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魔魅相談!〜魔法JKひかりがお悩み相談部と共に魑魅魍魎なキャラ達を巻き込む〜ドタバタ学園生活!  作者: 風みやび
1年の4月

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30/51

第30話 トイレ戦完結

※この学校のトイレの個室は人がいなくても閉まっております。物語の都合上。


 姫乃は怒りをバネに梓に勝つ方法を考え始めた。

(梓の考えは単純だから読めるわ! 梓は結局あたしの言った通り、右と言って左に入った——!


 落ち着きなさいあたし——出し抜かれたのはまぐれよ、梓になんかに負けるはずないわ。

 落ち着いて考えなさい——)


 姫乃は考えている間中一切瞬きせず、梓を睨んでいた。


 梓は狂気的な姫乃の視線に耐えきれず顔を背けた。

 たまにチラチラと見て、まだ睨んでいるのかを確認した。


(怖いんだけど……姫乃さんには底知れぬ恐ろしさがあって、本当に何考えてるか分からない……でも、必ず勝つ! 何かあるはず姫乃さんの弱点が! 思い出せ思い出せ……)


 梓がこれから考え始める時、姫乃はすでに結論を出していた。

「右に入るわ!」


 挑発に捉えられる、勝ち誇ったような笑みを浮かべながら言った。

 梓は嘘かどうか目線や表情、仕草などで判断する能力を持っておらず、完全に分からなかった。


(早い……負けてから立ち直り、作戦を練るまでわずか2、3分だよ。

 勝てるのかな……早くても、ちゃんと形になってると思うし……)


 梓はさっきまでの威勢はなくなり、あるのは不安と焦りだった。

「右に入るんだね……それで、いいんだ……ね?」


「ええ、問題ないわ!——今の梓の考えを当ててあげましょうか?


——あたしに勝つ方法を何も思いついていない。それなのにあたしが結論を出したことに焦りを感じているわね。


 合ってたかしら? だからって待たないわ!

 さあ、始めましょう! 梓は出て行きなさい」


 姫乃は自分のペースを取り戻して、上から目線で舐めたように梓の考えをまた言い当てた。


 梓の肩がビクッと上がって、瞳孔が開いた。

 姫乃は勝ちを確信した。——梓はすでにあたしの手中にあると


「さあ、早く行きなさい!」

「分かってる……」

 梓は言われた通りトイレから出て行った。


 梓はスマホのタイマーを1分にセットした。

 そして、トイレのドアの前で深呼吸して、目を瞑り、片耳に手をかけた。


(考えを読まれたからって、冷静にならないと——姫乃さんの弱点は……あの2つ以外なさそう……


 違う。今回は当てる側なんだから、行動を振り返らないと。思い出せ……)


 梓は今日の姫乃の行動を覚えている限り、思い出した。

(朝の廊下、更衣室、ドッジボールで私を狙ったのはひかりが関係しているし意味はなさそう。


 意味がありそうなのは……遥花さんとの戦いと今のトイレでの心理戦か……)


 と考えに没頭していると、スマホのアラームが鳴って中断した。


 梓は意を決してトイレのドアを開けた。

“ここで外したら、次は騙せない——終わり”

 崖っぷちに立たされながらも入って行った。


 中に入ると、ザー、と水が流れるような音がトイレに響き渡っていた。

 それは耳障りでうるさい。

 水が流れるにしては機械音が混じり、どこか聞き馴染みがあった。


(音姫だ——でも、なんで? 今は姫乃さんだけなのに……)

 梓は姫乃の意図を考えようにも音姫が邪魔して集中できない。


 梓は両耳を塞いでなんとか考えようとした。

(聞こえた感じ、奥の個室から流れていて、心理戦とは関係がないから止めに行こう)


 梓は音姫を流している個室の前に行きドアに手をかけた時、疑問に思いふと姫乃が言ったルールを思い出した。


“——その間にどちらかの個室に入って、外に出た人がどっちに入っているか予測して、一つだけドアを開ける”


(一つだけドアを開ける……そういうことかも知れない!

 姫乃さんは二つのうちの一つのドアではなく、ここにある個室のドアのうち一つなのかも!


 だから、思考の邪魔をするためでもあるし、止めに行けばドアを開けたとして私のターンが終わる)


 梓は姫乃の意図を完全に理解して、自信がついて明るい表情になったが……開けていたら終わっていたことを思い出して、背筋が凍った。


(恐ろしい……危なかった)

 梓はその個室から離れて、所定の個室へと向かった。


 音に気を取られて気がつかなかったのか、左の個室の前に姫乃がつけていたであろう、ポッチーのヘアピンが落ちていた。


 梓は両耳を塞ぎ、目を瞑って考え始めた。

(どういうこと? 左に入った時に落ちたとか……姫乃さんがそんなミスしない。


——てことは、右に入った……その裏をかいて左……読めない)


 梓は考えればいつかは分かるかもしれない——だが、耳を塞いでも聞こえ続ける音姫、そして、ルールを決めた時点ですでに姫乃の手中にいたことを感じて、戦意を削がれた。


(50:50で当たるそれだけ…………姫乃さんはすごいな。

 遥花さんとの戦いでは、背の高い人の後ろから見ずに当てたし……私の考えも2度当てた、敵わない……)


