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追放された少年はとんでもない存在に王と勘違いされて今日もやらかす(旧題:追放された魔無しの俺にだけ、世界最強の魔法がひざまずく)  作者: seisei


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第71話 変身

「うわっ!」


 そんな驚きの声をあげたのは、我ら庶民を代表するジャガイモ頭のエディ君だ。


「どうしたの?」


 そうタイミング良く聞くのは魔眼のソフィア嬢だ。


「見てよ」


 エディが指し示すところを見たソフィアは思わず絶句。


 そこには数え切れないほどの龍や飛竜が飛び交っていたのだ。


 群がる。そんな表現が最も適していそうな数だ。


「恐らく間違い無いだろう。あの洞窟から強い魔力が感じられる」


 そう指摘したのは魔力に敏感な精霊王子様だ。


「そうだな」


 精霊王子の言葉を肯定したのはセレン神聖国の天才魔導師にして大聖女の幼馴染ギネスだ。


 能力の突出した生徒たちに混じり地味な立ち位置だが、彼も並の魔導師からはかけ離れた才能の持ち主である。


「アッシュ。お前がさっさと行って、救い出して来たらどうなんだ」


 ギネスがアッシュを睨み付けながら言った。


「ギネス様。確かにアッシュ様は偉大です。アッシュ様ならギネス様の仰る通り何もかも軽くお一人で解決されるでしょう。

 ですがアッシュ様は前に出て手柄を一人占めすることを最も嫌われているのです」


 聖女マリアがアッシュの顔に熱い視線を送りながらギネスに言う。


 ギネスは「ウグゥ」と変な声をあげて黙るしかない。


 つまらない一言でギネスはとてつもないダメージを受けてしまったが自業自得と言わざるを得ない。


 バインドが優しくギネスの肩を叩いて慰めている。


「何言ってるの? 僕だけであんなところに行くのは怖くてできないよ」


 と、アッシュが無自覚な言葉を出す。


 そうすると聖女マリアはまたアッシュの謙遜が始まったと、向ける視線が熱くなる。


 そのマリアに悔しそうな視線を向けるギネスであった。


 そんな可哀想なギネスにクラスメイトたちの目が優しい。


「「さあ、行くぞ」」


 武王国の無頓着コンビ、姫騎士アテナと剣鬼ライドが言い合わせたように声をハモらせる。


 武の象徴の二人は群がる龍を見ると、いてもたってもいられないらしい。


 そんな彼らに、残念なものを見る目を魔眼のソフィアが投げかける。


「「「「「まあ、アッシュがいるし……」」」」」


 魔導組のクラスメイトたちが今度は完璧なシンクロ率を示して呟く。


 クラスメイトたちは、山の尾根を越えて龍の大群が巣食う秘境に入り込んでいくのだった。


 直ぐに異変は現れる。


 群がる龍たちの中の一際大きな個体が高い雄叫びをあげたのだ。


 ギャーーー!


 強い風音のような吠え声が山間に木霊こだまする。


 それに答えるように他の龍や飛竜たちが一斉に騒ぎ出した。


 ギャー

 ピー

 キュー


 様々な雄叫びが響きわたる。


 先頭の剣鬼ライドがサッと右手をあげて皆の動きを止める。


 姫騎士アテナも背を低くして岩陰に隠れるようにクラスメイトたちに身振りで示す。


 身を低く目立たないようにしてエディが龍の谷を見下ろして絶句した。


 なぜなら先程よりもたくさんの龍が洞窟から溢れ出してきたからだ。


 しかも、現れたのは古代龍達だった。


 古代龍は普通の龍に比べて二回り以上巨大な上に溢れ出させている魔力量や威圧感は比較にならない位に大きい。


 そんな古代龍がわんさか出てきたのだ。


 姫騎士アテナが慌ててクラスメイトたちに身を隠させたのもやむを得ないだろう。


 その様子を見て勇猛な姫騎士や剣鬼ですら二の足を踏んでしまう。


「あちゃ。こりゃ無理だわ」


 魔眼のソフィアが皆の心を代弁するかのように言う。


「皆、話がある」


 そんな彼らに精霊王子が声をかける。


 クラスメイトたちが皆、精霊王子の周りに集まって彼を見る。


「何です殿下」


 商人の息子エディが尋ねた。


 その言葉に頷く精霊王子。


「改めて皆には心からの感謝の意を伝えたい。

 ありがとう。心より感謝する。

 そして、ここまで一緒に来てくれただけで十分だ。

 ここからは私一人で行こう」


 その精霊王子の言葉を剣鬼ライドが遮った。


「待て、俺は行くぞ。逃げ出すなんて真っ平だ」


「ライド。しかしあれは無理だぞ」


 姫騎士アテナが首を左右に振って指摘した。


「正直言うとシアのことは諦めています。彼女はもはや生きてはいないでしょう。

 私はそれでも命をかけて救出に向かわねばなりませんが皆さんまで犬死する必要はありません」


 精霊王子が深々と頭を下げて言った。


 クラスメイトたちは悔しそうに精霊王子を見ている。


「アッシュさん。なんとかならないんですか?」


 エディが珍しく強い調子でアッシュに言った。


 今まで黙って成り行きを見ていたアッシュはその言葉に少し首を傾げて見せる。


 何かを思いついたようだ。


「あるよ」


 アッシュがそう言った。


「「「「「「ある?」」」」」」


 クラスメイトたちが声を揃えて聞く。彼らは期待に目を輝かせている。


 いつも無自覚のアッシュはうんうんと頷くと無限収納庫に手を突っ込む。


 そして、ジャジャーンと効果音が聞こえてきそうな感じで何かを取り出した。


 手にはフラフープのような輪っかを持っている。


 魔眼のソフィアがアッシュが手に持つ輪っかを見て叫ぶ。


「変身の輪?」


「そう。これは変身できる輪っかだよ」


 アッシュはニコニコしながら言った。


「しかし、アッシュさん。変身って誰に変身するんです?

 それって変身したらその人の力を使えるようになるなんて凄いアイテムなんですか?」


 エディが尋ねた。


「まあ、ただ変身するだけだけど。あれだよ」


 アッシュが岩陰から半身を出して指差した。


「え? なんです?」


 エディがアッシュに並んで頭を出してアッシュの指差した方向を見た。


「あ、なるほど。龍人に変身して忍び込むんですね」


 龍人とは人型の龍、トカゲ人間だ。


 クラスメイトたちもなるほどと納得する。


 じゃあ、変身しよう。



☆★☆



「聖女様はやっぱり龍人になっても可愛いね」


 ソフィアが嘆息した。


「そうですか?」


 恥ずかしそうにマリアが自分の体を見回しながら言う。


「トカゲ人間になっても大きいのな」


 ブツブツと文句を言うソフィア。


 一方、男の子たちは嬉しそうにうんうんとソフィアに同意して頷いている。


「行きますよ」


 呆れた声で姫騎士アテナが皆に言う。


 アテナに連れられてゾロゾロと龍の谷に一行は降りて行く。


「待て」


 そんな彼らに空から声が掛かった。


 クラスメイトたちは慌てて空を見上げた。


 そこには巨大な古代龍が浮遊していた。

いつも読んで頂きありがとうございます。

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