第5話 校長の悩み①
「お悩み相談部?何するの?」
「OSBはアタシの魔法と梓の頭でみんなの悩みを解決しよう!って感じかなー」
「適当すぎるでしょ。私の頭?ってなに」
「梓、頭良さそうじゃん。アタシ小説なんて読めないもん。見ただけで頭がぐるぐる回る」
「そんな人本当にいるんだ。それなら、ひかりよりは頭いいね」
「言ったな。アタシだって魔法を使えば梓なんか足元にも及ばないくらい賢くなれるんだからね」
「ズルだよ、魔法で賢くなるなんて。
——でも、なんで使わないの?
それ使えばもっといい高校行けたのに」
梓は純粋な気持ちで聞いた。
「えっとね、頭良くすると自分じゃない人格が出てきて、アタシの体奪おうとするの。だから、使えない」
「そうだったんだ」
2人の間に絶妙な空気が流れた。
ひかりはすぐに話を変えた。
「まあ、使わなければいいから。それより、どうやって部活作るの?」
「作りたいのに調べてないの?
……まあ、部員集めて、顧問してくれる先生見つけたら作れると思う」
梓は淡々と一般的な情報を伝えた。
「なるほどね。じゃあ、部員集めに教室巡ろうー!
ほら早く食べて、昼休み終わっちゃうから」
ひかりはそう言うとお弁当を掻き込み、梓も続いて掻き込んだ。
ひかりは先に食べ終え、ノートを出して破り、何を言うかメモし始めた。
梓も食べ終えると、ひかりは梓の腕を引っ張って、教卓に向かった。
「ちょっと待って。私なに喋るか考えてない」
「いいから、梓は側にいて」
梓は何も知らされないまま、2人は教卓に立った。
「みんな、注目!
アタシ達2人は部活を作ることにしたの。その名をOSB!」
「いや、OSBじゃ伝わらないから。正しくはお悩み相談部です」
梓はすぐに訂正した。
「みんなのお悩みを解決する部活、どんなお悩みでもだよ!
それで、部員を集めないとだから、みんなの役に立ちたい人は入ってくれない?
もちろん入ってくれなくても相談に来ていいからね!」
ひかりは明るく演説したが、教室にいる人達は何も言わない、誰も動く気配がなかった。
梓はがっかりするがひかりは明るく「次いこう!」と言って隣の教室に向かった。
そこでも誰も入ってくれなかった。
次の教室でも、次の教室……と、ほとんどの教室を巡ったが誰も入ってくれなかった。
さすがのひかりも落ち込んだ。
「なんでだよー。アタシ絶対に作りたいのにー」
「もう昼休み終わるから、放課後に考えよう」
自分達の教室に戻っていた。
***
放課後——。
2人は教室に残り作戦会議を始めた。
「誰も集まらないのは、やることが不明なことが大きいと思う」
梓は開口一番に現状を話した。
「えー解決するだけだし、幽霊でもいいから入って来てよ」
ひかりはため息混じり吐露した。
「幽霊部員ってそういうことじゃないから。
あと解決してもらうのは良いけど、解決するのは大変だからじゃないかな」
梓はひかりにツッコミを入れながら、更に分析した。
「なんか無いの? 部員2人で作れるチート技みたいなの」
ひかりは諦め気味に呟いた。
それを聞いた梓は考えてみるがほぼ無理なことしか思いつかなかった。
「——あるとすれば、校長とか理事長に直談判するとかかな……無理だと思うけど」
梓は自信なさそうに述べた。
ひかりは名案だと思い、やる気がでる。
「それで行こう! 早速校長室に行こう!」
ひかりは校長室に向かって突っ走った。
梓は戸惑いながらもついて行った。
***
校長室の前に着くと、ドアの横には校長の上半身だけで腕がない銅の胸像が飾ってあった。
ひかりがノックすると中から「どうぞ」と返ってきた。
