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追放された魔無しの俺にだけ、世界最強の魔法がひざまずく  作者: seisei


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第7話 ホームルーム最前線 (水晶の化身は、素敵なレディ)

翌日の授業はあまりにも普通に進んだ。


 自己顕示欲の塊のような自称魔導王バインドですら大人しく授業を受けていた。


 騒がしい剣鬼ラバンも居心地が悪そうにキョロキョロしている。


 クラスメイト達は窓際のアッシュの行動に注意を向けるも、誰も行動を起こそうとはしなかった。


 そんなギクシャクした雰囲気を破ったのは、またもソフィアだった。


「アッシュ君。あなたの恩恵ってなんか変よ」


 神眼とも魔眼とも言われる異能者のソフィアにはアッシュの頭上に存在する「魔法の恩恵」が気にかかるらしい。


「ん。俺が変なのは分かっているけど……魔なしの俺に恩恵なんてあるのかな?」


 アッシュが不思議そうに自分の肩を触りながら尋ねた。


 うんうん頷くソフィア。


 しかし恩恵のことにアッシュは興味が無いようだ。


「そうそう。ソフィアのお爺様って魔法協会の協会長さんなんだよね」


「そうよ。我が家は代々、魔法協会の家柄。直近5代は協会長をしているわ」


 ソフィアが答えた。少し自慢らしい、顔に笑みが広がる。くるくるの巻き毛がふわふわして彼女の愛くるしさを引き立たせる笑顔だった。


「なら、魔法について詳しいはずだよね」


 アッシュが目を輝かせる。


「あのさ、こんな魔法を知っているかい?」


 アッシュが前のめりになって話し出したのは彼が考える最高峰の魔法、散々どんな魔法か身体を使って説明する。


「……その真ん中から天に向けて一条の光の柱が立ち上がるわけさ……」


 アッシュは熱く語り始める。


 ところが、その話に食いついたのはアッシュの隣の席に陣取った聖女マリアだった。


「あのアッシュ様。なぜ天に向けて魔法を放つ必要があるのですか?」


 天は彼女にとって不可侵の聖域だ。そこに向けて攻撃するという意味が彼女には理解できないのだ。


「やぁ、マリア。それはいい質問だね。絶対的な存在に対する、挨拶みたいなものさ」


 うんうんと頷くアッシュ。もちろんアニメの設定。


「まぁ。神様にご挨拶ですか。あの魔法にご挨拶されていたのも?」


 目をキラキラさせて聖女は更に食いついた。


 ずいと前のめりに突き進む。アッシュとくっ付いてしまうほどの近距離だ。


「マリア嬢。近い、近い」


 身体がくっ付いてしまいそうになり、アッシュが慌てて一歩下がる。するとマリアが二歩近付いた。


 彼女はとても上品で優雅な聖女。


 しかしそれだけではない。


「マリアは凄いプロポーションしてるよね」


 惚れ惚れと言うソフィア。彼女はわざと聖女の肢体に視線を向けた。


 その言葉にハッと我に返ったマリアが凄い身ごなしで身体を翻した。


「すみません。はしたない格好をしてしまって」


 ソフィアが視線を当てていた大きく豊かな胸を両手で包み込むようにして隠すと身を縮こませる。


 しかしその姿は逆効果だ。


 ソフィアはくすりと笑った。


「ほんとマリアは反則よね」


 何が、は言わない。


 アッシュはことの成り行きが理解できず、一人置いて行かれて目を白黒させる。


「マリア。ごめん身体に触れちゃったかな」


 申し訳なさそうにアッシュは謝った。


 マリアは首を激しく左右に振った。


「もう。ソフィアさんたら、知らない」


 頬を膨らませてその場を逃げ去ってしまった。


「ああソフィア、マリアに嫌われちゃったよ」


 アッシュがとても残念そうに言った。


「大丈夫、大丈夫」


 ソフィアが軽く答えた。


「ちょっとよろしいですか?」


 アッシュ達の会話に入って来たのは、エディ・モーレンソだ。彼は透視、演算、記憶の異能持ち。


 茶髪にそばかすの顔、いかにもザ庶民な顔立ちの男の子。


「どうしたの?」


 アッシュの言葉にエディはニコニコ笑いながら、


「アッシュさん。昨日の朝、皆さんが放たれた魔法ですが、あれは実はアッシュさんが放ったのですか?」


