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【魔魅相談!】〜無双出来る力は遅刻回避に使う!?ポンコツ魔法使いと苦労人ツッコミ〜  作者: 風みやび
1年の5月

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第57話 ポッチーVSトップ!勝つのはポッチだ……間違えた、どっちだ!?

 地獄の空気の中で最初に口を開いたのは父親だった。

「気持ちだけ受け取るね……」

 ぎこちない笑顔をひかりに向けた。

「ごめんなさい」

 ひかりは反省の色を浮かべて、ポッチーをそっとポケットに戻した。


「そんなに落ち込まないで、私が悪いから。

 ポッチーも美味しいよね!」

 父親は慌てた様子でひかりを励まそうと努力した。


「そうですよね! ポッチーも美味しいですよね!」

 ひかりは自分が褒められたかのように嬉しさが溢れた。


「そうだね! トップの次にポッチーは美味しい!」

「ポッチーが1番ですよね!」

「そうそう、それでトップが殿堂入りで」


 ひかりと父親は絶妙に会話が成立していない中でも、お互い引かずに主張していった。


「?」梓の頭の中にハテナが浮かび上がった。

 さっきまでは良さそうだなと眺めてたのに、急に空気がまた変わったのを感じる。


「ポッチーがあれば人生が変わりますよね!」

「トップを加えたらバラ色に変わるね」

「ポッチーが世界平和につながる!」

「トップは宇宙平和の要」

 ひかりと父親は譲らずにお互いにエスカレートしていった。


「……2人とも何やってるの?」

 梓は困惑して、眉間に皺を寄せた。

 梓の言葉を2人は聞く耳を貸さず、更にヒートアップする。


「ポッチーは何にでも最強のお菓子!!」

「トップには愛と幸せが詰まってる究極のお菓子!」

「ポッチーのチョコが1番!!」

「トップはチョコたっぷりで至高!」

 2人の目は縄張りを争う猛獣に変わった。


「2人ともやめて……しょうもないよ。あと、お父さんみっともないからひかりに譲って」

 梓は呆れ果て、遠くから物を言っている口ぶりだった。

 小学生の喧嘩を見ているような目だった。


 2人はますます自分の主張をぶつけてゆく。

 言葉の殴り合い、誇りという旗を掲げて、天下分け目の大合戦。


「ポッチーはチョコと棒のバランスが最高なんだよ!!」

「トップは最後まで入ってる欲望を刺激する!!」

「ポッチーはチョコが最初に感じる!!」

「トップは混ざり合って常に最高!!」


「ポッチーの“ポキッ”ってなる食感でどんどん食べたくなる!!」

「トップは優しい食感で口を満たして余韻を楽しめる!!」

「ポッチーはエジソン!!」

「……最高の発明品ってこと? 別にエジソンは発明品を我が物としただけだよ」


 突然ひかりは突拍子もないことを言い出して、梓は頭を働かせて汲み取り、ツッコミを入れた。


「……トップはマザーテレサ!!」

「お父さん、真似しなくていいから……愛で包み込むってこと? マザーテレサは病人に薬飲ませなかったり酷い人だよ」


 父親がひかりの真似をして言った突拍子もないことにも、梓は汲み取ってツッコミを入れた。


「ポッチーはチョコ界の宝箱!!」

「もういいよ……」

 梓はひかりの言動に辟易した。


「トップはチョコ界の給料袋!!」

「お父さんも恥ずかしいしやめて……あと、生々しい!」

 梓は父親のバカな姿に恥ずかしさが込み上げつつも、ツッコミをせずにはいられなかった。


「こうなったら」

「最終手段だ」

 ひかりと父親は急に息がぴったり合い、同時に声を出した。

「なに?」

 梓は全く先が読めなかった。


 ひかりはポケットからポッチーを出して、二本だけ取り出して箱をポケットに戻した。

 父親はキッチンに向かって、お菓子が詰まった箱からトップを見つけて一本だけ取り出して、ひかりの元に向かった。


 ひかりは両手にポッチーを持ち構えて、父親はトップをフェンシングの剣に見立てて構えた。


 両者は静かにお互いを睨み合い冷戦状態。


「2人とも何やってるの?」

「梓、これはポチトプ戦争に伝わる、決闘手段だよ」

「梓、これは相手の物を自分の物で折れば勝ちのゲーム」

「意味が分からない、それやって何になるの?」


 梓は思考が停止するレベルで意味不明な状況に困惑している。


「お父さん頑張るから応援して」

「何を応援すればいいの?」

 梓はそんな状態でも父親の言動にすぐさま聞き返した。


「行くよ!」

「来なさい」

「ちょっと待って、ひかりは二本でズルくない?」

 梓は違和感に気づいて、2人の間に割って入った。


「公式ルールでいいの!」

「公式があるの?!」

「それにどっちかの一本が折られたら負けだから問題ないよ!」

「そう、なんだ……」

 ひかりの説明に梓はもうついていけなかった。


「それじゃあ勝負!」

「かかって来なさい!」

 2人は真剣な眼差しで神妙な面立ちになった。


「ポッチー流奥義・二水猪虎乃瀧威《にすいちょこのたきおどし》!!」

「トップ型極意・閃光乃流星突輝《せんこうのりゅうせいづき》」

 2人はカッコよく技を叫んで一歩を踏み出した。


 どちらも譲らない熱い想いがぶつかり合い、両者は近づくほど相手の炎を感じて押されるが歩みを止めない。

 これが出会ってしまった者の運命と受け入れてただお菓子を振りかざす。


「何見せられてるんだろ……」

 梓はもう完全に冷め切っていた。


「もう〜“朝からうるさい”!!!!」


 2人は一瞬にして動きをやめて背筋をビクッとさせた。


 そして、髪の毛がボサボサの状態で数字の3になっている目をこすりながら眠そうにパジャマ姿の綺麗な女性が現れた。


「お母さん」

「有紀(ゆき)!」

「梓のお母さん! お邪魔してます!」

 3人の言葉に母親は聞こえてないように全然反応しなかった。


「あ〜眠い」

 母親は頭が働いていない様子だった。

 父親は母親に近づいて行く。


「有紀、聞いてよ! トップとポッチーのどっちが良いかで揉めてたんだけど、有紀はもちろんトップだよね?」


 父親は母親に対してだと威厳が全くないただの子供のようだった。


 母親は「チッ」と嫌そうにしながらも答える。


「何言ってんだよ、プリッポだろ」


——プリッポは細長いプレッツェルに野菜の旨みと塩が効いたお菓子——


「あの、どっちかならどっち?」

「あん、プリッポしか勝たん!! ね、梓!」

 母親は急に梓に同意を求め、梓の方を見た。


 母親は目を凝らして、

「梓が2人いる」

 と目が悪いのかひかりと梓の区別がついていなかった。


「今日来るって言ってたひかりちゃんが来てる」

「はあ〜なんでもっと早く言わないの、みすぼらしいじゃない!!」

 母親は父親にカッと怒りをぶつけた。


「有紀はいつでも綺麗だ!」

「うるさい」

「うっ……」

 母親は父親の言動をスルーして、みぞおちを肘で突いた。


「おほほほ、ひかりちゃん、ゆっくりしてね!

 涼はこっち来い!」

 父親は母親に連れられて消えた。


「梓のお父さん尻に敷かれてるんだね……あと、お母さん怖そう……」

 ひかりは梓の家庭環境を知り、見てはいけないものを見た気分になった。


 梓は手で顔を覆い隠して嘆いた。

「恥ずかしい……」


 TO BE CONTINUED

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