第48話 話猫物語〜Avenge〜後編
ひかりが2人とやり取りをしている間、アルはというと……
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飼育部屋——。
部屋の中は僅かな明かりしかなく、何十の檻で遮られて廃墟のように暗かった。
さらに鼻を埃の臭いと獣臭、汚物の臭い、そして血の臭いが刺激した。
近くで見るとより残酷だと分かった。
こんな所に1時間も居れば、精神を崩壊させるほどであり、犬と猫は憔悴し切っていた。
アルは臭いを気にも留めずに中に入って行き、その光景を前に憎悪しか湧かなかった。
「こんな所で、こんな所で、にゃあの母も父も、みんなの両親達が生きていたのか……にゃ」
アルは牙を剥き出して、奥歯をギリギリと噛み締めていた。
「本物の悪にゃ、ただ許すわけがないにゃ……!! 苦痛を味わわせてやるにゃ!!」
アルは爪を立てて、床に爪痕が残るほど引っ掻いた。
「まずは、逃がさないとにゃ!」
アルは怒りを抑えて、目的を果たすために近くの檻の鍵を開けた。
「さあ、逃げるにゃ!」
アルがそこに入っている猫に声をかけたが、全く動く気配が無かった。
アルは眉をしかめて不思議に思ったが、一旦無視して、次の檻の鍵を開けに行った。
次の猫も次の猫も開いたのに出る気配が無かった。
それは犬でも同じであり、誰も外に出なかった。
「なんで出ないにゃ?! こんな所とおさらばできるのに、なんでにゃ?!」
アルは信じられないような目で周りを見渡した。
「……こ、わ……にげ、たら……ころされる」
誰かは分からないが、か細い声で途切れ途切れに言った。
「大丈夫にゃ!! にゃあがいるし、それにあいつらはにゃあの仲間がすでに懲らしめてるにゃ……!!」
アルは優しく教えたが誰も動かなかった。
そんな時、「“ふざけるなーー”!!」と隣から怒号が聞こえた。
「ほら! にゃあの言う通りにゃ! さあ、早く出るにゃ!」
アルの嬉しそうな言葉でも、やはり誰も動かなかった。
アルは頭を働かせて、この状況で必要なのは——闘志にゃ、と結論付け、早速行動に移した。
「おにゃあらよく聞けにゃ。
おにゃあらはここで沢山ひどいことを受けてきたにゃ。
暗い暗い闇の底だった……だがしかし、にゃあという一筋の光る蜘蛛の糸、いや……暗い世界と明るい世界をつなぐ『虹の橋・ビフレスト』が来たからには安心するにゃ!!」
アルはまずはみんなに安心感を与えて、警戒心を解いた。
さらに続けて、今度は鼓舞するように演説した。
「すでにおにゃあらは自由を手にしてはいるにゃ……
でも、悔しくないのかにゃ? 憎くないのかにゃ? どんだけ苦しんで、どれだけの子を奪われて、夢や希望が幾千の数散っていったにゃ?
……にゃあは捨てられた時悔しかったにゃ……だから、奴らに復讐したにゃ。
それはどんなことよりもスッキリしたにゃ。
でも、自分がやらなければ意味がないにゃ。
だからこそ、おにゃあらには戦って欲しいにゃ!
自由な未来のために、子や喜びを奪われた日々を断ち切るために戦うにゃ!!
今がその時にゃ! 共に戦い、腐った人間に正義の鉄槌を! これ以上の犠牲を出さないためにアベンジするにゃ!!」
アルの心からの言葉にみんなが掻き立てられ、目に希望を宿して行った。
だが、出ようとはしなかった。
アルは何も言えなかった。なぜなら、自分も同じだからだった。
***
(にゃあは捨てられて、すぐに復讐できたにゃ。
でもできなかった……そんなことしても戻らないからにゃ。帰る家、安心できる時間はもうないにゃ。
そんな中で、ひかりに会って、梓に会って、直人に飼われて、ようやく踏み出せたにゃ。
こんな状況にならないとにゃあは無理だった……それを家もない猫と犬達に何ができるにゃ?)
