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【魔魅相談!】〜無双出来る力は遅刻回避に使う!?ポンコツ魔法使いと苦労人ツッコミ〜  作者: 風みやび
1年の5月

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第56話 梓の家覗くと金持ち羨ましい

 早朝——。

 ひかりはいつもと違って早く目を覚ました。

 素早い動きで身支度をして、真剣な顔立ちで戦に出かけるかのように大きな荷物を持って家を出た。


 電車に揺られ、心の中をウズウズさせて、今にも弾けそうな想いを留めていた。


 ひかりは目的駅に着き、梓を待ちきれない様子でその場を行ったり来たりして待っていた。


 しばらくすると、嫌そうな顔を隠しきれていない様子で梓が近づいて来た。


「おはようーーーー!!!! さあ、早くアタシを天国に連れてって!!!!」

 ひかりは梓を見るなり気持ちが爆発して、駅を包み込むほどの明るさで言った。


「本当にうるさいよ」

 梓は顔をしかめて静かに怒った。

「早く! 早く!」

 ひかりは梓の周りを子犬のようにはしゃいだ様子で回った。


「今日はうっとうしいかも……」

「なんでなんで?」

 ひかりはハエのような速さで横に行ったり、顔を覗いたり、梓の肩に顎を乗せたりやりたい放題だった。


 そんなひかりを置いて、梓が一番内に秘めた想いが限界を迎えた。


「だって……早いよ!! どこの誰が友達の家に朝8時から来るの!!」

 梓もひかりくらい声を張り言い放った。


 ひかりは首を傾げてピンと来てなかった。

「?……だって、梓がいつでも来て良いよって言ったじゃん」

「私はお昼ごはん振る舞うから朝の内には来てって言った」

「だから、来たよ……?」

「いや、朝が始まったばっかだし、普通常識の範囲内で10時とかに来るでしょ」


「?」

 ひかりは首を90度傾けて不思議そうに梓を見た。

 梓はこの時——このやりとり全てが無駄で、ひかりには常識という箱には入っていないことを理解した。


「そうだね、私が悪かったよ。それじゃあ、行こうか」

 梓は諦めモードで菩薩のように悟った。

「やったー!! この日のためにお母さんに新しいパジャマ買ってもらったんだー!!」

 ひかりは子供のように明るく自慢した。


「……もしかして、泊まるの?」

 梓は冷静になって頭を働かせた。

「もちろん!!」

「えっと……泊めるとは言ってないよ」

「……」

 ひかりは何を言ってるのか一瞬分からず止まった。


「ええええええ!!!! 嘘ーーーー!!!!

