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魔魅相談!〜魔法JKひかりがお悩み相談部と共に魑魅魍魎なキャラ達を巻き込む〜ドタバタ学園生活!  作者: 風みやび
1年の4月

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29/51

第29話 トイレ戦

 梓にとって、とてもとても長い1時間目の授業が終わった。

 その後の授業は姫乃がいないので、穏やかに過ごせた。


 4時間目が終わり、昼休憩が始まった。


 梓は朝のことで満身創痍の状態——帰りたい、ベッドで休みたい、と普段思わないことが頭の中を埋め尽くした。


 そんなことを思いながら、手を洗うためにトイレへと向かった。


 トイレのドアを開けると、姫乃が手を洗っていた。

 姫乃は鏡越しで今ドアを開けた人物が梓だと確認した。


 梓はそっとドアを閉めて、回れ右をした。

 姫乃はドアが閉められるや否やドアを開けて、梓の右肩を目一杯の力で掴んだ。

「待ちなさい。話があるわ」


 梓は逃げようと試すが、姫乃の握力が思った以上で逃げ出せない。

 梓は観念して「話って何?」とぶっきらぼうに言った。


「ここじゃああれだから、トイレで話しましょう」

「トイレの方があれでしょ」

 梓はこんな状況でもツッコミを入れた。


「いいから来なさい」

「うん……」

 姫乃に続く形で梓はトイレに入って行った。


 姫乃が梓の方に振り返って話を始めた。

「ここで会ったが百年目、勝負しなさい!」

 梓は嫌な予感が的中した。


(うわ〜帰りたい……なんで、こんなことが続くんだろ……ひかりがいたら起こらなかったのに……ひかり、助けて)

 梓はひかりを恨むと同時に助けを求めた。


 梓が嫌そうな顔をしていると、姫乃は

「いいでしょう? ひかりの隣に立つに相応しい者がどちらか決めましょう!」

 と狂気じみた目で威圧感を放った。


「う、うん……分かった……」

 梓は逃げられないと悟って、引き受けた。


 姫乃は目の色を変えて、

「それじゃあ、始めましょう!」

 嬉しそうに言った。


「勝負は何にするの?」

 梓が質問すると、姫乃はトイレ全体を見渡して、

「心理戦にしましょう」

「ルールは?」

「ルールは——この2つの個室を使うわ」


 姫乃は誰もいない隣り合った個室を指差した。

 梓はまだ分からず、首を傾げていた。


「まずは、片方がどちらに入るか決める。

 もう片方が一旦外に出て1分後に入ってくる。


——その間にどちらかの個室に入って、外に出た人がどっちに入っているか予測して、一つだけドアを開ける。


 開けた方にいれば勝ち、外したら今度は入れ替わってやる。

 これでいいかしら?」


 姫乃はルールを淡々と説明した。


「それだと50:50で当てるゲームじゃない?」

 梓は「心理戦?」と思い質問した。


 ふん、姫乃は梓をバカにしたように鼻を鳴らして、不敵な笑みを浮かべた。


「本気で言ってるのかしら? これは人の考えを予測すれば100パーセント当てられるゲームよ!


 だから言葉で揺さぶりをかけたり、バレないように変な行動したりしなさい!」

 姫乃は戯けたように言った。


 梓はようやく理解した。

(なるほど……だから、姫乃さんの考えを読めばいいのか)

「分かった、やろう!」


「先攻は譲るわ、梓が選びなさい!」

「待って、勝負で負けたらどうなるの?」


「決まってるじゃない、あたしが勝てば梓は参謀としてあたしの下僕よ。

 梓が勝てば、そうね——好きな物買ってあげるわ。貧乏そうだし」

 姫乃は見下したように言った。


 梓はむっ、と眉をひそめて、

「別にいらない。私が勝てばひかりにずっとは近づかないで、それが条件!」

 と強気に出た。


 姫乃は一拍間を開けて、「いいわ」と言葉を返した。


 それを聞いた梓は心理戦に勝つために考えにふけた。

 梓は目を瞑り、片耳に手をかけた。


(姫乃さんに勝つためには……やっぱり嘘をついて、騙すしかないのかな……?

 一回騙したことあるから、行けるかも!

