大日本帝国非科学部門駐米部隊赤い番犬総隊長早乙女煉帰国その四
第五部隊が現場に駆けつけた時には、今回の襲撃犯「土本一」と無傷で倒れている星下幻徒が倒れていた。
「幻徒!無事か?!」
風斗と雷火が慌てて近づき、安否を確かめる。
「幻徒の方は無事見たいです!」
脈拍と呼吸を確かめる。
「そうか…。問題はこいつか」
「大丈夫、息はしてるわ、それよりダーリンを早く病院へ」
由紀が冷静に口を開く。
「そうだな。明、手伝ってやってくれ」
「解りました…」
不安そうな表情を浮かべる。
見た目は冷静を装っているが、気を緩めば不安で涙が溢れて来そうだ。
「土本の身柄は俺に任せてくれ、後は頼む」
風斗は白髪混じりの頭を風に揺らしながら、周りを見通し驚きで溜息を漏らす。
「これはあの二人がやったのか…、まるで隕石でも落ちて来た見たいだな」
煙草を吹かしながら、数歩歩く。すると、ポケットの中にある小型携帯情報端末が着信のベルを鳴らす。
「はっ~。もしもし、風斗ですが」
『そんな、嫌な声を出すな』
「将軍が電話して来る時は何時も、良い知らせがないもので」
『土本一の確保は完了したか?』
「はい。今、搬送部隊を手配しました。到着まで直ぐかと」
『そうか、それなら良いんだ。それより、まずい事になったぞ』
耳元に聞こえる獅子王将軍の声が何時にも増して、険しくなる。
「あなたにとってまずい事は日常茶飯事でしょ」
『円卓の星が全員集まっているらしい』
「は?それは私に関係…。まさか!あの光の柱!」
『そうだ、あの光の柱が全世界に観測された。円卓の星は十中八九、幻徒君だと思っているだろう…』
その言葉を聞いた時、額から冷たい汗が流れる。
「幻徒が危ない!」
『落ち着け、まだ向こうも動いておらん!だが、五色の花が動くかもしれん』
五色の花。それは円卓の星に選ばれた、五人の魔術士の事である。
この五人の魔術士達は国内で五本の指に入る実力者である。
その力は戦略兵器級だと言われ、一国を消滅させるほどである。
主な活動は国内または国外に存在する日本と円卓の星に都合が悪い組織と人間を抹消する事である。
土本一襲撃事件後日、日本帝国上空。
「今日全員集まって貰ったのは先日、第三区画特別第二番地で発生した光の柱。これは全世界に観測されてしまった、早急に対処しなければならない」
円卓の星代表代理獅子王が何時にも増して眉間のしわを寄せている。
「おやおや獅子王殿、そんなに怖い顔をなされなくても周りのハエは飛んでおりませんが?」
羊座を司る、羊群冥が暢気な声を上げる。
「昼寝のしすぎで呆けたか?羊群?」
「何時にも増して機嫌が悪いじゃない?少しは落ち着いた方が良いんじゃない?血圧が上がるわよ?」
一切、場の空気を読まずに早乙女が口を挟む。
「発言を許した覚えはないが?早乙女殿…」
「まぁまぁ、落ち着いて下さい。アニキ、確かに周り国はまだ動いてません」
蛇口が全員の情報端末に資料を送る。
「相変わらず狭い場所に入るのは得意な奴だな、私には無理だ。遠くの物を見るのは得意なんだが…」
射手座を司る霜月朧が驚き口を開ける。
「蛇口、これは事実か?」
「二十四時間の各国の情報何で、間違いないです。気になる事がありまして…」
何時も鋭い口が少し歪んでいる、彼にとっては心配する事なんであろう。
「中華大連合か?」
「そんなんですよ…。あいつらまたこっちにちょっかい出して来そうなんですよ!」
中華大連合。第二次世界大戦終戦時、大日本帝国とアメリカ合衆国が同盟を結んだ時に危機感を感じた中国は韓国、北朝鮮、香港、フィリピンを取り込み連合を組んだ。
その目的は周辺国への威嚇と侵略である。
「あいつらのは狙いは我が国には無いはずだが?」
「連中は理由は何でも良いのよ、その辺は獅子王殿の方が一番解っているはずでは?」
