第24話 親友のお葬式④
歳三が龍馬に別れを言った後、ひかりはスタッフに追い出されてその場を後にした。
ひかりと歳三はまだ通話がつながっていた。
「あーあ、追い出されちゃった。
せっかく、歳三おじいちゃんに葬式最後まで見せようと思ったのに」
ひかりは肩を落とし、残念そうに言った。
「いいんじゃよ! 葬式は好きじゃないからな。
これだけしてくれたんじゃ、感謝してもしきれないのう」
歳三は清々しい顔をしていた。
「歳三おじいちゃん、良い顔してるよ!」
「そ、そうか……」
歳三は恥ずかしそうにした。
「ねえ、ビデオテープの内容なんだったの?」
「それは、秘密じゃ」
「なんでよ——アタシこんな頑張ったんだから教えてくれてもいいじゃん!」
「い、いやー、うーん」
歳三ははっきりしない様子だった。
「お願い。誰にも言わないから」
ひかりは更にねだってみた。
「分かった。——ビデオテープの中身は……」
ひかりはついに聞けると思い、静かにして唾を呑み込み意気込んだ。
「CMの後で」
歳三の言葉にひかりは拍子抜けした。
「歳三おじいちゃん! そう言うのいいから! 教えて」
「えっと……あっ! ドシ右衛門じゃ!」
歳三は思いついた様子で言った。
ひかりは困惑していた。
「ドシ右衛門ってあの国民的アニメでの5歳児ロボット?」
「そ、そうじゃ!」
「へぇ〜龍馬さんって子供っぽいね」
「ああ、そうじゃ。そろそろ検査の時間らしいから切るのう。ありがとうな」
「あ、うん!」
歳三は慌てた様子で通話を切った。
「どうしたんだろ?」
ひかりは眉をひそめて呟いた。
ひかりは一段落ついたことで、一気に疲れを感じた。
「走り回ったから疲れた〜。こういう時はポッチーだよね!」
ひかりはポケットに手を入れて思い出した。
「そういえば、なかったんだ。いーやーだ、食べたーーい!!」
ひかりは葬儀屋の前で欲を叫んだ。
そして、食欲を満たすためにひかりはあることを思いついた。
「てか、買えばいいのか」
そう、とてもシンプルなことだった。
ひかりは気分良くスキップをしながらコンビニに向かった。
コンビニに入ればすぐに天国が待っている——そう思いながらコンビニに入る直前、スマホが鳴った。
ひかりは誰だろう、と思い足を止めて確認すると母親だった。
ひかりがポッチーを食べることを阻止するかのようにベストタイミングで電話がかかってきた。
ひかりは出るか、ポッチーを買うか死ぬほど悩んでいると、頭の中に天使と悪魔が出て来た。
「ひかり、電話に出ちゃダメ! ポッチーを食べて幸せになりなさい」
天使はひかりに囁いた。
「天使の声に耳を貸してはいけない。ひかり、電話に出るんだ! 電話に出て、その後買えばいいんだ」
悪魔は天使を否定して、ひかりに囁いた。
「悪魔はバカだから何にも分かってない。電話に出たら最後、怒られるんだから」
「バカなのはそっちだ。出ないと後で怒られるだろ。今怒られて、ポッチーを食べたら嫌なことを忘れるだろ」
天使と悪魔は喧嘩し始めた。
「わざわざ怒られるバカがどこにいるのよ。怒られずにポッチーを食べる、この上なく幸せじゃない!」
「電話に出ない方が怒られるだろ。目先の欲を優先して痛い目見るさ」
ひかりは2人の喧嘩を眺めていたが、
「なんで、電話に出てポッチー買わずに病院に戻る選択肢がないの?!」
と思わず口を挟んだ。
「!?」2人はひかりが何言っているのか分からなかった。
「ポ、ポ、ポッチーを食べないなんて、極刑じゃない」
天使は震えた声で言った。
「ポッチーを買わず電話に出るだと……悪魔じゃないか」
「いや、そっちが悪魔でしょ」
悪魔の発言にツッコミを入れたひかり。
「もう、2人とも全然ダメじゃん——バイバイ」
頭の中の天使と悪魔はすぅー、と消えた。
ひかりは母親の電話に出た。
「もしもし、お母さんどうしたの?」
「どうしたの?じゃない。ひかり、どこにいるの?病室で待ってるのに全然来ないじゃない」
「え?お母さん病室にいるの?」
「そうよ。それでひかりはどこなの?」
「えっと、病院探索してた」
ひかりは必死に言い訳を考えた。
「そうだったの。じゃあ、すぐに戻って来て」
「えっと、いや、あと30分くらい探索しよかなって……」
「なんでよ?」
ひかりは何て言おうか考えていると、男の人がひかりの横を通ってコンビニに入っていった。
自動ドアが開くと同時にピロン、ポロンと入店音が鳴った。
その音は母親にも聞こえていた。
「ひかり、コンビニいる?」
ひかりはとにかく焦った、呂律が回らない、頭も回らない、目だけが回り続けた。
「え、えっと、あの……」
「ひ〜か〜り〜、すぐに戻って来なさい……」
母親は静かな口調ではあるが、声のトーンが低く怒っているのがひしひしと伝わった。
「はい……」
ひかりは今出せる全力で空中を駆け、病院に戻った。
自分の病室に入ると、母親がベッドの横で待っていた。
ひかりは母親を見てすぐに土下座をした。
「ごめんなさい。ポッチーは誓って食べてませんから」
母親は動じずに、
「どうして抜け出したの?」
と聞いてきた。
「えっと、歳三おじいちゃんの親友との約束を果たすために、アタシが行って来たの。
困ってたから、助けずにはいられなかった」
ひかりは土下座のまま事実を伝えた。
その言葉を聞くと、母親の目の色が変わった。
「なんで早く言わないの! 別にそれなら怒らないのに。ほら、立って」
母親はひかりに手を貸して立たせた。
「お母さんは約束破って、コンビニに行ってポッチー買ったのかと思って怒ってたんだから」
「そっか! アタシはそんなことしないよ!」
(危なかった!! あとちょっとで買ってた!!)
ひかりは内心焦っていたが何とか乗り切った。
一方その頃、学校では梓が姫乃に絡まれていた。




