第22話 親友のお葬式②
「おお、そうじゃったのか。なら、場所は分かるな」
「学校のどこなの?」
「グラウンドじゃ」
「グラウンドのどこ?」
「知らん」
おじいちゃんは正確な場所までは覚えていなかった。
ひかりは困り果てた。
なんと言っても、グラウンドは広いのだから。
ということで、ひかりは魔法を使うことにした。
「『透視』おじいちゃんが埋めた時の記憶を見せて」
すると、ひかりの頭の中に当時の記憶が流れてきた。
***
時は夜。
わずかな星明かりしかないグラウンド。
遠くの方では足場が高く積まれている場所がある。
若いスーツ姿の男性2人が土で汚れた状態で、穴の前に立っている。
1人はなんの装飾もない缶箱を未練があるかのように持っている。
もう1人——それが若かりし頃のおじいちゃんで、ひかりはおじいちゃん視点で見ている。
おじいちゃんはそんな男性を眺めている。
「どうするんだ?今なら引き返せるが」
おじいちゃんは迷っている男性に話しかけた。
「今更引き返したところでだろ。こいつはもういいんだ……」
缶箱を思い入れがある目で見つめながら言った。
「お前が1番愛した女性だろ。それを捨てるなんて——隠し持ったってバチは当たらないさ」
おじいちゃんは許してあげるそんな口調で説得した。
「俺には守る者ができたから。所詮は過去の女さ」
男性はどこか遠い目をしていた。
「そうか、これでいいんだな?」
「ああ」と言い、持っていた缶箱を穴に入れた。
「でもよ、高校に埋めなくて良くないか?」
おじいちゃんは気になっていたことを聞いた。
「それはだな、誰にとっても宝物になりうるからな。
高校生が見つけたら面白いかと思って」
「ははは、確かにそうだな。未来のために残すのか」
おじいちゃんは高笑いをして、納得した。
「まあな」
「もしかしたらお前の子供が見つけるかもな。
お前の血を引いてるんだし」
おじいちゃんは戯けたように言った。
「かもな。でも、見つからなかったらなかったで、嫌だな」
男性は心配の目を缶箱に向けた。
「そん時は俺が掘り出して、お前の死体と一緒に焼いてもらうさ!」
おじいちゃんはいたって真面目に言った。
男性はその言葉にひっかかった。
「聞き捨てならないな。俺がお前より早く死ぬわけないだろ」
おじいちゃんを指差し言った。
「はあ〜!お前は昔から風邪とか引きまくってただろ。そんな奴より俺が長生きしないわけがない」
おじいちゃんも熱が入り、少し怒った声で言った。
「俺は普通さ。お前が全然風邪引かないだけだろ。俺は風邪を引く分強くなってんだ。
お前は風邪を引かないからって胡座をかいた結果、先に死ぬんだよ」
男性はヒートアップして、おじいちゃんに言った。
「俺は身体が強いからフサフサだろうけど、お前は将来ハゲて死ね」
「ハゲは関係ないだろ!死ね」
男性もおじいちゃんも頭に血が上り、怒り心頭になった。
「お前が死ね」
「お前が死ね」
「死ね」
「死ね」
と言いながら取っ組み合いの喧嘩になった。
そんなところで記憶は終わった。
***
「小学生じゃん」
ひかりは思わず口に出した。
ひかりは恐る恐るおじいちゃんの頭を見ると薄いけど確かに毛はあった。
「どうしたんじゃ?」
おじいちゃんはなんのことか分からなかった。
「ううん、こっちの話。まあ、行ってくるよ!」
「ありがとな。中身は絶対に開けてはならないからな。
——葬式は10時に始まるから急いでくるんじゃ」
ひかりは「え?」と目を大きくした。
「10時?!——今何時?」
ひかりの言葉でおじいちゃんは時計を確認した。
「8:30じゃ」
「…………ってことは……」
***
ひかりは病院を抜け出して、いつもと何ら変わらない様子で空中を走った。
入院中にもかかわらず。
『透明』と『浮遊』そして『変身』を使い、入院服から制服姿になって、体が透明の状態で学校に向かった。
グラウンドでは女子達が体育の授業でドッジボールをしていた。
ひかりはバレないように降り立ち、
「『サーチ』おじいちゃん達が埋めた缶箱の場所を教えて」
遠くでドッジボールをしている女子達が視線の先に見え、塀の近くの木の下に埋まっていることが分かった。
ひかりはその場所に行って、手で掘り始めた。
「スコップ持ってくればよかった。どっちが早いかな……取りに行って掘るか、このまま手で掘るか」
ひかりが考えていると、ボールが飛んできた。
「うわっ!」と言ったと同時に尻もちをついた。
ひかりはボールが飛んできた方を見ると、1人の女子が走って来ていた。
ひかりは透明状態だからバレはしないが、気をつけないといけない。
相手はひかりを見えないからぶつかる可能性があるから。
ひかりはボールから離れた所にいると、またボールが飛んできた。
ひかりが驚いて声が出そうになるが、両手で口を塞いで堪えた。
(なんでアタシの所に飛んでくるの)
ボールを取りに来た女子が最初のボールを拾って、ひかりの方に飛んできたもう一つのボールも取りに行った。
ひかりは細心の注意を払って、入れ替わるように女子がいた場所に行った。
ひかりは安堵していると、またボールがひかりの目の前に飛んできた。
ひかりは驚き、全身がビクッとなった。
(危なかった!?なんでこんなくるの?下手なの?!)
と思いながら、そのドッジボールをしている方に目をやると、ひかりに向かってボールが来た。
ひかりは間一髪でリンボーダンスのように体を後ろに反らした。
(ほんとに危ないよ!!誰が投げてるの?!時間ないのに!)
ボールを取りに来た女子は4つのボールを取って、戻って行った。
「やっと行った……」
ひかりは小さく呟いた。
ひかりは切り替えて、缶箱を手で掘り出し始めた。
「なんか……犬みたいで嫌なんだけど!!」
ひかりは自分の姿を客観視して恥ずかしがった。
(なんか良い方法ないかな……?あっ!!自分から出て来てもらえば良いのか!!)
ひかりは何かを思いつき、地面に手を着いた。
「『浮遊』缶箱よ出て来て!」
すると、地面が隆起して土を被った缶箱が出て来た。
ひかりは飛び回って喜んだ。
「できた!——じゃあ、葬式に持って」
ひかりは何かに気づき足を止めた。
「……そういえば、場所と名前聞いてないじゃんーー!!」




