とか書いてないから探しにくいな...

今度から気を付けよう。



話が変わりますが、この話で登場する異世界は生態系がムガル等の魔獣除いて生態系に変化がありません。

決して生物とか考えるのが面倒くさかったからでは無いです。本当に。


それではこれにて後書きを終わります。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

それでは!!

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