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AIを使うと馬鹿になる?――その答えをAIと一緒に考えてみた  作者: 山田りく


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【第9章】教育の本質は「曖昧さの言語化」を待つこと

 では、大人がわざわざ「人工的な不便の壁」を作らないのだとしたら、AI時代の子どもたちに対して、一体どのようなアプローチをすれば良いのでしょうか。


 その答えこそが、本稿の核心である「自分の頭の中にある、まだ言葉にならない曖昧な何かを、自分の言葉で外に引っ張り出す力(言語化力)」を養うことです。


 AI時代の教育において、大人が今日からでも実践できる最も手堅い(保守的な)アプローチを3つのステップで提案します。


 第一に、「子どものモヤモヤ(違和感)をそのまま認め、じっと待つこと」です。


 子どもが何かを体験したとき、「なんか違う」「なんか嫌だ」「なんか面白い」と、曖昧な言葉を漏らすことがあります。このとき、効率主義の大人はつい先回りして、「何が嫌なの?  理由を論理的に言いなさい」と、大人の論理(AI的な正解)を求めてしまいがちです。


 しかし、まだ脳が発達段階にある子どもにとって、自分の感情の理由をすぐに言語化するのは不可能です。そこで大人がやるべきなのは、まず「そっか、なんか違うんだね」と、その言語化できていないモヤモヤ自体に「接続確認」をしてあげることです。正解を急がせず、モヤモヤした状態のまま脳を付き合わせる「時間」をプレゼントすることです。


 第二に、「言葉の補助輪を、大人が勝手に付けないこと」です。


 子どもが「あれ、あれ取って」と言っているとき、大人が「はい、おもちゃね」と先回りして答えを渡してしまうと、子どもの脳は言語化のトレーニングチャンスを失います。「どれのこと?  赤いやつ?  四角いやつ?」「どんな気持ちになったの?」と、子どもの頭の中にあるイメージを、子ども自身の力で言葉に直す試行錯誤に伴走する。この泥臭い付き合いこそが、AIの綺麗な一般論に流されない「自分軸の言葉」を育てます。


 第三に、「AIを『答えの出力機』ではなく『思考の壁打ち相手』として使わせる習慣」です。


 もし子どもがAIを使う年齢になったなら、「これについての答えを教えて」という質問の仕方をさせないようにします。代わりに、「今、こういうことで悩んでいて上手く言えないんだけど、僕が言いたいことって何だと思う?  一緒に考えて」と、自分の曖昧な思考を整理するための道具(助手)としてAIを使わせるのです。


 本当に必要なのは、不便な環境ではなく、「結果がどうなるか分からない、本人にとってリアルな問題」に直面させることです。友達とのケンカの仲直り、部活の人間関係、自分がどうしてもこだわりたい趣味の世界。これらはAIに「正解のセリフ」を聞いても、現実の相手の表情やその場の空気で簡単にひっくり返ります。


「AIの言う通りにしたのに、上手くいかないじゃん!」


 という、リアルな現実の不条理さと失敗、そして葛藤。これに直面したとき、人間の脳は初めて、AIのチャンネルを引っぺがし、幼児のように「違う! そうじゃない!」と自分自身の頭をフル回転させ始めるのです。

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