 梓は負けを悟り、姫乃を褒め出した。

 それは、下僕の自覚が芽生えたのか、単に人として褒めたのか——。


(おそらく、ヘアピンは罠だ)

 一歩また一歩と右のドアに近づいて行った。


     ***


 梓は完全に諦めていた時、一筋の光が入った。

 その光は何十倍、何百倍、何千倍にも爆発的に膨れ上がり、絶望しかけていた梓の心に太陽が現れた。


     ***


 右のドアを開けようとした時、スマホが鳴った。

 梓はどうせ負けると思い、スマホを確認した。


 caco3でひかりからボイスメッセージが送られていた。

 梓は「なんだろ?」と思い聞いてみる。


「姫乃ちゃんのを送ったから、今度は梓への愛のメッセージを送るね!

 梓は頭よくて〜頭がものすごく良くて〜天才!!

 だから、いつも助かってる!


 OSBで唯一誇れるのは梓がいること!——そして、唯一の親友だよ!! 大好き!!」


 と梓への愛が送られた。

 梓は眩しいほどの笑顔になって、止まっていた歯車が動き出し、思考を巡らせる。

 音姫など耳に入らなかった。


(ひかりの期待には応えないと!! 姫乃さんには負けられない!!


 姫乃さんはプライドが高い——だから、ドッジボールの時、見ずにボールを当てたんだ。

 その前に遥花さんが同時に2人を当てたから、負けられないと思ってやったのか。


 それに、最初言わなければ勝てたのに、私の考えを言った。

 次の時は出し抜かれたから、もう一度私の考えを言うことで自分が優位であることを示した。


 繋がった! 全部姫乃さん自身が上に立とうとした証明——なら、きっと……)


 梓はヘアピンが落ちている左の個室のドアを迷わず開けた。


 その中には——姫乃がいた。


 姫乃は「え?」と目を丸くさせて、呂律が回らないのか、唇だけ動かしていた。


 梓は小さくだが胸の前でガッツポーズをした。

 不安も恐怖もなく、純粋に喜んだ。


 しばらくすると、目の前で起きたことが夢なのかと疑うほど、驚きすぎて声に出せなかった姫乃がやっと口を開いた。


「嘘……あたしが負けるなんて。イ、イ、イカサマだわ」

「ズルはしてない! 姫乃さんの考えが奇跡的に分かったから!」


「はぁ……?聞かせてみなさい!」

 姫乃はまだ信じられていない様子で疑問を投げかけた。


 梓はそれに応えた。

「まず、音姫は考えの邪魔をして、消そうとドアを開けたら私が負けてたで合ってる?」

「ええ、そうだわ……バレないと思ったのに……」


「そして、ヘアピンをわざわざ落としたのは、私を右に誘導するため。

 音姫を消しに行かなかった時、何にもなければ負ける可能性もあった。


 だから、ヘアピンを落としておけば、私が裏をかいて右に行くと考えた——実際、右を開けそうになった……」


 梓は自分が探偵のように推理を披露していた。

 姫乃はまだ負けたことを理解していなかった。

(梓の考えを読んで、全て完璧だったのに!!)


「なら、なんで左を選んだのよ?!」

「それは——私に右のドアを開けさせられた。

 だから、今度は右のドアを開けさせて、ヘアピンの先にいることで、

『ヒントをあげてたのに』

 みたいな感じで優位に立てるからかな」


 姫乃は膝から崩れ落ちた。

「全部お見通しってわけね……」

 その声には生気が感じられなかった。


 梓は膝をついて姫乃に目線を合わせて、

「たまたま、いや、ほんと奇跡の勝利だから……落ち込まないで……


 姫乃さんは1人で戦って、実際に私の考えを全部読めてたから、元気出して!


 私が勝てたのはひかりのおかげであって、私1人なら負けてた……

 姫乃さんはすごいよ!……だから、勝ちは譲る! 姫乃の下僕になるよ」


 と優しく褒め称えたと同時に自ら勝ちを譲った。

 梓は下僕になるのにどこか清々しい顔をしていた。


 姫乃はその申し出を聞いて、目の色も顔色も変わり、怒りに満ち満ちた。

「はあー!! ひかりと一緒だからって関係ない!! 負けは負け!!


 梓の言う通り、ひかりにずっとは近づかないから!! ふんっ!!」

 姫乃は立ち上がって、怒鳴るように言って、そっぽを向いた。


「分かった、ありがとう」

 梓は立ち上がって言った。


 姫乃はそっぽを向いたまま梓へと手を出した。

 梓はひかりの時を思い出して、手を握ろうとはしなかった。


 それを見かねた姫乃は更に怒りが増し、

「戦いが終わった後にするのでしょ……」

 となんとか怒りを抑えて、ぎこちなく言った。


「あ!」と梓は理解して、手を握った。

「姫乃さん、強かったよ!」

「……」

 梓は言葉をかけるが、姫乃は無言で握っていた。


「もういいでしょ、離しなさい!!」

 姫乃は振り落とすように梓の手をどけて、トイレから出て行った。


「あはは……はあ〜〜……」

 梓は緊張感から解放されると、一気に疲れを感じた。


 何しにトイレに来たのかを忘れて、自分の教室に戻って行った。

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