第6話 校長の悩み②
梓も見てみると、さっきまで普通の銅像だったのに今は顔の上半分が溶けたみたいになっていた。
「顔がドロドロ」
2人の声を聞いた校長が駆け寄って、自分の銅像を見て愕然とした。
「ワシの銅像がーー!!」と言って、力が抜けて倒れた。
「今の間に誰かが溶かしたってこと?」
ひかりは校長を無視して、梓に質問した。
「いやそれはありえないよ。銅を溶かすには1000℃くらいの温度が必要だから。おそらく魔法とか?」
梓は疑いの目をひかりに向けた。
ひかりは慌てて弁明した。
「いやいやいや、アタシじゃないよ。アタシが一回校長室出た時はなんともなかったし、もしかして魔法使える人が他にいるってこと?」
「わからない……そういえば、とっておきの魔法を使ってみたら」
梓はひかりがさっき言っていたことを思い出した。
「あーそっか。銅像さん何があったか『話して』」
すると銅像の口がムニュムニュと動き始めた。
「あーあ」とチューニングして低い声で銅像が喋り出した。
「なんだ、喋れるぞ……! どういうことだ?!」
「アタシの魔法で喋れるようになったの!
聞くけど何があったの?」
「何があったって言われても、気がついたら誰かに運ばれているような感じがして、ここに置かれた」
銅像は何も知らなそうな様子。
「誰に運ばれたの?」
「わかるわけない。目が見えないのだから」
銅像は目まで溶けているので見えてなかった。
「ただ、あのクソ校長とか悪口を言っていた、運ばれている間……あと粗悪品って聞こえた」
「いやそんなこと言ってないけどなー」
ひかりはしらを切った。
「運ばれたってことはもしかするとすり替えられたのかも」
梓は冷静に推理した。
ひかりはそれを聞いて銅像に質問を始めた。
「ここに来て何年?」
「今さっき運ばれたから何年も経ってない」
これで2人はすり替えられたと確信。
「ってことは、犯人が銅像持っていた。ならアタシの魔法で探せる!」
「魔法どんな?」
「物限定だけどどこにあるか分かるの!」
「なにそれズルじゃん」
ひかりは銅像にお礼を言って離れようとすると、銅像が呼び止めた。
「待て。忘れてないぞ。お前は粗悪品と言ったこと。それに色々情報あげたからな、出すもの出してもらおう」
銅像はひかりに怒った声で要求した。
「出すものって何? ポッチー?」
ひかりは粗悪品と言ったことを悪かったと思い要求に応えた。
「銅像なんだからポッチー食えるか。あれだよ、『お』から始まるあれ」
「『お』? あーお菓子ね! はい、ポッチー」
ひかりはポケットからポッチーを差し出した。
「さっき食べれないって言っただろ!」
「なんでもう一回ポッチーって言ったの?」
銅像と梓はツッコミを入れた。
「あれだよ、『お』から始まって、手にしたら興奮するやつだよ」
「手にしたら興奮?あーー推しのグッズね。
しょうがないなー、はいアタシの推しの一条燦のステッカー」
ひかりはスマホのカバーに挟んでいたステッカーを取り出して、渡した。
「いらねぇよ。お金だよ、お金。10円よこせ」
銅像は強い口調でお金を要求した。
「10円でいいの?! 電子でいい?」
「ダメに決まってるだろ。10円玉よこせ」
「なんでいけると思ったの?」
また銅像と梓はツッコミを入れた。
ひかりは財布から10円玉を出して、頭の上に乗せた。
銅像は興奮した様子で話した。
「おおおーたまらないこの感覚!
それにこの感じギザ10ではないか!?
