第15話 部活クラッシャー②
中に入ると最初に来た時と同じように男子生徒達がずらっと両壁に並んでいた。
「あら、終わったのかしら?」
見下しながら、姫乃は聞いた。
「まだ終わってない」
美久が冷たく言った。
「あら、遅いこと。道草でも食べてたのかしら」
姫乃は皮肉を言った。
4人は姫乃を無視して、必要な道具を取り、足早にその場を後にした。
4人は校庭の木の下で写真を撮ることにする。
美久は慣れた手つきで、照明を組み立てて、雀は美久に聞きながら準備をした。
「準備良いですよ!2人とも自分らしいポーズしてください」
雀がカメラの前に立ち、美久は照明の調整をしている。
ひかりはポッチーを両手に持ち元気いっぱいに腕を広げた。
梓は何をして良いか分からず棒立ちしていた。
「梓さん、ほら、ひかりさんみたいにポーズ決めてください」
雀は梓に言った。
梓はひかりに聞いてみる。
「私といえば何?」
目を瞑って考えて、閃く。
「梓と言えば本だよ!」
美久はそれを聞きアイデアを思いつく。
「梓さんが地面に足を伸ばして、座って本を読んでて、ひかりさんが何読んでるんだろうって覗くのはどうですかね?」
雀はぶんぶん首を縦に振る。
「良いですね!早速やりましょう!——でも、小説がないです」
ひかりは「任せてください!」と自信満々に言って走り出した。
数分後には、梓の鞄から本を取り出して持って来た。
2人はポーズを決めて、雀がカメラのシャッターを押した。
その写真は、2人の個性が表れた1枚になった。
4人は写真を撮り終えたことを喜び、姫乃には負けないと自信がつく。
部室に入ると、男子生徒達はさっきと変わらないまま立っていた。
「終わりましたよ」
美久がそう言うと、姫乃はドアに一番近い男子生徒に目配せをし、男子生徒は部室を小走りで去る。
「ふふふ、吠え面をかかないといいけど」
姫乃はそう呟き、4人を睨みつける。
4人もまた、睨み返して、静寂の中に闘志が燃える。
しばらく睨み合っていると、さっき出て行った男子生徒が顧問を連れて戻って来た。
「事情は聞いた。喧嘩も青春の内だから止めない。存分に見せてくれ」
と年老いた顧問が言った。
男子生徒が机と椅子を出して顧問が真ん中に座った。
美久と雀は自分のカメラを机に置いて、男子生徒達もカメラを置いた。
「では先生、まずは風景から見てください」
と姫乃は先生に指示した。
1人の男子生徒がカメラを操作して、見せた。
その写真は学校の威厳を表すかのように斜め下からの校舎の写真だった。
「ふむ、なかなかいい出来だ」と顧問は言った。
美久がカメラを操作して、屋上からの写真を見せる。
夕日によって町が輝く、最高の瞬間を収めていた。
「ほお、素晴らしい!これは、笠原の勝ちじゃ」
と顧問は言った。それを聞いた4人は喜びをあらわにした。
「まあいいわ。次は人物を見てください」
と姫乃は焦りを見せることなく言い、別の男子生徒がカメラを操作して見せる。
その写真は姫乃が被写体で、絢爛さが出ていて目を引く1枚だった。
「これは美しい」と顧問は言った。
美久がまたカメラを操作して、見せる。
顧問は「登場人物の個性が出ておる」と言ったあと、「黒川の勝ちじゃ」と言った。
姫乃は余裕の笑みを浮かべる。
4人は焦るが顔には出さなかった。
「最後は、スナップを見てください」
と姫乃は言ってまた別の男子生徒がカメラを操作して見せる。
その写真は紅茶を嗜んでいる姫乃を収めた1枚だった。
「日常をちゃんと収めておる」と感心した。
雀は手を震わせながら、カメラを操作して見せる。
その写真を見て、顧問はメガネを外して、顔を近づけて見る。
「おお!これは美しい!人が日常で輝く瞬間をよく撮れておる」
「もちろん、小鉢の勝ちじゃ」と顧問は続けて言った。
それを聞き4人は歓喜に満ちて、跳ねながら喜んだ。
「やった!やりましたね!」
「やっと元に戻る!」
「雀先輩良かったですね!居場所を取り戻せて!」
「美久さんも雀さんも幸せそうでなにより」
その姿を顧問は雀のカメラに収める。
「青春じゃな」
と言って、顧問は職員室に帰る。
一方、姫乃は「なんで、なんで、なんで、あたしが負けるなんてありえない……下僕どもが悪いんだ」と理解に苦しんでいる様子だった。
髪を掻きむしって、膝をつく。
それを見たひかりは姫乃に近づく。
「それは違うよ。アタシ達が勝ったのは絆があったから。周りを従わせてたら本来の力を引き出せない!
美久先輩と雀先輩の絆があったからこそ、雀先輩は最高の1枚が撮れた!
今の姫乃ちゃんじゃできないこと!」
ひかりは諭すように言った。
「絆?そんなの知らない。黙ってあたしの言うことを聞けばみんな幸せなんだよ」
姫乃は悪びれる様子もなく、自分が正しいと主張した。
「絆を知らないなら教えてあげる!『共有』今日起こったことを姫乃ちゃんに見せて」
ひかりは自分と姫乃のおでこに手を当て、魔法を使った。
姫乃の頭の中にOSBの部室に入った時に梓が心配してくれたシーンと屋上での美久と雀の会話のシーンが流れてきた。
「何これ?」と姫乃は混乱している。
「こういうのが絆だよ!自分のことのように心配したり、その人を想ったりする!
姫乃ちゃんはそれができる?」
ひかりが姫乃に説明した。
「できるわけがない」
「それなら、対等に見ることから始めたら。下僕としてじゃなくて一人の人として」
姫乃は投げやりに
「分かったわ、みんな下僕辞めなさい」
と言った。
近くにいた下僕の1人が言う。
「僕たちは好きでやっていることですので、辞めません」
男子生徒達全員が頷いた。
その下僕は続ける。
「辞めませんが、これからは強制ではなく、部活動がある時は休ませてください」
下僕は姫乃に申し立てた。
姫乃は渋々「分かったわ」と言った。
「良かった良かった!人は変われるからね!」
ひかりは独り言を言った。
姫乃は立って、ひかりの方に手を出す。
顔はそっぽを向いている。
「こんなこと言われたの初めてだった。ほら」
と言った。
ひかりが手を握ろうとする時、姫乃が口を開く。
「あたしのと、と、とも、下僕にしてあげる!」
と言い、ひかりは手を引っ込める。
「下僕はいやだ!」
ひかりが拒否すると、姫乃は怒り、
「みんなが羨ましがるのに」
「友達ならなってもいいけど?」
「はあー、誰が友達になるもんですか!もういい知らない」
と言って、部室を出て行った。
「これで一件落着かな?」
ひかりは独り言を言った。




