第55話 ダブルデート終焉
「次は何乗る?」
「バイキング!」
真希の問いに蓮斗が食い気味に答えた。
「どうしたの?」
「いや、そろそろ乗りたいかなって……」
蓮斗は少しはっちゃけたことを恥ずかしく思い、元気をなくした。
「いいですね! 乗りましょう!」
「そんなに乗りたかったんですね……」
「いや別にそんなんじゃないから……」
蓮斗はさらに恥ずかしそうに後ろに顔を向けた。
「それじゃあ、行こうか!」
***
「うわー!? すごい行列ですよ!」
ひかりは目の前の光景に驚愕した声を上げた。
ジェットコースターの倍以上の行列、まさに人間アマゾン川だった。
「長すぎる!?」
真希も目を見開いて驚いた。
「そうなんだよ……ここはバイキングが有名なんだよ」
「どんな遊園地ですか!?」
蓮斗は肩を落として言って、梓は勢いよく突っ込んだ。
「ここはバイキングの上で海賊が戦うんだよ」
「えー!! めっちゃカッコいい!! 乗りたい!!」
「労基大丈夫なんですか? 危なくないですか?」
「そこじゃないと思う……」
ひかりは目を輝かせ、梓は現実的な目で冷めたことを言い、その梓に真希は違和感を覚えた。
「どうする? 乗る?」
「乗りたいです!!」
ひかりはキラキラとした目で3人の顔を見てアピールした。
「でも、夜が来ちゃうよ」
「さすがにひかり諦めて」
「ええええ……」
真希と梓の言葉でひかりは嫌な顔を全面に出した。
「まあ……仕方ないか」
蓮斗も肩を落として寂しそうにした。
「ごめんね、代わりに観覧車でも乗らない?
上からバイキング見れるし!」
真希は出来る限りの最善策を提示した。
蓮斗は大きく頷き、顔を明るくさせた。
「うん、そうしよう」
「ひかりはちょっと来て」
「うん?」
梓は手招きして、不思議に思っているひかりと共に2人から離れた。
「この遊園地デートはあくまでも依頼なんだから我慢して」
「え〜でも、」
「明日はご馳走にするから」
「ほんと!? 分かった!」
ひかりは梓の誘惑に誘われてすぐに手のひらを返して従った。
「あと観覧車では2人だけにしてあげよう」
「うん! そうだね!」
ひかりは従順に納得した。
そして、ひかりと梓は2人の元に戻った。
「蓮斗先輩、アタシも観覧車乗りたいです!」
ひかりは不自然なほどの声量で宣言した。
「えっ、うん……乗ろうか……!」
蓮斗は体をビクッとさせて驚いた。
「私も乗りたいです!」
「梓ちゃんも、やる気がすごいね……!
それじゃあ行こうか!」
梓は今日一番声を張り上げて、真希はそれを受け入れて指揮した。
***
4人は観覧車の列に並びもうすぐで乗れる所だった。
4人は楽しく談笑していた。
「……って感じで姫乃ちゃんは疲れるけど可愛いんですよ!」
ひかりは真希と蓮斗に姫乃を紹介していた。
「……ストーカーじゃない? 可愛いのかな?」
真希はドン引きしていた。
「私も可愛いとは思わないです……疲れるばっかりで……」
梓は疲れた顔で愚痴をこぼした。
「まあ……ひかりさんがいいなら……いいかな……?」
蓮斗はあまり上手いこと言えずにいた。
「真希にはいないんですか?」
「……」
真希はひかりの質問に目線を上げて考えていた。
「……そういうのだと1組じゃない?」
「ああ、そうね!」
蓮斗が真希を助けて、真希はそれがあったと言わんばかりに閃いたように頷いた。
「1組?」
「3-1は問題児が多くてね、みんな近づかないんだよ」
真希はある程度のことを説明した。
「どんな感じなんですか?」
梓は怖い者知らずで聞いてみた。
「簡単に言うと個性が強い自由集団かな」
蓮斗は誰かからの受け売りなのか他人の言葉を借りているようだった。
「私が警戒しているのは別れさせ屋よ……カップルを無理矢理にでも別れさせる……“塔”だよ!!」
真希は憎しみを込めて言葉を発した。
「なんですか塔って? 人の名前としてありえないですよ」
梓は顔をしかめて突っ込んだ。
「田和塔って名前だから」
「塔がありえた……!」
梓はハッとした表情を浮かべた。
「あっ、次だよ!!」
ひかりは話を変えるように明るく声を出した。
