第40話 集会場で何奴……!?
アルの協力を得られなかった2人は野良が多そうと踏んで河川敷へと向かった。
河川敷に着き橋の下を覗くと、10何匹かの猫が集まって、井戸端会議をしているようだった。
「猫がたくさん!?」
ひかりは目を輝かせ、驚いた様子で梓に言った。
「ほんとだ」
「何してるのかな?!」
「確か……猫の集会って言って、野良猫達が縄張りとか情報とかを共有しているらしいよ」
梓は片耳に手をかけながら言った。
「マジで?! なら、増えた原因話してるかも!」
ひかりは糸口が見つかって喜んだ。
「そうだね」
「気づかれないように行こう!
『透明』プラス『翻訳』プラス『共有』!!」
ひかりは猫に気づかれそうなくらいの大きめの声で魔法を使った。
「バレるよ……!」
そんなことを言ってると、ひかりと梓の体が透けていったが、お互いは認識できた。
「これ本当に透明になってるの?」
梓は自分の体とひかりを疑いの目で見た。
「なってるよ! だって、体薄いじゃん! 周りからは完全に透明だから!」
ひかりは少し強い調子で言った。
「それならいいけど……」
2人は息を殺して、猫達に近づく。
一歩また一歩と慎重に前に出す。
ある程度近づくと猫達の会話が鮮明に聞こえる。
「おそらく人間が原因だと思われます。縄張りを無視する行動から人間に育てられ捨てられたかと」
重みのある声で言った。
2人は話の内容から、欲しい情報だと分かった。
「おう、そうか。だが、こんな数の猫を育てているなんて、人間は何が目的なんだ?」
威圧感がある低音の声で聞いた。
「お金だと思われます。猫は売れますから特に子猫は」
軽い感じだが慕っているかのような声だった。
「金か、人間は醜いな。金のためなら命すら軽くあしらうなど、ゴミの塊だ。
人間の方が野良の俺達より野蛮ではないか。粛清されるべきなのは人間だな」
さっきの声だが、より一層威圧感が増した。
「俺知ってます。人間界にはペットショップなるものがあるらしいです」
それを聞いたひかりは透明なのを忘れて梓に話しかけた。
「てことは、ペットショップから逃げ出したか、逃したってことだね!」
梓は「はあ?」っと言いたげな顔でひかりを見た。
「何奴!? そこにいるのは何もんだ?」
猫達は一斉に2人の方を向いて、尻尾と耳を立てて「“シャーー”」と威嚇した。
「早く姿を見せぇ。そこにいるのは分かっておるぞ」
変な抑揚で目元に傷がついた黒猫の隣の猫が言った。
ひかりは仕方なく「透明解除」と言って、姿を見せることにした。
すると、ひかりは少しドスの効いた声で名乗りを始めた。
「春は、あけぼの。ようようしろくなりゆく山ぎは、少し明かりて、ポッチー食べたい欲の、強いひかりきたる!!」
と枕草子をなぞらえて、カッコつけた。
いきなり目の前に現れた2人を見て、梓と猫達は黒目をまん丸にして驚いていた。黒猫以外は。
「なにやってるの? なんで『枕草子』?」
「ほら、あるでしょ? こんな風に見つかった忍者がカッコ良く名乗るシーンが」
「私達は忍者側なんだ……あと、枕草子じゃないと思う」
「じゃあなに?」
「『平家物語 祇園精舎』とか?」
「何それ? とにかく梓も名乗ってよ!」
ひかりはピンと来てなかった。
「有名でしょ。やらないとダメ?」
「いいから、早く!」
梓は嫌そうな顔を浮かべたが、ひかりは強く催促した。
「え〜、うーん、うっうん、えっと……
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もついにはほろびぬ、ひとへに風の前の塵と同じ……梓! でいい?」
「長いよ!!」
梓は嫌々やり始めたが、徐々に楽しくなった様子で名乗った。
ひかりはずっと言いたかったのか、うずうずしながら待って、勢いよく言った。
「てめぇら、何しに来た?」
空気を一瞬で変えるほど冷たく、威圧的に黒猫が言った。
「アタシ達は野良が多くなった原因を突き止めようとしてるの!」
「それで?」
「何か知ってるかと思って、盗み聞きしてた」
「俺達が知ってるのはこれくらいだ」
冷酷——その言葉が似合うほど恐ろしい声だった。
「そっか、情報をくれてありがとう!」
「お前、俺達に軽口を叩くな!!」
ひかりがお礼を言うと、端っこにいた薄汚れた白猫が襲いかかって来た。
「“やめておけぇ”!!!!」
黒猫は凄まじい迫力で呼び止めた。
白猫は理屈よりも先に本能で理解した——行ったら、殺されると。
「すいやせん」
と言って戻って行った。
「あいつは毒を持っている! それに、あいつの匂いは甘ったるくて、近づいたら鼻がもげるぞ!」
黒猫はひかりに向かって言った。
ひかりは自分の二の腕を近づけて匂って、
「アタシ、そんなに甘いの?」
と顔をしかめて言った。
「猫にはそうなんじゃない?」
「あと、アタシ毒なんか持ってないよ!」
「猫にとってチョコは毒だから」
梓はひかりに淡々と言って、ひかりはその言葉を聞いて目を丸くして驚愕した。
「えー!! 猫はポッチー食べれないの!?
ポッチー食べれないなんて可哀想に……」
ひかりは猫達に悲しげな目を向けた。
「何言ってるあいつらは? とにかく、今日は解散だ」
黒猫は困惑しながらも、皆に指示した。
「増えた野良はどうするんですか?」
「そんなもん、人間がやったんだから人間が解決したら良い。俺達は捕まらないようにすれば良いだけだ」
「流石はお代官様、仰る言葉が的確です」
そう言って、猫達は去って行った。
「あっちがお代官側なんだ。時代劇かな?」
TO BE CONTINUED