アルは過去の自分と照らし合わせて、無理だと悟った。
***
「にゃあだけでも行くにゃ……」
アルは諦めて寂しそうな背中を向けて、立ち去ろうとした。
その瞬間、ここにいる全員がある感情を思い出した。
それは——“愛情”だった。
みんなはアルの姿を我が子に重ね合わせて、1人寂しく行こうとする我が子を放ってはおけず、一斉に檻から飛び出した。
「“待って”」
みんなが一斉にアルの側に近寄って来た。
「ありがとう!」「ごめんなさい」「一緒に行こう」
みんな口々に言って、団結していった。
「おにゃあら、やるのかにゃ?」
「もちろん!」
アルの問いかけにみんなが答え、アルは満面の笑みを浮かべた。
「それじゃあ、おにゃあらついて来るにゃ!!
奴らに憎しみを味わわせるにゃ!!」
「おう!」
アルを先頭にみんながついて行き、2人のいる玄関に走り出した。
アルは2人を目にすると、高揚感が高まった。
「楽しいパーティの始まりにゃ!!!!」
アルは2人に跳びついて、顔をスパッと引っ掻いた。
「いてぇ!!」
2人が痛がっていると、次々と2人に犬と猫が跳びついて、体当たりした。
「アタシの子を返して!!」
憎しみたっぷりの怒声を言いながら、白猫は猫パンチを延々と繰り出していた。
「いいにゃ! おにゃあのパンチに鬼神が宿ってるにゃ!!」
「俺は地面を駆けたかったのに……!!」
悔しがる言葉と共に、2人の上を行ったり来たりする黒犬。
「やってやれにゃ! おにゃあの脚は大木にゃ!!」
そして極めつけが、
「おらの苦しみを味わえ!」
その猫はブリーダーの顔面に脱糞をした。
「はははは、最高にゃ! おにゃあのケツにちっちゃいダンプカー乗ってんのかいにゃ!!」
その猫を皮切りにみんな2人の上で排泄し始めた。
「はははははははは!!!! これが生きる喜びにゃ!!!!」
アルは笑い転げて、死ぬほど笑った。
***
“ウーウーウーウー”とパトカーのサイレンが聞こえて、ひかりは笑い転げているアルを抱えて、窓から出て梓の隣に行った。
警察官はひかり達から話を聞き、突入しようと玄関に行くと、汚臭が漂い、異常なことに気づいた。
ひかり達は苦笑いして、申し訳なさそうな表情を浮かべた。
その後は大掛かりな連行となった。
まずは開かないドアをこじ開け、犬と猫の糞まみれで気絶している2人を運び出して、着替えさせて、臭いを消してからパトカーに乗せた。
そして後日、噂を聞きつけた動物愛護団体がブリーダーに飼育されていた犬と猫を引き取っていった。
さらに、ペットショップから逃げ出した子犬と子猫もある程度は保護され、残った子達は野良として生きる選択を迫られた。
***
「……ってことがあったんだよ」
2日後の放課後——。
ひかりと梓はOSBの部室で元輝に話せる内容だけを話した。
「マジっすか!? 大変だったっすね!」
元輝は思いの外反応よく驚いた。
「まあ、だから野良とかは減っていくとは思うよ!」
「マジ感謝っす! まさか、原因解明から解決までするとか……本当にありがとうございます!」
元輝は頭を机につけて、感謝を示した。
「そういうのいいから」
「顔あげてください」
2人はやや慌てて、顔を上げさせた。
「これで母ちゃんに良い報告ができるっす——ありがとうございました!」
元輝はもう一度感謝を伝えて、部室を出た。
「一件落着だね!」
「良かった!」
「そうだ、こういう時は乾杯だね、ポッチーで!」
「うん」
ひかりは梓の態度に目を丸くした。
「え、いつもなら突っ込むはずなのに!?」
その言葉に梓は照れ笑いをして、
「ひかりのポッチー愛に助けられたからさ……!」
「そっか! なら、はい」
ひかりは梓に一本ポッチーを渡して、自分も一本持った。
そして、
「乾杯!」「乾杯」
2人は自分のポッチーをお互いのポッチーにつけた。
“ポキッ”
梓が持っていたポッチーが折れた。
梓は「あっ」と自然と口に出した。
「あーーーー!!」
ひかりは大きく口を開けて叫んだ。
「ポッチーが……! いけないんだ!! ポッチーの神様が天罰下すよ!!」
「どんな神様なの? それに私は悪くない!
ひかりが強く押したからだよ!」
「違うもん、梓が強く持ってたから折れたんだよ!」
「ひかりだよ!」
「梓だよ!」
2人はしょうもないことで言い合いに発展した。
明日の投稿は誠に勝手ながら休ませていただきます。
ここまで読んで頂きありがとうございます!!!!
アルの長い復讐編はいかがでしたでしょうか……感想なんか貰えると嬉しいです!!