ひかりはドアを開ける前に『変身』と魔法を使い、全身が光に包まれて、瞬く間にピンクのロングドレスになり、髪型はショートヘアだった髪の毛が伸びて後ろ髪をトップで結び、キャバ嬢のようになった。
梓は困惑し、頭の中をハテナが埋め尽くした。
ドアを開け入ると、部屋の中央に机が置いてあり、4つのソファーが2個ずつ横に置いてあった。
その奥にデスクがあり、そこに中肉中背の黒髪でフサフサの髪型の校長が座っていた。
ひかりを見た校長も眉をひそめて困惑した。
「どうも〜校長先生お話があるんですけど、お時間いいですか?」
ひかりは妖艶に言った。
「あ、あー、良いけど……その格好なんだ?」
校長はまだ状況を理解してない様子でソファーに座りに行った。
校長と梓は対面で座り、校長の隣にひかりは座った。
「お隣失礼します。校長、お話というのは梓と2人だけで部活を作りたいので、校長のお力で作ってくださいよ」
ひかりはまだ、ネットで見たキャバ嬢のように艶やかな声で校長に言った。
「まず、君は誰なんだ?」
校長は状況を整理しようと心を落ち着かせて聞いてきた。
「えーっと、紫式部です」
ひかりはキャバ嬢っぽい名前を考えてパッと浮かんだ名前を言った。
「源氏名ってそういうことじゃないから。あとなんでキャバ嬢なの?
——あと、ひかりの源氏名が紫式部だとほぼ源氏物語じゃん」
梓はようやくひかりの行動がキャバ嬢であることは理解してツッコミを入れた。
「君と同感だ、なんでキャバ嬢なんだ?」
校長は首を傾げてひかりに聞いた。
「だって、校長を煽てたら部活作ってもらえると思って」
「だからキャバ嬢なのか。そんなことしなくても話し合えばいけると思うから、着替えて来て」
ひかりは梓の言葉に従い、校長室を出た。
ドアを閉めて次の瞬間には制服姿に戻ってドアを開けて入って来た。
「早っ?!」と校長は目を丸くして驚きをあらわにした。
ひかりは「そういうのいいので」と冷たく言い、ソファーに座った。
「私達はお悩み相談部を作りたいんです」
梓は空気を変えるためにも、主張した。
「作りたいなら、部員集めて顧問を探したらいいだろ」
「集まらないから、校長に頼みにきたんですよ。
アタシ達はなんとしても作りたいんです!
みんなの役に立ちたい!」
校長はうーんと眉間に皺を寄せて悩んだ。
梓は追い討ちをかけるように補足した。
「お悩み相談部があれば、生徒が先生には話しづらいお悩みを聞くことができて、解決まで導きます!
そうなれば、生徒のQOLが上がって学校が良くなっていきます」
「でもなー、本当に必要なのか?」
校長は疑った顔で渋った。
「なら、校長先生のお悩みを解決する。これなら許可してください!
——お悩みはなんですか?」
ひかりが提案した。
「解決できたら、考えてはあげよう。
——実はだな、半年前からイタズラを受けていてな。
最初はワシの銅像に赤のペンキで鼻血が出ているみたいにされていた。
その後からは毎日のようにイタズラされ、銅像がドアの前に置かれてたり、馬鹿と書かれた紙が机の上にあったり。
ほんとストレスが溜まる。ハゲそうなくらいに!!」
校長は現在のお悩みをひかり達に打ち明けた。
その声にはイタズラする者への怒りが込められていた。
「分かりました。アタシ達が解決します」
ひかりは快く引き受けた。
ひかりは立ち上がり、校長室を後にしようとした。
梓はついて行ったが、ドア前でひかりを止めて、校長に聞こえないように聞いた。
「なんか方法あるの? 見つけるための」
「あるよ! とっておきの魔法がね! そのために銅像に話しかけよう!」
梓にウィンクして答えた。
「銅像に話しかける?どういうこと」
「まあまあ見てて」
ドアを開けて銅像を見て、ひかりはその光景に驚いた。
「なにこの粗悪品!?」