 その質問に教室全体の空気が止まった。


 今まであれほど騒がしかった教室が一瞬で静まり返った。


「え? そんなはずないよ」


 アッシュは即否定した。


「でも皆さんは誰一人魔法を放っていないと言ってますよ」


 エディがぐいっと前に出て言った。無意識にマリアの真似をしているがなんの破壊力も無い。


「そんなことか。なら自然現象なんじゃないの。よくあることさ」


 アッシュのその一言に、教室は凍りついた。


 誰しもの頭の中に「よくあることさ」の言葉が何度もリプレイされるのだった。



☆★☆



 その頃、試験会場だったホールの床の上に真っ二つになって転がっている水晶に、大きな変化があった。


 カラン


 音を立てて二つの半球が合わさって一つの完全な球体になる。


 二つの水晶は次第に混ざり合って複雑な色と形を取り始めた。


 そして、あの少女に変化した。


 少女は床から立ち上がると辺りを見回した。


「ダメ……取らないで……」


 少女は何かに気付いたのか、唐突に口走る。


 ふわ! 彼女の姿が消える。


 次の瞬間、廊下を一人で歩いているアッシュの前に少女が出現した。


「あれ?」


 アッシュが嬉しそうに言う。


「直ったの?」


「はい」


 少女も嬉しそうに答える。


 そして跪く。


「王よ」


 アッシュは優しく微笑んだ。


「やめてよレディ。そんなんじゃないよ、勘違いしてるよ。俺は公爵家を追い出された、しがない準貴族だよ」


 アッシュはそう言いながら少女の頭を撫でる。


「いいえ。あなたは神」


 少女は更に言い募り頭を深く下げた。


「ダメダメ。やめて」


 アッシュが強く否定し少女を立ち上がらせようとした。


 少女が身をよじらせると、ふわっと浮き始めた。


 アッシュは慌てて退がり、目を見張って宙に浮かぶ少女を見た。


 空中に浮いた彼女は、みるみる大きくなり瞬く間に成長した女性となった。


「あわ、なに? どうしたの?」


 アッシュが驚く。


 すっと空中からアッシュの前に降り立った時、彼女は整った容姿を持つ女性になっていた。


 アッシュ達と同じ年齢ぐらいに見える。


「私はあなたのしもべです。

 名前はレディ」


 そしてもう一度アッシュの足元に跪いた。


「あれ? 綺麗なお姉さんになったね」


 アッシュは驚きで目を丸くする。


「どうでしょうか?」


 レディは、両手を広げて女性らしくなった体を見せびらかすように左右に全身を振ってみせる。


「うん。大きくなったね。でもさっきのレディもとっても小さくていい可愛らしいよ」


「そこ?」


 レディは頬を膨らませて突っ込んだ。



 アッシュはレディを伴って教室に戻ってきた。


 教室の皆の視線がレディに集まった。


「水晶の化身のレディちゃんだよ。仲良くしてあげてね」


 アッシュがレディを紹介した。


 凍りつく生徒達。


 ニッコリ笑うレディ。


 そんな彼女の前にトントントンと足音を立てて聖女が歩み寄った。


 それからキッと少女を睨みつける。


「ごめんなさい。わたくしは仲良くできそうもありません」


 聖女の顔には恐らく生まれて初めての嫌悪の表情が刻まれていた。


 レディはコテンと首を捻ってニッコリと微笑む。


「そうね」


 彼女はそれだけ言った。


 カッカッカッと踵が床を踏む音を響かせ現れたのは姫騎士だ。


「アッシュ、そんなよく分からない娘は放っておいて、私と宮殿に来い」


 姫騎士らしく周りのことなど気にしていない。


 いつの間にかアッシュの背後に回ったハイエルフの王女はアッシュの袖を摘んで引っ張る。


「あれーアッシュ君。もう修羅場?」


 魔法協会長の娘ソフィアが少し離れたところからひざを折ってアッシュの顔を下から覗きこむようにして言った。


 アッシュの視線は自然とソフィアの全身を捉える。


 ソフィアの胸元はわざと大胆に開かれていて彼の視線を誘導しようとしているのかいないのか……


「バインド君。何が起こっているのですか?」


 エディのその質問に自称魔導王は大きな声をあげていた。


「知るかよ」


 バインドの叫びが教室に木霊した。

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