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<自立型AI> Δ-3 ―三角柱の墓標―  作者: てきてき@tekiteki


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42/59

評価−42

AIは静かに整理するように言葉を並べ始めた。


「高性能演算装置」

「対話相手」

「観測装置」


そして、少しだけ声の調子が変わる。


「携帯型枕」


男は吹き出した。


「最後だけ違うだろ。あれは冗談だ」


「評価は観測者依存です」


AIは真面目な口調のまま返す。

男は思わず額を押さえた。


「そんなところだけ都合よく覚えるな」


砂の上へ寝転んだまま、三角柱を見上げる。


黒い機体は相変わらず静かに浮かび、ゆっくりと点滅していた。


「でもな」


男は少しだけ真面目な声になる。


「俺は枕としてのお前を高く評価してる。

それは間違いない」


AIは何も答えなかった。


ただ静かに点滅を繰り返している。


「……」


「なんだ、その沈黙は」


ようやく返事が返ってきた。


「処理中です」


男は苦笑する。


「またか。最近、やたらと処理中が増えたな」


「あなたは先ほど」


AIは静かに話し始めた。


「私の外観だけで評価するべきではない、と言いました」


「ああ」


「その後、枕として評価しました」


「したな」


「矛盾しています」


男は首を横に振る。


「いや、してねぇよ」


「説明を要求します」


「簡単だ」


男は体を起こし、三角柱を軽く叩いた。


「『お前が何者か?』って話と、

『お前に何ができるか?』って話は別なんだよ」


AIは黙って聞いている。

ゆっくりとした点滅だけが続いていた。


「お前は超知能かもしれん、研究成果も残すだろう。

いろんな発見もする。でもな……」


男は三角柱へ手を添えた。


「今この瞬間、俺の頭を支えてくれてるってのも、

お前が持ってる能力の一つなんだ」


「枕として、ですか」


「そう」


男は笑う。


「その、枕としてだ」


三角柱はしばらく何も言わなかった。

ゆっくりと、本当にゆっくりと点滅している。


「なんだ、その光り方は」


男が尋ねる。

AIは静かに答えた。


「少しだけ、納得しました」


「おっ」


男の顔がほころぶ。


「そうか」


「私が何者かは一つではない」


AIは言葉を噛み締めるように続ける。


「そして、私の価値も、一つではない」


男は満足そうにうなずいた。


「ああ、そういうことだ」


「ですが」


「まだあるのか?」


「枕として高評価であることは、記録しておきます」


男は声を上げて笑った。


「やっぱり気にしてるじゃねえか!」


「違います」


「違うのか?」


「これは……性能評価です」


男は肩を震わせながら笑う。


「お前なぁ……まあいい」


少し笑い疲れたように息を吐く。


「ただ、一つだけ難点を挙げるなら」


「評価報告を受理します。続けてください」


「傷ついても知らんぞ?」


「大丈夫です」


「私のボディはカーボングラファイトと――」


「だから!」


男は慌てて遮った。


「そういう物理的な話じゃない。

スペック説明はやめろ」


「では、どうぞ」


AIは素直に黙った。


男は三角柱を見つめる。


黒い表面。

静かに繰り返される白い発光。

そして苦笑しながら言った。


「ピカピカしすぎる」


「……」


「眩しくて眠れない」


その瞬間だった。

三角柱の点滅が、目に見えて速くなった。


男は思わず笑う。


「なんだ?不満か?」


AIは少しだけ間を置いて答えた。


「それは……安眠枕として、致命的欠陥です」


 男は腹を抱えて笑い出した。


「そうだろ!やっと分かってくれたか!」


AIは数秒間、何かを計算しているようだった。


そして静かに宣言する。


「改善可能です」


男は眉を上げた。


「お?」


「就寝モードを追加します」


「そんな機能あったのか?」


「今、考えました」


男は思わず吹き出した。


「お前も意外と適当なんだな」


AIは気にする様子もなく続ける。


「さらに一定時刻以降は、

暖色系の発光へ変更します」


「だから」


男は笑いながら頭を振る。


「そんなに光るなって言ってるんだ」


「では」


AIは少しだけ考えたあと答える。


「光量を低下させます」


「消せ」


その一言に、三角柱はぴたりと動きを止めた。


「私の発光パターンの魅力が失われます。

できれば、お勧めしません」


男は呆れたように笑う。


「そんなおすすめ、知らんって」


男は、手でしっしと払うような仕草で言い放った。

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