第46話 話猫物語〜Avenge〜前編
翌日の放課後——。
ひかりと梓はアルのいる直人の部屋へと向かった。
ひかりがインターホンを鳴らすと、アルがドアを開けて出て来た。
アルは鍵をかけながらほざいた。
「遅いにゃ。これだから人間は……」
「別に遅くないよ!」
「主語が大きいよ」
ひかりは悪くないと言い張り、梓は呆れた様子で言った。
「おにゃあら走って来てないだろにゃ?」
「そうだけど?」
「だからにゃ。おにゃあらには危機感がないにゃ! もしこの間に逃げられたらどうするにゃ!」
「確かに……さすがアル! 着いて行きます!」
ひかりはアルの言葉に感心して従い始めた。
「なんでひかりは下についたの」
「なんとなく……!」
「それは今回もにゃあが主役だからにゃ!
なんたってこの話のタイトルが『話猫物語』だからにゃ!」
アルは嬉しそうに語った。
「タイトル? アルは何言ってるの?」
「みんな自分の人生の主役だよ!」
「そういうのはいらないにゃ」
梓は眉をひそめて、ひかりは健気に説いて、アルは2人をあしらった。
ひかり達はマンションを後にして、歩きながら話していた。
「それで、捕まえるって言ってもどこにいるの?」
梓はアルが迷わず向かっていることに違和感を覚えて聞いてみた。
「アタシが『サーチ』使ってあげようか?」
ひかりはアルの顔を覗き込み聞いた。
「いらないにゃ。場所は分かってるからにゃ……あと近づくなにゃ」
アルは当たり強く返答した。
ひかりはムスッと唇を尖らせた。
「なんで分かってるの?」
「そうだよ! アルは魔法使えないのに!」
アルは呆れ果てた。
「そんなの簡単にゃ……プロファイリングにゃ」
「プロハイリング……?」
ひかりはその言葉を聞いて、どんなのか頭に思い浮かべていった。
(プロハイリング……プロ、ハイ、リング……pro,high,ring? プロが作った高級な指輪ってことか!)
「そういうことね! 高級な指輪で店主を釣るってことね!」
「はあ? 何言ってるにゃ……バカにゃ、アホにゃ」
アルは冷酷に罵声を浴びせた。
「さすがに言い過ぎだよ! バカくらいにしとかないと……」
梓はすかさずフォローを入れた。
「梓までひどい!! ならなんなの!! そのプロハイリングって!!」
ひかりは反感を抱き怒った。
「プロファイリングね」
「プロファイリングは簡単に言えば、犯人の断片的な情報を頼りに行動なんかを予測するにゃ……分かったでちゅかにゃ?」
アルはひかりを煽るような態度で教えた。
「なるほどね、それじゃあどこにいるの?」
ひかりはアルの煽りを無視して聞いた。
「あいつは自分では何もできないにゃ。だから、誰かを頼るにゃ。
それは友達だろうけど、自分の店の醜態が晒されたことで、いなくなるにゃ。
そうすると、頼る人物は1人しかいなくなるにゃ」
アルは自分の筋書きを淡々と説明していった。
「それは誰なの?」
「とどのつまり?」
「それは——ブリーダーにゃ。
そいつと協力して稼いでいるから、口封じのためにも、そいつの家にいるにゃ、きっと」
アルの目には確かな確信があった。
それと燃えるような想いも目に宿っていた。
「その家は知ってるの?」
「当たり前にゃ!」
「それじゃあ、悪者退治にレッツゴー!」
「おう!」
「そんな軽く言うものじゃないよ」
こうしてひかり達はアルに先導されて、店主がいると思われるブリーダーの家へと向かった。
***
「ここにゃ」
アルは鋭い視線を目の前の建物に向けた。
ひかり達が1時間弱かけて歩いて着いた場所、それは舗装された道はなく、草木が生い茂る所にポツンとあるボロい一階建ての一軒家だった。
異様な雰囲気が漂っていた。
おぞましい気配で、これは悪の巣窟のような感じだった
「本当にここなの?」
ひかりは信じられなかった。こんな辺境な所にいることが。
「絶対いるにゃ!」
アルは肉球を握りしめて力強く言った。
「そっか、ならアタシも気合いを入れないと!」
ひかりは呼吸を整えて、目つきをキリッとさせて険しい表情になった。
「やるにゃ!」
アルが建物に向かおうとした時、梓は口を開いた。
「ちょっと待って、これだけは言わせて……遠いよ!! なんでこんな1時間かけて歩かないといけなかったの?」
と梓は愚痴を叫ぶように言った。
「もう梓、これから本番って時に何言い出すの!! 空気読んでよ!!」
