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もしかしてこれって異世界転移?  作者: ぬか漬けプディング
第三章 王都 アスガルド
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150年の想い

9月12日 AM8:32


俺はマチルダの部屋のドアをノックする。


ノックに応える声が聞こえないため、起きているのか分からないが俺はそのまま話す。

「いつ帰れるか分からないけど...絶対に帰ってくるよ。だから必ずまたイザベラを探しに行こう。」

短い別れの言葉を扉越しに言い終えると、俺は後ろを振り返る。


そこにはアリノの姿。


「別れの言葉はそれだけか?」

「...永遠の別れでもあるまいし...そんなに長々しい言葉はいらねぇだろ。」


それもそうだな。とアリノは頷き、俺達二人は出発した。


――――――――――――――――――――


ベッドの上、幼い少女であるマチルダは目を覚ましていた。


先ほどのショウヘイの声が脳内で木霊する。


ベッドで少女は寝返りをうつ。


「別にいいし...一人でイザベラを探すし...」


彼女は誰にも聞こえないほどの小さな声で呟いた。



遠くで宿屋のドアが音を立てて閉まる音が聞こえた。


――――――――――――――――――――


『生物の持つ毒の種類は大きく分けて三種類ある。

 神経毒・出血毒・筋肉毒である。


この世界に生息するムガルは幹部に入るとジワジワと時間を掛けながら体を麻痺させながらゆっくりと死に至る毒を持つ。』


その種類は神経毒に当たると俺は考える。


アリノはニメ=フルフィアに向かう街道を歩きながらショウヘイに言った。


「ただ一つ不可解な点があってな...麻痺毒って即効性があるのが普通なんだよなぁ...。

 ムガルの毒によって死ぬのは大体1カ月ほど掛かるらしい。

 これって簡単に言うと自然の摂理に反しているんだよなぁ...。」


まぁ伝承通りタナカ大魔王が造った生命であるのならそれも頷けるんだけど、とアリノは続けて言う。


街道のすぐ脇...小高い生垣を超えた所に廃村がアリノの目に写った。


「なぁ...あの散村もムガルに襲われて壊滅したってお前言ってたよな。」

3日ほど前、この街道でショウヘイが言っていたことだ。


「あぁ...」


アリノの問いかけにショウヘイは頷く。


「ちょっと寄っていかないか。ほんの少しでも証拠があるかもしれない。」

ショウヘイはその提案に頷き、二人は廃村を調べることにした。


―――――――――――――――――――――――――

9月12日     AM9:53


アリノとショウヘイは廃村に足を踏み入れる。


村が機能していた時はきれいに整備していたであろうが、今では膝の高さまで草が生え時の流れをヒシヒシと実感させる。


「とりあえず手分けして探そう。俺は向こうを探そう。」

俺はショウヘイに提案する。

ショウヘイは頷き、二手に分かれた。


俺は近くの小屋...いやこれは小屋と言えるのだろうか。

丸太を組んだ簡易な小屋だったのだろうが、長い年月で所々朽ちている。


ともかくその中に入る。

地面は土を固めただけの作りであったためだろうか。

屋根が無い今ではぬかるんでいる。


ベッドは無く、この小屋の住民は床の上で寝ていたようだ。

ショウヘイがこの村で休もうとしたが断念したと苦言を漏らしていたのも分かる。


「......。」


ここで俺はあることに気付く。

死体が無かった。

ぬかるんだ地面にあるのはここの住人の衣服であろうか。

泥で汚れた痛んだ布が無造作に置いてあるのみ。


...衣服を置いて他の村等に避難するとは到底考えられない。

...小屋の住人の死体は長い年月により分解されたのだろう。


ーアリノは小屋を後にした。


――――――――――――――――――――――

9月12日     AM10:33


9戸ほど小屋を漁っただろうか。


奇跡的に損傷の少ない小屋に当たった。


小屋の中に一歩踏み出す。


突如、匂う腐臭。

俺は鼻を手で覆う。

が、臭いはその手をものともせず、俺の鼻を刺激する。


今まで捜索した小屋は崩壊一歩手前であったため、臭いの逃げ道がある程度あったと思われるがこの小屋は比較的気密性が高いためか匂いがこもったままであった。


俺は手で鼻を覆ったまま小屋に入る。

屋根は傷んでいないため小屋の中は暗い。


そこで俺は部屋の中に一つあったランプを拝借することにした。


ここも同じように地面の上で寝ていたようだ。

地面の上に泥にまみれた布が数枚転がっている。


この村で何が起きたのか……それを記した書物は無いか探す。


あった……

かなり傷んでおりボロボロではあるがこの家の住民の日記と思われる書物が戸棚の中にあった。


ページをめくる。

一日の出来事を1行で書き記してある。

その日記が数冊。


ざっと目を通したところ、この家の住民が第1子を授かった日から日記は始まっているようだ。


良くもこんなに日記を書き続けることが出来るものだと思いながらアリノは他人の日記を読み進める。


「!?」

とある日付の日記が目に止まる。

それはムガルの襲撃について書かれたものでは無い。


・・・・・・・・・・・・・・

348年 5月24日

異世界人と思われる少年がこの村に訪れたらしい。まぁ私のところには彼を売った金が流れてくることなどないから関係ないのだが。



異世界人を売った……?