「亀ノ、貴殿もあいつらの陰険さはぬしも良く知っているだろう?」
円卓の星が懸念してるのは、中華連合がこの国に何かある度に事を仕掛けてる来る。
一番記憶に新しいのは尖閣諸島の領海に侵入し、武力衝突。
数年前には日本領海に眠る海底資源を廻り、獅子王家とも衝突をした。
他にも事例挙げればきりがない。はっきり言って、日本にとっては目の上のたんこぶである。
「アニキ、連中が狙ってる物って?」
「恐らく、『鏡』だろう」
中華大連合が喉から手が欲しがっている物。それは『鏡』と呼ばれ、正式名称は三角縁神獣鏡。
「鏡?それって…」
「あんたも鈍いわね、連中が狙ってるのはただの鏡じゃないわよ」
「うるせぇな。ばあさんは黙ってな」
早乙女が口を挟んで来たのが面白くなく、口調が荒っぽくなる。
「止めんか貴様ら!今は争っている場合ではないわ!奴らが事を起こす前に対策を考えろ!」
獅子王の一括で静寂が生まれ、全員が子供のように大人しくなる。
「「…」」
この静寂の中に一人、男が立っていた。この重圧の中に平気な表情を浮かべている。
「怒りすぎると血圧が上がるぜ、親父」
細身の身体に特徴のある、水色の両目。胸ポケットに青色の花が刺繍してある、ジャケットを羽織っている。
「早かったな、氷堂」
この男の現れ、さらに周りがざわつき始める。
「獅子王殿。まさか、五輪の花を使うのですか?少しやりすぎじゃないかい?」
「ほう…、早乙女。何か不味い事があるのか?他に意見があるなら、言ってみろ」
「…。ないわよ」
何か言いたいと表情が語っている口を閉じた。
「親父、他の連中は来てないのか?」
「他の者達はまだ、米国、中華大連合、EUにおるわ。手が空いているのが貴殿しかおらぬ」
「それで、今回は?」
「以前から目を付けている大日本帝国軍非科学部門第五部隊所属星下幻徒訓練兵。正式名称聖遺物集合体の様子を見て来い」
「良いのか?非科学部門って、親父の身内がいるんだろ?不味くないか?」
眉間にしわを寄せ、重く苦しく口を開く。
「構わん…。我が国に害があるなら、始末しろと言いたいが…。それは貴様に判断を任せる」
「はっ。五色の花、青色の魔術士氷堂氷香円卓の星の命を受け、只今より任に就きます」
氷堂氷香は円卓の机の前に膝を着く、その姿は西洋の騎士のようだ。
そして立ち上がり歩き出す、その足元は跡が凍り付いていた。
その日の夜。非科学部門医務室。
「ここは…。またベットの上か、いてっ!」
目覚めると何時ものベットの上。
窓に目を向けると明がベットに倒れこむように寝ている。
その姿に思わず、見とれてしまう。女性の寝顔をこんな近距離で見るのは初めてで心臓の鼓動が早くなる。
「起こした方が良いのかな…」
肩に触れようとした時、部屋の扉が開く。
「おい、幻徒。家の娘に何してんだ?あぁん!」
風斗が入って来るなり、睨み付ける。
「べ、別に何もしてませんよ!起こそうとしただけです!」
「う~ん…。星下、目が覚めたのか?!」
騒がしくして目が覚めてしまったらしい。
「起きたばかりで悪いが、由紀がお前の事を呼んでたぞ。直ぐに行ってやってくれ」
「解りました」
明は風斗の言う通りに部屋を後にする。
「幻徒、失礼ながらお前の身体を見させてもらった」
「そうですか」
二人の間に流れる空気は少し重かったが、お互いが何が言いたいか理解出来た。
「何時からだ?」
「僕が気づいた時は八月頃でした、その時はただの切り傷だと思って特に気にしませんでした」
「今回の戦闘でさらに酷くなったって訳か…。まだ、痛むのか?」
「いえ…、力を使うと痛みが走ります」
「そうか、とにかく今は休め。そういえば、お前の携帯に連絡が入ってたぞ」
風斗から情報端末が渡される。すると、寅雄から連絡が入っていた。
『文化祭があるから、顔だけでも見せろ。皆、心配してるぞ』