 だから……)


 梓は右の個室をチラッと見てから、

「右の個室に入る!」「右の個室に入るのね」

 と言ったと同時に姫乃が被せた。


「え?!」梓が目を丸くして、困惑の表情を姫乃に向けた。

 姫乃はその顔を見て、優越感に浸りニヤついた。


「なんで?って顔してるわね。教えてあげるわ。


 梓は一度あたしを騙した、だから次もできると思い、適当な方を言って別の方に入る作戦——かしら?


 だから、どっちでもいいから目に入った方を言う——あたしは梓が向けた視線を確認しただけ」


 姫乃は挑発的な態度で梓を揺さぶった。

 梓は自分の考えが読まれた驚きでテンパり、目が泳ぎ、息が荒くなり、正常ではいられなくなった。


(なんで!? どうやったら勝てるの? えっと…………ダメだ分からない)


 梓の頭の中には敗北がチラついて、考えに集中できない。

 姫乃は「はははは」と高笑いをして、梓を絶望の淵へと追いやる。


 そんな中、梓が助けを求めたのはひかりだった。

(ひかり、助けて……ひかり、ひかり)


 頭の中をひかりとの思い出で詰め尽くし——ひかりの明るさを感じて、冷静さを取り戻していく。


 梓は真っ直ぐとした目になり、もう一度目を瞑り、片耳に手をかけ思考を巡らせる。

(姫乃さんの弱点は今日見てきた! だから、私は……!)


「右に入る!」

 梓は自信満々に宣言した。


 姫乃はピクっ、と眉を動かして、嫌悪感剥き出しな顔をした。

「さっきとは違って、嘘かどうか分からないから嫌いよ」


 そう言って、トイレから出て行きドアを閉める直前に、

「1分よ、その間に入りなさい」

 と言って閉めた。


 梓は迷わず左の個室に入って行った。

 そして、スマホをポケットから取り出して、caco3でひかりにメッセージを送った。


 1分もしないうちに返信が来た。

 梓は勝ちを確信した。


 その数秒後に姫乃が入ってきた。

「あたしに勝てるかしら!」

 姫乃が余裕そうな声で言うと、梓はスマホの音量を上げて、隣の個室に下からスマホを置いた。


 すると、梓のスマホからひかりの声が鳴る。

「姫乃ちゃん! 大好きだよ! 高圧的だけど可愛いし、分かりやすい!

——なにより、アタシのこと好きでいてくれるから!」


 梓は見えてないが、姫乃の全身は真っ赤になって湯気が出ていた。


 心臓が鼓動を速めて、血が全身を駆け巡り、細胞一つ一つが喜びで満ちていくが、呼吸は荒々しかった。

 脳はオーバーヒートを起こして、処理能力を失い『大好きだよ!』が延々と繰り返された。


 どれくらい経ったのか、梓が退屈そうに待っていると個室の外から声が聞こえてきた。


「あたしをひかりで惑わそうなんて考えたじゃない。でも、梓、あなたはミスを犯したわ。

 それは音でどちらか分かるわよ!」


 そう言って、梓がいない右の個室のドアを開けた。

「どういうこと? いない……」

 姫乃が困惑していると、梓は個室から出て、姫乃に自分の推理を披露し始めた。


「姫乃さんの弱点は今日見てきた。それで、どうすれば勝てるか分かった。


 まず、ひかりに対しては理性を失う。

——だから、ひかりに『姫乃さんに愛の言葉をボイスメッセージで送って』って連絡した。


 まあ、ひかりから連絡が来なかったら、負けてたけど、そこは信頼に賭けた。


 次に、それだけだと50:50で負けてしまうから——パニックになるとバカになることを利用した。


 スマホを隣の個室に入れておけば、音がしたのを理由に開けると予測した。」

 梓は自分の推理が合っていたから、明るい表情で語った。


 姫乃は出し抜かれたことを腹立たしく思い、これでもかと拳を握って、梓を睨みつけた。

「所詮まぐれよ! 2度は通じないわ!」


「うん、分かってる。だから、次で決着をつける!」

 梓は冷静な態度だが、内心では本当にうまくいくか不安で心臓が飛び出そうだった。


 TO BE CONTINUED

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