第19話 ミッション『姫乃の魔の手から逃れろ』ミドル!
梓以外の2人はこの状況を楽しみながら体育館へ向かう。
「まずは状況を整理しよう!」
ひかりが開口一番に言った。
「整理しなくてもただ姫乃に会わないようにしながら体育館行くだけじゃない?」
遥花は自分が思ったことを口にした。
ひかりはチッチッチ、と人差し指を左右に振りながら、
「そんな簡単じゃない。姫乃ちゃんには下僕が数十人もいるんだから、その人達にも気をつけないと」
と言った。
遥花は「は?下僕?」と困惑していた。
「うん——姫乃ちゃんには何故か下僕がいるんだよ」
「何故かの部分が1番気になる」
「でも、誰が下僕かは分からない。本当にやるんだったら、極力人に見られない方が良い」
梓はまだ乗り気ではないものの、的確に状況を見ていた。
「そうだね!じゃあ、マカロンみたいに移動しよう!」
ひかりは突飛な提案をした。
遥花と梓は「は?」と困惑した様子で眉をひそめた。
「マカロンみたいに移動ってことは転がっていくの?」
「マカロン?どういうこと?」
遥花は自分の考えを言って、梓は理解できずそのまま聞いた。
「遥花、違うよ。マカロンみたいに移動ってのはアタシの後ろに梓、前に背の高い遥花が立って、アタシを挟んで歩くことだよ!」
「そういうことね。挟むからマカロンね。普通に伝わらないからマカロンだけじゃ」
梓は意図を理解した上でツッコミを入れた。
「なるほどね!それならバレにくそう!ひかり天才!」
遥花はひかりをオーバーに褒めた。
「でしょでしょ!」
ひかりは嬉しそうだった。
「天才ならもっと分かりやすく説明するよ……」
梓はひとり呟いた。
「それじゃあ行こう!」
「うん!ウチが先に廊下確認する」
「お願い!」
遥花は顔だけ廊下に出して、確認する。
OSBのドア付近にメガネをかけた男子生徒がおり、チラチラとOSBの部室を見ている。
廊下には放課後になって少し経っていることもあり、それぞれ帰る者は帰り、部活がある者は活動場所に移動している状態で誰もいない。
遥花は顔を戻して2人に、
「ドアの付近にメガネをかけた男子が1人いるだけ。——そういえば、ウチが来た時も同じ場所にいたかも」
廊下の状況を伝えた。
「ってことは、たぶん姫乃ちゃんの下僕かも」
「その可能性が高いね。監視していると思う」
「ならどうする?」
遥花の言葉に2人はそれぞれ考えにふけた。
「そうか!メガネ落とせば良いんだよ!その隙にマカロン移動すれば!」
ひかりは突然思いつき声に出した。
「そんなことできるの?」
「まかせて!アタシの魔法でちょちょいのちょいだから」
「よし!ひかり、早速やろう!」
「うん!」
ひかりはスマホのカメラを起動して、スマホをちょっとだけ出して、確認した。
「よし、あの人のメガネよ『落ちて』!」
すると、メガネの先に錘が付いたように、顔からずり落ちた。
その瞬間、「今だ!!」とひかりの合図で3人は部室を出て、前に遥花、真ん中にひかり、後ろに梓の状態で歩き始めた。
「いや、絶対無理だよ。メガネ拾ってかけたらすぐバレるよ」
梓は呆れた様子で言った。
「えー、じゃあ……これならどう?『浮遊』あの人のメガネ」
ひかりが言うと、男子生徒がしゃがんで拾ってかけて立った瞬間、メガネがふわっ〜、と風船のように浮いて天井まで浮いたまま落ちてこない。
「え?ちょっと……」と目の前の出来事に驚きながらも、ジャンプして必死にメガネを取ろうとしている。
「これでバレないでしょ」
「うん……可哀想だけどね」
「まあまあ——第一関門クリアってことで良いじゃん!」
3人は歩を進めて階段付近に来ると、遥花が「ちょっと待って。階段に男子が2人いる」と言って、3人は立ち止まった。
「どうする?またアタシの魔法でメガネ浮かす?」
「ううん、2人ともメガネしてないから無理」
遥花しか見ていないので、2人は憶測で考える。
「えー、梓、どうしたら良い?」
「うーん、普通に考えて、私と遥花さんは見つかってもいいから2人で気をそらして、ひかりはこっそり行ってもらうかな」
「そっか!ならウチに任せて!ウチそういうことする女スパイ好きだから!」
遥花は自信満々に言って、単身で2人の所に行った。
ひかりと梓はこっそり覗いた。
「H〜i!2人ともここで何してるの?」
遥花はフランクな感じで、2人に話しかけた。
「えっと……」と2人とも緊張からかもごもごしている。
「今からここはウチが使うんだけど、どいてくんない?」
遥花は少しキツめの口調で言った。
「いやでも、命を受けたから」と周りの音にかき消されそうなほど、弱い声で言った。
「なんて?」と聞こえてはいたものの、圧をかけるために聞き返した。
「…………」2人が言い淀んでいると、遥花は2人に顔を近づけて、
「早くどかないと、体の毛穴から真っ赤なトマトジュースが噴き出すかもね」
と囁いた。
2人は身震いを起こし鳥肌が立ち、顔が真っ青になった。
「すみませんでした」
と震えた声で言って、階段を駆け上がっていった。
「来ても大丈夫!」
ひかりと梓に声をかけて、2人は出て来た。
「いや、どの女スパイ?!」
梓はツッコミを入れずにはいられなかった。
「良かったでしょ?ウチが女スパイになったらって考えてた、オリジナルの脅し文句!」
「女スパイにしては幼稚」
「遥花、天才だよ!超かっこよかった!」
ひかりはさっき遥花が自分を褒めたように本心で褒めた。
「そうでしょう!——時間がないから、行こう!」
遥花が先に階段を降りて、2人は後をついて行った。
3人が階段を降りて、遥花が廊下を確認すると、
「なにこれーー!!」
と叫んだ。
2人は遥花の驚きようから気になって見ると、「え?」と目を疑い、
「なにこれーー!!」
と叫んだ。