ひかりは拍子抜けをして、梓を優しく怒った。
「そうにゃ! ひかりじゃないんだから、空気読むにゃ! それににゃあはタクシーなんか乗れないにゃ!」
アルはナイフのように鋭く言い放った。
「いや……ごめん、空気読むべきだった」
梓は反省して、気合いを入れた。
「そうするにゃ。それにちょっと歩いただけなのに愚痴るなんて、これだから人間は!」
「だから主語が大きいよ」
「2人ともいいから気合入れて行くよ!」
ひかりはアルと梓を遮り、仕切った。
ひかり達はキリッときつめの顔で建物の敷地へと一歩踏み入れた。
「ちょっと待つにゃ」
アルは2人を呼び止めた。
「今度は何?」
ひかりは立ち止まって、うんざりしたように聞いた。
「正面衝突せずに、おにゃあの魔法使えば良くないにゃ?」
「確かに」
「それに、まだここにいると決まったわけじゃないし、その方が良いよ」
「なるほどね! じゃあ、何すれば良いの?」
ひかりは他力本願な様子で聞いた。
「透視とかできないにゃ? それなら確認できるにゃ」
「さすがに……」
「できるよ!」
「できるんだ!?」
梓は目を丸くして驚いた。
「じゃあやるにゃ」
「OK! 『透視』プラス『共有』」
ひかりはそう言って魔法を使った。
ひかりの目にはさっきまであった壁が見えなくなり、部屋全体が見通せるようになった。
ひかりが見た光景は、アルと梓にも共有されていた。
家の中は犬と猫にとって最悪の環境だった。
居住空間と飼育空間は壁で隔てており、リビングでは2人の男が談笑していた。
アルは1人の男を見て、
「店主にゃ。やっぱり合ってたにゃ!」
と少し嬉しくなったが、すぐに苦虫を噛み潰したような顔になった。
飼育空間では、犬と猫が狭い狭い檻に入れられており、全くと言って良いほど生気がなかった。ただ死ぬのを待つかのように、生きる喜びを失っていた。
「何これ……?! 酷すぎるよ……!!」
ひかりはあまりの残虐さに怒りで体の震えが止まらなかった。
「絶対悪……こんなこと許されない!」
梓は自分の過去を思い出して、今度は自分が助ける番だと覚悟を決めた。
「これだから、悪人は大嫌いにゃ!! 絶対償わせるにゃ!!」
アルは狂気の怒りで満ち満ちていた。
ひかり達はそれぞれの気持ちが一つにまとまった。
そして、アルは2人に指示をした。
「ひかりは魔法であいつらを懲らしめてにゃ。
梓は警察に連絡と家から出させないようにしてにゃ」
「分かった」
「分かったよ! アルはどうするの?」
「にゃあは猫と犬を救うにゃ!」
2人は険しい表情で頷き、それぞれ行動を開始した。
梓は警察に電話をかけてコール音がなっている間に、ドアを開けさせない方法を目を瞑り考え始めた。
(ドアを開けさせないためには……ドアノブか鍵穴に細工する? いや、そんなの手ぶらじゃできない。
それなら、蝶番は? 蝶番なら隙間を埋めるだけで簡単だ……何で埋める……接着剤がないなら代用は……ある!)
「待ってひかり!」
「事件ですか? 事故ですか?」
梓は助けたい想いが強く、頭の回転が速くなり、警察が応答するまでのわずか数秒で答えを出して、ひかりを呼び止めた。
「あっ、すみません、ちょっとだけ待っててください」
梓は警察にそう言って、ひかりをこっちに来てと手招きした。
「どうしたの?」
「ポッチーちょうだい! あとアルにも伝えて欲しいんだけど、家に入ったら10分だけ待って!」
「分かったよ!」
ひかりは梓にポケットに入ってたポッチーを渡して、アルと一緒に家の中に入って行った。
梓は警察に状況を説明して、来てもらうことになった。
その後、貰ったポッチーのチョコ部分だけを爪で取っていき、それをポッチーの袋に入れた。
全部取ると、チョコを入れた袋をハンカチで包みポケットに入れた。
ハンカチに包まれたチョコはポケットの中で溶けていった。
それを梓は蝶番に流し込んでいった。
梓は蝶番に接着剤をつけると開かないことを知っており、接着剤の代わりにチョコを使って、強度はないが効果があると踏んで閉じ込める作戦を実行した。
「あとは2人に任せたよ!」
梓は自分が出来ることを終えて、ひかりとアルに全てを託した。
アルが慎重に鍵を開けて、ひかりが『透明』を使い侵入して、梓の言いつけ通りひかりとアルは玄関で待っていた。
TO BE CONTINUED