この売るというのは奴隷として売ったという意味だろうか。

昔は異世界転移をした人物が奴隷として売買されてきたということか?


ーいや、今はムガルの事だけに集中しろ。

なんたって時間が無いのだ。


再びページをめくる。


ーーあった。

ようやく見つけた。


・・・・・・・・・・・・・

353年 8月3日

この村を狼のような生物が襲った。運の悪いことに麦の収穫と被った為、私を含め 村の多くの住人が噛まれることになった。死者の数も決して少なくはない。もうあの様な出来事が起きなければ良いのだが……。


この日だろう。

この村がムガルに襲われたのは。

今から約150年前の事か……日記から伺えるようにこの時はムガルが広く知られてはなかったとわかる。


俺は唾を飲み込みページをめくる。


・・・・・・・・・・・・・・・・

8月4日

なんだか昨日狼に噛まれた場所がヒリヒリする。傷跡がなんだか熱を帯びている。安静にしておこう。


8月5日

痛みと熱は一向に引かない。それどころか夫も子供たちも同じような症状を訴える。まぁこの程度の傷、すぐに治るだろう。


8月6日

痛みは引いたが熱と痺れは残ったままだ。それどころが広がった気がする。ご近所さんも同じようなことを言っている。感染症だろうか?


8月7日

なんだか動くのがだるい。夏風邪かなにかだろうか。


8月8日

やはり何かおかしい。噛まれた場所に近い関節が動かしずらい。


8月9日

右足が動かなくなった。ひこずって動くことを余儀なくされる。


8月10日

子供の一人が急に崩れるように倒れた。両足が動かないらしい。

どうしてこんなことに……


8月11日

左足の膝が動かしずらくなってきた。この村で無事に体が動かせるのはほんの数人だけだ。彼らに医者を呼んでもらうことになった。これで助かるかもしれない。


8月12日

もう両足が動かない。這って動かざるを得ない。この村を訪れたものは異様な目で私たちを見るだろう。


8月13日

3人の子供全員が動けなくなった。一番最初に足が動かなくなった子は右腕と肩から上以外は動かなくなった。


8月14日

子供の一人の呂律が回らなくなった。どうして……


8月15日

子供が死んだ。


8月16日

いよいよ左腕も動かしずらくなってきた。この日記が書けなくなる日も近いのかもしれない。


8月17日

喜ばしいことに呼んでもらった医者に診てもらうことになった。もしかしたら助かるかもしれない。


8月18日

医者は首を捻るだけだった。このような症状は見たことないという。淡い期待だった。


8月19日

子供が全員死んでしまった。それだけでなく利き手である右手の肘も動かなくなった。明日になればこの右手も動かなくなるだろう。夫も寝たきりだしこの先どうすれば良いのだろう。


8月20日

右手が使えなくなったのでペンを口に咥えて文字を書いている。そのため文字が汚いが……仕方の無いことだ。

きっと近いうちに私は死ぬだろう。

私の隣で少しずつ腐ってゆく子供たちのように。


それはそうと体が動くものはこの村を捨ててニメ=フルフィアに向かったらしい。

彼らを責め立てることなど出来ない。

私の体が動くのならきっと彼らと同じ行動を取るだろうから。


彼らはこの症状の原因は結局分からずじまいだったが、後にこの日記を読んだ者がきっとその原因を解き明かしてくれるだろう。


まさか私の日記がこのように何かの為になるとは思ってなかった。



8月21日

呂律が回らない

力が入らない口でペンを咥え、文字を書く。

もう喋れない私の気持ちを伝えるにはもうこの方法しかない。


どうかこの村の住民の……私たちの死を無駄にしないで。

私からはこれしか残せなかったけど……

私たちの死を意味あるものにしてほしい。


それじゃあさようなら。



ページをめくる。

ー白紙

先程の日付で日記が終わっていた。


俺は日記をカバンの中にしまい、小屋をあとにした。


ーーーーーーーーーーーー

9月12日 AM11:47


もともとそんなに大きくない村だ。

探索し終わったショウヘイと落ち合い、俺は再びムガルの蔓延る森へと向かう。


「そっちはどうだったよ。なにか成果はあったのか?」

ショウヘイは前を向いたまま俺に訊ねる。

「いや……」

「そうか……」

俺の言葉に彼は嘆息を洩らす。


「ただ……」

「?」


「何があろうともムガルの謎を暴く覚悟は出来た。」

俺はカバンに軽く触れる。

硬い触感が手に伝わった。

はいどうも。ぬか漬けプディングです。


あとがき終わぃぃぃぃ!!(書くことない)


それでは!!


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