数分後、4人の番になった。
「来る来る!」
「ひかり、分かってる?」
ひかりは乗らないのに誰よりもワクワクドキドキしていた。
そして、目の前にゴンドラが来た。
「さあさあ、2人とも先に乗ってください!」
「え、うん!」
「強いよ」
ひかりは2人の背中を強く押して乗せた。
「スタッフさん、閉めてください」
梓はスタッフにお願いして閉めてもらった。
「え、ちょっと、ひかりちゃん? 梓ちゃん〜?」
真希は眉をひそめて、驚いていた。
「どういうこと?」
蓮斗もまた同じで驚いていた。
「バイバイ!」
ひかりと梓は手を振って見送った。
「2人の様子見に行かない?」
「見に行くって……まさか?」
ひかりは不敵な笑みを向けた。
***
「本当に落ちない?」
「大丈夫だから!」
2人はひかりの魔法で宙に浮き、真希と蓮斗のゴンドラと同じ高さにいた。
「それより、2人は……って全然喋ってないよ」
ひかりは外から覗くが思ってたのと違う光景に落胆した。
中はというと……
***
ゴンドラの中——。
真希と蓮斗の間には微妙な空気が流れていた。
学校なら普通に話せたのに状況が状況で2人とも黙っていた。
対角線に座り距離が開いていた。
(どうしたら、いいんだ? 密室に2人きり……気まずい!)
蓮斗は分からず混乱に陥っていた。
「ね、ね〜? 蓮斗は……なんでもない」
真希は下を向いたまま恐る恐る話したが諦めてしまった。
蓮斗はこの時いつもの真希と今の真希を比べていた。
(こんな真希初めて見た……いつもなら明るく話しかけて来るのに……)
蓮斗は「うん?」と眉間に皺を寄せた。
(いつも、話しかけて来て、この遊園地、で、デートも……真希から誘って来た……それに今も話しかけようとした……僕は何もしてない……)
蓮斗は深呼吸をして、覚悟を入れて目に光を宿した。
「真希!」
「……?」
真希は顔を上げて蓮斗の顔を見た。
「今日はありがとう!!!! 10年間で1番楽しかった!!!! それもこれも真希が誘ってくれたからで、僕は何もしてない……」
「そんなことないよ! 蓮斗は……」
真希は咄嗟にフォローしようとしたが、蓮斗が被せるようにまた話し出した。
「違う! 僕は何もしようとしなかったんだ……真希とひかりさんに任せて着いてくだけで……デートなのに真希を放って、梓さんとお化け屋敷楽しんだり……僕はダメだった失礼だった、ごめん!」
蓮斗は暗い顔になりながらも誠実に謝った。
その目は力強く真っ直ぐだった。
真希はどうしたらいいか分からないけど、目を見てからかいながらも笑って許した。
「うん、ほんと失礼だよ! でも、許す!」
「だから、もう一度やり直したい!!……だから……」
「いいよ! 私は蓮斗と居れるだけで幸せだから!」
蓮斗がデートを申し出る前に真希は察して、幸せの笑みを向けた。
蓮斗は目に焼き付く乙女の笑顔で心のギアが上がるのを感じた。
***
ひかりと梓は下で2人が来るのを待っていた。
「いや〜大成功だね!」
「まあ、強引ではあったけど……」
2人は心が暖かくなっていた。
そして、真希と蓮斗が降りて来た。
「2人ともひどいよ!!」
真希は2人を見るなり近づきながら怒った。
「でも、2人ともアツアツでしたよ!!」
ひかりは真希をいじるように言った。
「ちょっと、なんで知ってるのよ!」
真希は頬を赤くして、恥ずかしそうに怒った。
「アタシ達、視力いいんで!」
「梓さんは悪いでしょ……メガネしてるんだし」
蓮斗は呆れながら言った。
「いや、メガネしてるんで見えますよ」
梓は蓮斗の発言にツッコミを入れた。
「まあ要はあれですよ!」
『“恋の字は、赤く心を、染め上げる、触れられるのに、留まる想い”』
ひかりはキメ顔でカッコつけながら詠った。
「だからそれなんなの?」
「え〜知らないの!? 今流行りの時代劇風のアニメだよ!」
「知らない」
「これはね……」
ひかりと梓はくだらないやり取りを始めた。
そして、真希と蓮斗は互いを見つめ合い笑った。
本当に遅れてしまい申し訳ありません。
明日はひかりが梓の家に突撃します!




