第39話 野生動物の異常発生
放課後——。
ひかりと梓は部室でいつものように横並びで座っていた。
ひかりはスマホをいじって、ロバートロバの動画を見ており、快楽を得ていた。
梓は気にせず真面目に勉強をしていた。
そんな時だ——部室のドアが開いて、制服のボタンを外して着崩した元気ある男子が入って来た。
「相談に来たっす」
梓は勉強道具一式をカバンに収めて、その間にひかりがスマホを置いて、男子を椅子に座るよう「どうぞ! 座ってください!」と促した。
男子は言われた通り座った。
「アタシは天魔野ひかりで、」
「私は鈴木梓です」
「俺は川野元輝っす」
3人は淡々と軽い自己紹介をした。
「それで、相談は?」
「2人も感じてると思うっすけど、最近野良猫、野良犬多くないっすか?」
元輝は軽い感じで話した。
「うん、多いね!」
「確かに、今日学校に行く途中、猫何匹も見ましたし」
「後、学校にも侵入してた! ロバとニワトリ」
「違う、そっちじゃない」
ひかりは天真爛漫に答えて、梓は冷静沈着にツッコミを入れた。
「そうっすよね。それで……うちの庭にフンとかされて、母ちゃんが愚痴ってたっす。
体育の授業に来て危なかったり、とにかくやばいっす」
元輝は軽口ではあるが、心の底から思っているように声のトーンが低かった。
「それはそうだね……」
「だから2人には増えた原因を突き止めて欲しいっす。そうすれば、解決方法分かるかもっすから!」
元輝は真剣な眼差しで2人を見た。
「うん、分かった! 突き止めてみせます!」
「やってみます」
ひかりは元輝の真剣さに応えるべく燃えていた。
梓は自分を鼓舞するために言った。
***
2人は早速外に出て、ある場所に向かって歩いていた。
「どこに向かってるの?」
梓は分からずひかりについて行っていた。
「こういう時のスペシャリストに会いに行ってるんだよ!」
ひかりは含みを持たせた言い方で返した。
「誰?」
「ふっふっふ」とひかりは鼻を鳴らして、
「こんな言葉を知らない? 目には歯を、歯には目をって」
「知らない」
「え、知らないの?! あの頭良い梓が?!
もしかして本当はおバカさん?」
ひかりは梓をバカにしたような口ぶりで言った。
梓はピキッと顔をしかめて、
「目には目を、歯には歯をなら知ってるよ!
それは知らないかな、どういう意味?」
と苛立ちが滲み出たように言った。
「あっ!?」
ひかりは自分の失態に気づき声が出た。
そして、梓からひしひしと圧が来て、ひかりは梓の顔を見ると、一瞬で青ざめた。
梓は眉間に深い皺を寄せて、ゴウゴウと燃えた目で睨んでいた。
「ご、ごめんなさい……アタシがおバカさんです……どうか、お許しを……」
ひかりは怯えて、震えた声で慈悲を乞うた。
「ひかりはバカなんかじゃないよ!」
梓は鎮火した様子で優しく言った。
「梓!!」
ひかりは開花したように笑顔を見せた。
梓も目は笑っていないが笑顔を返した。
「ひかりは“大バカさん”だよ!」
「……梓ーー!!!!」
ひかりは怒りをあらわにして、怒声で名を叫んだ。
「ごめん、言い過ぎた。冗談だよ。ひかりはバカなんかじゃない天才だよ!」
梓は心の底から謝った後、ふふと照れくさそうに笑った。
「それならいいけど! じゃあ、行こう!」
ひかりはコロっと態度を変えて、照れながら言った。
「それで、結局どこに行くの?」
「えっと……目には目を、歯には歯を、野良猫には野良猫をだよ!」
「なるほどね、ひかりは天才だね! アルに協力してもらうのか」
「そういうこと!」
ひかりと梓は楽しい雰囲気でアルの元へ向かった。
***
2人は前に直人から貰ったメモをもとに、その住所へと来た。
6階建てのマンションで古そうではあるがそれなりには綺麗だった。
入るとオートロックがなかった。
2人はエレベーターで6階に上がり、直人の部屋のインターホンを押した。
すると、「はい?」とインターホン越しで聞いた。
「ひかりと梓です! アルに会いに来ました!」
とひかりが元気良く対応した。
しばらくして、ガチャッと音がしてドアが開いた。
「あ、どうぞ……」
直人は気まずそうにしていた。
「お邪魔します!」
「お邪魔します」
2人はズカズカと入って行った。
「アル、元気?」
ひかりはそう言いながら、リビングに行くと——アルの体中に包帯が巻かれていた。
「どうしたの?!」
ひかりは目を丸くして、側に駆け寄った。
「近寄るなにゃ……匂いが甘ったるいにゃ!」
アルは顔をしかめて鼻を曲げた。
「大丈夫なの?」
梓は心配そうに聞いた。
「医者によると野良猫と喧嘩になって、やられたらしいです……一応、安静にしてたら治る……そうです」
悲しげな声で直人が答えた。
「アル、いたいのいたいの飛んでけ、してあげようか?」
「いらないにゃ!! おにゃあにされたら、傷に塩にゃ!!」
「ひかりの場合は傷に砂糖だと思うよ」
ひかりは戯けて言って、アルは全力拒否して、梓は別角度で突っ込んだ。
「それで、何しに来たにゃ? 用がないならさっさと帰れにゃ!」
アルはあしらうように口にした。
「最近野良が増えたから、その原因探しをアルに手伝ってもらおうかと思ったんだけど……来れる?」
「無理に決まってるにゃ! さっさと帰れにゃ!」
アルは不機嫌で怒った声で言った。
「でも、元気そうじゃん! 来てよ!」
「無理って言ってるにゃ!」
「え? Ouiって言ってる……てことは来てくれるんだね!」
「どんな耳してるにゃ!!」
アルの怒りが爆発した。
凄まじい勢いで突っ込んだ。
「いきなり、フランス語が出てくるわけないじゃん。あと、Ouiの意味は分かるんだ……!?」
「アルも梓もうるさい!! Ouiくらいは分かるよ! それにアタシの耳はこんなだよ!」
ひかりはムッとして梓に言った後、アルに自分の耳を見せつけた。
「そういうことじゃないにゃ……とにかく、行けないにゃ」
アルは疲れたのか、さっきの勢いがどこかへ消えて、呆れたように言った。
「分かったよ。2人で探すよ……じゃあ、行こう梓」
「うん……」
ひかりは観念して、この場を後にしようとした。
梓は後ろをついて行った。
ひかりはリビングを出る際、
「アル、早く『治る』といいね!」
とこっそり魔法を使った。
「アルって言うな!! アルベルトって言えにゃ!!」
アルは思い出したかのように、急に大声を出した。
「遅っ!」
梓はそう呟いて、この場を後にした。