気に入った! 更に教えてあげよう。
少し前、宅配ですって声が聞こえた後、確か田中士郎様でしょうかって聞こえた気がする」
その言葉に2人は耳を疑った。
「本当に?! これが本当なら犯人すぐ分かる!」
「そうだね。ひかりは魔法で調べてみて銅像がどこにあるか。私は田中士郎が誰か調べるから」
梓はひかりに指示をして、校長に近い人物がイタズラをしていると考え、田中士郎を知っているか校長に聞くことにした。
そのためにはいつの間にかショックで気絶していた校長を起こさないといなかった。
「『サーチ』校長の銅像がどこにあるか教えて」
ひかりは魔法を使い、頭の中に黒いステーションワゴンの荷室に置かれている様子が流れた。
「車にある!」
それを聞いた梓は、
「車?てことは先生が犯人か」
と推理した。
ようやく校長は目を覚まして、起き上がった。
梓はすぐさま校長に聞いた。
「校長先生、田中士郎をご存知ですか?」
「あー知っているとも。教頭先生だ」
「教頭が犯人なの!?」
ひかりは眉を上げて驚いた。
「なに?! 教頭先生が犯人?!」
ひかりの言葉に校長も同じように驚いた。
「校長先生、教頭先生を呼んでください」
梓の言葉に従い、携帯で教頭を呼んだ。
「車置き場に行こう! 本当にあるかどうか見に!」
ひかりの提案で3人は車置き場に向かった。
***
黒い車の前に行った。
「この車は教頭のですか?」
「あーそうだ、教頭先生のだ」
ひかりの質問に校長は頷いて答えた。
全部が整ったと確信するひかり、何が始まるかわからない校長、銅像の犯人は分かるが半年間のイタズラの犯人かはまだ分からないと冷静な梓、そんな3人は教頭を待った。
数分経って教頭が来ると、開口一番に校長が質問した。
「半年間、ワシにイタズラしたのは君かね?」
犯人だと決めつけたかのように怒った声で聞いた。
「違いますよ。イタズラなんのことです?」
教頭はとぼけたように知らないと言い張った。
「半年間のことは分からないけど、銅像をすり替えたのは教頭先生ですよね」
梓は追い詰めようとした。
「すり替えた? もしそうだとして、証拠はあるのかい?」
教頭先生はしらを切った。
「銅像がこの車の荷室にありますよね? 開けてくれます?」
ひかりは確信した様子で言った。
「はあーあ、ある、わけがないだろ」
教頭は急に動揺し始めた。
「そうなのか、開けなさい。これは校長命令だ」
強気に言った校長。
「なんでですか、パワハラですよ」
「開けて何もなかったら、パワハラで訴えても良いが、もしあったら犯人だからな」
またしても強く出た校長。
教頭は言い逃れできないと悟り、3人の圧に負けて、トランクを開けた。
そこには顔半分がちゃんとある校長の銅像があった。
「クソ。なんでバレるんだよ」
教頭は本性をあらわにした。
「なんでこんなことをしたんですか?」
「なんで? このハゲ校長が……」
校長が「誰がハゲだ」と言って、教頭の話を遮るが、教頭は無視して続けた。
「俺の、俺の、実水キョウコちゃんを指名したからだ!!」
叫ぶように答えた。
ひかりと梓は同時に首を傾げて「誰?」と思った。
校長は心当たりがあるようハッとした顔で質問した。
「実水キョウコってあそこのキャバ嬢か。指名しただけで何が悪い?」
「は? 実水キョウコを指名して良いのは俺だけなんだよ!!」
教頭は怒りながら校長に詰め寄って来た。
「あの……キャバ嬢のことはよく分からないんだけど、それとイタズラなんの関係が?」
ひかりは気まずそうに下から聞いた。
「半年前、俺がいつものように指名したら、先客がいるって言われて待たされた。
俺のキョウコを指名しているのはどこのどいつだと思ってみたら、お前だったんだよ!!!! ハゲ!!
だから、腹いせにお前が嫌がることしたまでだ」
教頭は吹っ切れたのか全てを話した。
「イタズラは全部教頭先生がやったって認めるということですね?」
梓は再度確認した。
「あーそうだ、俺が全部やった……どうせ終わるなら道連れだ!!!」
そう言って、教頭は校長に殴りかかろうとした。
「危ない!」
ひかりは無意識に助けようと魔法を使っていた。
——すると、教頭の顔に黒い物体が覆いかぶさる。
目の前が見えなくなり校長の前で顔面から転んでしまった。
校長の周りが眩しくなり、ひかりと梓が目を細めながら校長を見ると——ツルッとハゲていた。
——校長は2人の目線が自分の頭に向いていると気づき、頭に触れた。
あるはずの物がなくなっていたことに気づいて、慌てて周りを見て探した。
カツラは教頭の顔の下敷きになっており、力づくで抜き取り、すぐに頭に乗せた。
「見なかったことにしてくれないかな……お悩み相談部作るからさ……犯人も見つけてくれたし」
校長は暗いトーンで2人に条件付きで部活を作る提案した。
「あ、はい」と2人はあんぐりとした顔で、その条件を呑んだ。
***
その後、教頭は自己退職という形で学校を去った。
そして、ひかりと梓は使われていない教室にお悩み相談部を作った。
「やっほーい!! 校長の特例でOSB作れた!!」
ひかりは大喜びで教室を駆け回った。
「良かった良かった。でも、まず綺麗にしないとだよね」
使われていなかったので、教室は埃がすごく、物も乱雑に置かれた状態だった。
「そうだね。じゃあ、まずは物を運ぼう!」
「魔法で綺麗にできないの?」
「できないし、そういうことに魔法を使ったらダメなんだよ」
「いつも魔法を使って遅刻ギリギリで来ているって言ってなかった?」
梓は眉をひそめて、問い詰めた。
「あはは、いやー……あ、生徒が沢山いるから魔法を使えるってバレる訳にもいかないからさ」
ひかりは咄嗟に良い言い訳を思いついた。
「そう……早く片付けるよ」
「はーい!」




