第36話 捜索!発見!後編!
「つ、ツチノコーー!!!!」
ひかりはハッとした顔になり仰天した。
素早いステップで後ろに下がり、梓の横に行った。
すると、ツチノコは振り返って2人の前に出てきた。
2人は動けず、足が石のように固まったみたいだ。
「梓、ここからどうする?」
「ひかりが捕まえたらいいよ」
2人はツチノコから目を離さずに会話した。
「なんで、アタシなの?」
「虫取り網持ってるからだよ。逃げられる前に早く!」
「えー、怖いよ。今は威嚇してるの?……大丈夫なの?」
ひかりは不安がった。なぜなら、ツチノコの生態を全く知らないからだ。
「大丈夫だと思う。ひかりならできる!——だって、うすのろじゃないんだから」
梓はここぞとばかりに主張した。
「えー……」ひかりは眉を下げて、不安な目でツチノコを見つめた。
「動いたら襲って来る?」
「素早く捕まえたら、襲われないと思う」
「でも、ツチノコがチーターよりも速かったら? アタシでも無理だよ」
「それはないと思う……ツチノコの速さなんか知らないよ」
梓はぶっきらぼうに言った。
「毒はある?」
「分からない」
「目から噴射しない?」
「分からないよ! 私に聞かないで! ツチノコのことなんか何も知らないからさ!」
梓はひかりからの終わらない質問責めと緊迫した状態で、感情が爆発した。
ひかりは眉を上げて驚き、
「ご、ごめん……」
と謝った。
ツチノコは梓の方に体を向けて、少し進んで止まった。
「来る、ひかり助けてよ……」
梓の危機にひかりは頭をフル回転させて、あることを思いついた。
「死んだフリだよ! 立ったまま死んだふりして動かなかったら、そのうちどこかへ行く——その時に、アタシが捕まえる! どう?」
「分かんないけど、やってみよう」
ひかりと梓は喋ることさえやめて、動かない。
ただ自分は木のように、立ったまま力尽きたように、自己暗示をかけた。
ツチノコはそれでも、警戒しているのか睨んでおり、隙なんか見せない。
一分一秒が刻々と過ぎていくが変化がない。
まだか、まだなのかという思いだけが募っていく。
梓は限界に達して、口を開いた。
「これ本当に意味あるの?」
その瞬間を待ってましたと言わんばかりに、ツチノコは梓を目掛けてきた。
スッ——カンッ
空を切る音がした後、プラスチックと道路が当たる音が響いた。
ひかりはまさに光の如く速いスピードで虫取り網をツチノコ目掛けて下ろした。
ツチノコは捕まった。
「それが出来るなら、さっきの時間いらなかったじゃん」
梓は後悔した様子で嘆いた。
そんな梓のことなどお構いなく、ひかりはツチノコを捕まえたことに飛び跳ねて喜んでいた。
「やったー! これで一躍有名人だ!」
梓は細心の注意を払いながら、網に捉えられたツチノコを観察していた。
ツチノコは全く動かない——抵抗すらしていない。
まるで生きていない、そんなことが頭をよぎる。
梓はツチノコの様子を振り返り、
(生物なら抵抗するはずなのにしない。
——動きが単調だった。
——……確か尻尾は動いてなかった気がする
——体勢はずっと同じだったし……つまり……)
梓は一つの結論に辿り着いた。
梓は網越しでツチノコを鷲掴みして、お腹側を見た。
そこには、車輪が付いていた。
「やっぱり。だとすると、私達の声を聞いていたことになる。つまり、この近くで見ている!」
梓は辺りをくまなく見渡して、物陰で黒い車が停車していることに気づいた。
その車を梓が見ていると、車から女性が降りてきて、そのまま発進していった。
女性は背を向けており、背丈は同じくらいの高校生くらいで、しっかりとした生地に身を包んで、別格のオーラを放っていた。
「ひかり、あれが犯人だよ」
「犯人、なんの?」
「ツチノコを操作してた犯人」
「操作?……ってことは偽物なの!?」
ひかりは有名人になる夢が一瞬で消え去り、肩を落として落胆した。
梓は息を呑み、何をしてくるか警戒していた。
その女性は振り返りながら、
「面白かったわ!」
と楽しげに言った。
その顔は——姫乃だった。
「あ?」2人は開いた口が塞がらなかった。
「実に滑稽なこと! まるで鯛やヒラメの舞い踊りを見ている気分だったわ!」
姫乃は戯けたように言った。
「竜宮城で育ったの?」
梓はツッコミで平常心に戻れた。
「なんで、姫乃ちゃんが?」
ひかりは見当がついていない様子だった。
姫乃は眉間に皺を寄せて、目の色を変えた。
姫乃はひかりに詰め寄って来る。
「なんで?、じゃないわよ!
あたしの連絡を未読無視して、なにこんなバカなことしてるのよ!!」
ひかりは目を逸らして、脱力気味に言った。
「いや、だって……姫乃ちゃん、めっちゃメッセージ送ってくるんだもん」
「何がダメなのよ!!!!」
姫乃はひかりの肩を持って揺らしながら、絶叫した。
「具体的にどれくらい来るの?」
梓だけ状況を把握できていなかったので、口を挟んだ。
「1時間に10件。しかも、長文で5時間続いた……」
「あっ、なるほどね……」
梓はその情報だけで容易に想像がついて、哀れみの目をひかりに向けた。
「何がいけないのよ! あたしは話しかけてあげてるのに!」
「多いよ。普通1〜2件だから」
ひかりの代わりに梓が代弁した。
「頭がぐわんぐわんしてきた……」
ひかりは目が回っていたが、姫乃はやめない。
「ひかりが読むまで、絶対にやめないんだから!!」
姫乃はもっと激しく揺らした。
「分かった、読むよ読むから! でも、頻度は控えてよーー!!お願いだから!!」
「なら、いいわ! 早く読みなさい」
姫乃はやめるが、がっちりと肩を持って逃げないようにした。
ひかりは読もうとした時、ふと気になることができて、眉をひそめた。
そして、ひかりは姫乃の手を退けて、
「待ってよ……これは姫乃ちゃんの仕業?」
と質問した。
「ええ、そうよ! ひかりの話を聞いて、作ってもらったわ!」
「……ってことは、アタシが見たのは……?」
3人の空気が異質な寒気に包まれた。
THE END