 今日はパジャマパーティーして、その後は布団に入って恋バナしないの!?」

 ひかりはようやく理解して、大声で叫ぶように言った。


「しないし、恋バナはすることないよ」

「そのつもりで来たのに……」

 ひかりは肩を落として残念がった。

「だから、ボストンバッグ持ってたんだ」

 梓は他人事のようにひかりを見て納得した。


「まあ、出来るだけ遅くまで居られるように交渉するから行こう!」

 梓はひかりに笑顔を向けて慰めた。

「うん!」


「あと一つ聞いていい?」

「何?」

「なんで今日は早く来れたの? いつも遅刻ギリギリなのに?」

 梓は眉をひそめて質問した。


「昨日は夜8時に寝たから」

「赤ちゃんなの?」

 梓は未知の生物を見るように不思議そうにした。


     ***


 ひかりは梓に案内されて街の中へと入って行った。

 そして、駅近くのゴチャつき人が行き来する場所を抜け出して、のどかで日当たりが最高の場所に来た。

 周りを見渡せば建ち並ぶのは一軒一軒低く広い建物ばかり。


 ひかりは場違いに思い、不安になった。

「梓、ここ本当に通るの? なんか高級な家がいっぱいだよ……?」

「あっ、そうだ、言ってなかった。

 私のお父さん——鈴木涼(りょう)だから」

 梓は不安がるひかりに対して、軽くあしらうように言った。


「そう、なんだ」

 ひかりはとりあえず相槌を打った。

「もうすぐだから」


 しばらく、歩を進めると梓が立ち止まり、

「ここが我が家」

 とだけ言った。


 ひかりは双眸を広げて顔を上げて確認した。 

 それはあまりの想像とかけ離れており、脚を震わせた。

「こ、ここが、梓の家?」


 目の前に建ち塞ぐは、海外に来たような滑らかな白に大きなガラスを合わせ、二階建てにしては大きすぎる家だった。


「そんなに驚く?」

「驚くよ!! 何これ!? まさか……」

 梓の問いに瞬時に答えて、ひかりはハッと何かに気付いた様子だった。


「アタシを驚かせようとボケたんでしょ! 本当は別の家だ!!」

 ひかりは探偵が犯人を言い当てるように言った。


“ガチャ”——梓は無視して鍵を開けた。

「入らないの?」

「……入る!」

 ひかりは何も言い返せなかった。


 2人は中に入って行った。

「お邪魔します!——うえっ、広ーーーーい!!」

 ひかりはリビングに来ると天井の高さ、広さに大声で感嘆をあげた。


「いらっしゃい!」

 ダンディな渋い声が聞こえて、ソファから立ち上がって姿を現した。


「あっ、人いたんだ……えっと、お邪魔します!」

 ひかりは誰もいないと思い大声を出したことを反省した。


 ひかりはその男性を見て目を疑った。

 父親は爽やかで清潔感があるが、それがなかったとしてもカッコいい顔立ちだった。

 オーラが別次元でまるでスターのような佇まいだった。


「私のお父さん」

「どうも、梓と仲良くしてくれてありがとうね、ひかりちゃん!」

 父親は反則級のイケメン笑顔を向けた。


「あ、えっ、カッコいい! 梓のお父さん普段何してるんですか?」

 ひかりは聞かずにはいられなかった。


 梓と父親は顔を合わせて、眉をしかめた。

「ひかり、本気で言ってる?」

「はっはっは、面白いね! 私は俳優をやってるよ!」

 父親は予想外の出来事が起こった様子で笑っていた。


「俳優ですか! どうりでカッコいいはず!」

 ひかりは笑っている理由が分からなかったが、カッコよさの理由には納得した。


「ほんとすごい……今じゃ知らない人はいないとまで言われてる国民俳優なのに、知らないとは……」

 梓は本当にひかりに常識は通用しないと心に刻んだ。


「はっは、私もまだまだ頑張らないとだね!」

 父親は笑って跳ね除けた。


「あっ、そうそう、お母さんに持たされた物があった……」

 ひかりはボストンバッグを開けて、荷物の中を探し始めた。

「あの、えっと……お口に、合うか分からないの、ですがどうぞ羊羹です!」

 ひかりは言葉を思い出すようにして、父親に羊羹が入った箱を渡した。


「わざわざ、用意してくれてありがとうね!

 後でみんなで食べよう、せっかくだし!」

 父親は笑顔で受け取った。


「あと、これお近づきの印にポッチーです!」

 ひかりはポケットからポッチーを取り出して渡した。


「あっ……」

 梓はひかりに言ってなかったことを思い出してやらかしたと思った。


「あ、うん、ありがとう……」

 父親は苦笑いを浮かべて、受け取ろうとはしなかった。


「あの、受け取ってください!! 美味しいですよ!!」

「ひかり、言うの忘れてたけど、お父さんトップ派なんだよね」


——トップはポッチーとはライバル社の細長いプレッツェルの中にチョコが入ったお菓子——


「あと、昨日からトップのCMに出てる……」

 梓は今更ながらに補完して、状況を説明した。

 ひかりは察しても、もうどうしようもなかった。

 3人の中には地獄のような時間が流れた。


 TO BE CONTINUED

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