第47話 話猫物語〜Avenge〜中編
10分後——。
「よし、行こう!」
ひかりはスマホで時間を確認して、アルに小声で指示した。
「やるにゃ!」
アルは厳しい目つきになり頷いた。
アルは廊下を伝って飼育部屋へと向かって行き、ひかりは2人のいるリビングへと向かった。
ひかりは力を制御するためにも、一呼吸して気持ちを整えて、
「『幻想』2人に猫の悪魔を見せて!!」
と静かな怒りの口調で魔法を使った。
「あん?」「なんだ?」
2人はひかりの声に気づいて、ひかりの方を見た。
2人は立ち上がり警戒してジリジリとひかりの方へ進んで行ったがすぐに足を止めた。
なぜなら——後ろで不気味な気配がしたからだ。
とてつもなく大きい気配に2人は畏怖の念を感じて息を呑むことすらできなかった。
“ハアーー”——何かの息遣いが2人の背筋を凍らせた。
「振り向け」
何かが恐ろしいほどの重厚な響きの声で2人に指図した。
2人は心臓が高鳴っているのを感じながらも恐る恐る振り向き、視線を上にやった。
2人は悍ましいものを見た様子だった。
体は巨大で天井を突き破る程であり、黒雲が凝縮して集まって形を作っていた。
そして、目の所には眼球はなく内側から淡い青色の光が出ており、不気味な黒猫の姿だった。
そんな黒猫が自分達を見下しているのが分かった。
「ハァ、ハァ、ハァ……化け物だ……!」
店主は息が荒くなりながらも、なんとか口に出した。
「化け物? それはあなた達でしょ!」
ひかりは怒りで声を荒げた。
2人には黒猫が喋っているように、重厚な響きで聞こえていた。
「犬と猫の命を金儲けのために弄んで……そんなことが許されると思ってるの!!」
ひかりはさらに力強い想いで言った。
「別に、いいだろ……! 所詮は金と糞しか生まないゴミなんだから……!」
店主はバカにした物言いで口答えした。
「ははは、ほんとそうさ、あいつら俺達のために働けばいいんだよ」
ブリーダーは嘲笑ってバカにした。
「“ふざけるなーー”!!」
ひかりは本気で怒り、理性を保つのがギリギリなほどだった。
幻想の黒猫は2人の目の前で圧巻の威嚇をして、2人の全身を震え上がらせた。
「そんなことのために産まれたんじゃない!!
みんな自分の幸せのために産まれて来たのに、それを奪っていい理由なんてどこにもない!!」
「そ、それ、なら、他のペットショップはどうなんだよ……! 俺達みたいに命で金儲けしてるじゃねぇか」
店主は震えた声で言い訳をした。
ひかりは迷わずに鋭い目つきのまま、
「こんなひどい所で飼育して、売れなかったら殺すあなた達とは絶対に違う!! ちゃんと命を平等に扱ってるよ!!」
と熱く語った。
「俺達は生きるためにやってるんだよ!
命が平等なんか綺麗事に過ぎない!」
ブリーダーは悪びれることなく、逆上した。
「なら普通にちゃんとしたペットショップをやれば良かったんだよ!
あなた達は生きる以上のお金を欲したから、こんなひどいことをしたんだよ!!」
ひかりは怒り混じりの説教のように言った。
「それに、綺麗事なんかじゃない! 猫達も人間のように絆を作り、喧嘩をして、仲間を作り、社会を作ってる!! 当たり前なんだよ、命が平等なのは!! 同じ星で産まれたんだから!!」
ひかりは今まで見てきた猫達を思い出して、それを言葉にして熱量を持って伝えた。
「なら、虫はどうなんだよ! 人間はすぐに叩いて潰すだろ」
「そうだよ、それに、牛や豚だって食ってるじゃねぇか!」
2人してひかりに反例を出した。
「だから『いただきます』って感謝の言葉があるんだよ!! それに虫なんかは害があったり危険なことがあるから『ごめんなさい』って謝れば良いんだよ!! それが命を奪った者のやるべきことなんだよ……」
ひかりは口をつぐみ、拳をギュッと握り締めた。
「なら俺達は謝っていたよな」
ブリーダーは店主に同意を求めた。
「ああ、そうだよ」
店主はウンウンと頷いた。
「……別に殺さなくても良いのに殺して、警察に捕まらずに、ここに逃げてる人が……」
ひかりは全身に虫酸が走り、理性を抑えるのが限界だった。
黒猫は形が崩れていき、全身だったのが顔だけになった。
黒雲がさらにさらに集まっていき、部屋を埋め尽くす程大きな顔になり、より威圧感を放っており、黒猫なんかではなく黒豹のような顔だった。
「命に感謝してるとは思えない!!!! 教えてあげる、生きることのありがたさを!!」
ひかりは憤怒して怒声を浴びせた。
顔だけの黒豹は口を開いたまま2人に迫って行った。
2人は死を意識してか動かなかった足を必死に動かして玄関に向かって行った。
2人は後ろを確認すると黒豹がサイズを変えて追ってきた。
玄関に着くとブリーダーがドアノブを捻って、開けようとするが開かなかった。
「何やってんだよ」
「開かないんだよ」
2人がかりで押すと多少開くが外側から押されて開かなかった。
「ふざけるな」
「やばい来た」
黒豹は牙を剥き出して、“ガッ”と威嚇して、2人の周りを黒雲が立ち上っていった。
段々と周りが見えなくなる恐怖と不気味で圧巻の覇気を感じたことで2人は怖気付き、その場に座り込んだ。
黒豹は2人に鋭い牙で噛みついた。
2人は死を覚悟して目を瞑った。
しかし、時間が経てども何も起きないので2人は目を開けると——さっきまでが嘘かのように黒豹がおらず、気持ち悪い静寂があった。
2人は安堵の脱力感から“ジョワ〜"と何かが漏れた。
2人に休む暇は無かった——無数の足音がこちらに来ていた。
TO BE CONTINUED




