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追放された魔無しの俺にだけ、世界最強の魔法がひざまずく  作者: seisei


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第6話 あの子変、この子も変。なんでだろ? おまえがいうな

「ほう。グレック公爵のアッシュがそんな味な真似をしたと言うのか」


 アテナの報告に武王ザカンスは、吠えるような声で反応した。


 武王の反応に姫騎士アテナは含み笑いを漏らす。


 掴みは良い。


「父上、なぜグレック公はアッシュ君を追放したのでしょう」


 姫騎士アテナは気にかかることを尋ねた。


 情報をたくさん持つ王なら何か知っているかと考えたのだ。


「ただの変人との噂だったが……奮起させるためだろう。その目論見は見事に功を奏したようだ。

 エバンス学園に入学してきた上に我が自慢の娘に、それほど気にかけられているのだからな」


 ニヤリと武王がからかうように笑ってみせた。


 武王の揶揄やゆに周りの重臣達が凍りついた。


「陛下、姫様を焚き付けると、エバンス学園の受験の時のようなはめに……」


 忠臣の諫言かんげんをアテナが大声で遮った。


「アッシュの想い人になって見せますわ。お父様」


 アテナは重臣の言葉を遮るように言った。


 ああ、また始まったとの家臣団の声が聞こえてきそうだ。


 聡い娘は、父の武王の反応で何を望んでいるのか、揶揄やゆするのはなぜか。


 全てを理解し、そして直ちに行動に移すと宣言したのだ。


「色恋は理屈でない。話を聞くに恐らくグレック公の息子は特にその傾向が強いぞ。優秀な上に公爵の血筋、なかなかに良い物件ではあるが、お前にその気持ちが無ければ……」


 親心でつい説教臭くなった武王の言葉が途中で止まった。


 愛娘が顔を真っ赤にしているのだ。


「ふははは、お主ほどの娘がそれほど気になる男か、虜にする前に連れて来い」


 武王は、豪快に笑いながら言った。





 同じ時刻。


 エバンス学園の入学の日の夕刻。


 ここは、ザカンス王国のエルフ領事館のサロン。


 ハイエルフのシア王女と、精霊種の王子ソ•リアルの二人がテーブルを挟んで座り紅茶を飲みながら話していた。


「精霊王子様。今日のあの魔法の挙動をどのように解釈すればよろしいのでしょう?」


 ハイエルフの王女に質問された精霊王子は、穏やかな笑みを讃えて確認する。


「可憐な娘シア王女よ。

 あれは普通ではなかった」


 非常に高い知性を持つ精霊種の王子ソ•リアルは歌うように話す。


 その心地よい旋律にシア王女は笑みを讃えてうなずく。


「はい。わたくしには現象の原理が理解できませんでした」


 シア王女は声を高めて言った。


 微かに目を細める精霊の王子。


「シア姫よ。そなたは充分過ぎるほど知的だ。しかし全てに理屈があるとは限らぬ」


 精霊王子の声はどこまでも穏やかだ。


「ではあれは偶然と仰られるのですの?」


「偶然か……その言葉で許されるならどれほど楽か……」


 精霊王子の眉間に僅かな皺が寄った。


 彼の態度にハイエルフの王女は目を大きく広げた。


「それほどなのですか?」


「魔法の不可思議な挙動は、アッシュ少年と関係があると思う、だが確信は持てない」


 精霊王子の言葉に驚きを隠せずハイエルフの少女は深くため息をついた。


「わたくしもあの方に特別な何かを感じます。あの方そのものの波動なのか精霊の仕業なのか……」


 シア王女は目を伏せつつ言った。


「シア王女よ」


 ソ•リアル精霊王子が声をひそめて呼びかけた。


 その表情が曇る。


「実は姫に重大な使命を伝えなければならぬのだ」


 精霊王子は、とても言いにくそうだ。


 ハイエルフの王女は精霊王子からどんな言葉が出てくるのか眉をひそめて耳を澄ます。


 しばし、二人の間に沈黙が流れる。


 意を決したかのように精霊王子が口を開いた。


「そなたにとっては、禁句に等しい忌まわしい言葉を口にしなければならぬ」


 精霊王子は言い淀んだ。

 

「精霊王子殿下。わたくしはこの汚れた人族の世界に飛び込む時、何もかも覚悟をして参りました」


 決然とした表情でシア王女が答えた。


「ああ、可憐な姫巫女よ。生まれて僅かなお前にこのような試練を課さねばならぬとは……」


 惑乱する精霊王子の言葉を強い言葉でハイエルフの王女が止める。


「殿下。精霊王と我が一族の長からの厳命を我が身にお下しください」


 シア王女は頭を下げて祈るように言った。


 それでも精霊王子ソ•リアルは躊躇いがちにその言葉を口にした。


「アッシュ•グレックの子を為すのだ」


 その言葉はあまりにも小さく聞き取るのが精一杯だった。


 そしてその言葉は劇的な効果をもたらした。


 シアは全身を震わせた。目を大きく見開き、小さな口が開く。


 そのまま硬直した。


 みるみる頬に赤みがさす。


 表情を引き締められず、目尻が下がり口角が上がる。


 精霊王子はシア王女の反応に大きな安堵のため息を漏らした。



☆★☆



 セレン神聖国の公使館のサロンでは、ギネス少年がモンク大使と話をしていた。


 ギネスは今年、神聖国の推薦枠でエバンス学園の特待生として入った少年だ。


「モンク大使。グレック公爵領でのアッシュの行状を仔細に調べて教えて欲しい」


 少年の言葉にモンク大使は眉を顰めた。


「アッシュと言うのはアッシュ•グレック公子のことです?」


 大使の困惑する顔を苛々とした雰囲気で見るギネス。


「裏口入学の疑いがある。魔なしの癖にあまりにも目立っているのが不自然だ」


 大使が首を傾げた。


「裏口入学? そのようなことが可能とは……どのようなことがあったのです?」


 ギネスは学園の受験、今日のSクラスの出来事を説明した。


 それを聞いたモンク大使はふむと頷いた。


「しかし、ギネス様を含め、他の学友の方々の魔法を一度に再現してみせ、それを自然現象だと称する。

 それだけ聞いていても大変な才能とお見受けしますが?」


 大使の言葉にギネスは言葉を詰まらせる。


「トリックだ」


 ギネス少年が苦し紛れに叫ぶ。


「トリックならどなたかが見破っていたのでは? 透視の異能者や魔眼の異能者などがおられるのですよね」


 大使の言葉に口を閉じるギネス少年。


「それで聖女様はどのような反応を?」


 その質問にビクリとあからさま反応を示すギネス少年。


「マリアが変なのだ。奴なんかの何がそんなに気になるのか……マリアらしく無い」


 ギネスの言葉に今度は大使が驚愕した。


「あの清貧な聖女様が? 本当ですか?」


 信じられないと言う顔でモンク大使が聞いた。


「俺はアッシュのトリックを絶対に暴いてマリアに真実を知らしめてやる」


 大使はそれを聞くと僅かに肩をすくめた。


「そうですか。ならば正々堂々と公子と勝負でもするのですな。下手な邪魔立ては聖女からの信頼すら無くしますよ」


 大使が子どもを諭すように言った。


 しかしギネスは何も答えなかった。


 大使はそれ以上言わずに用があるのでと席を外したのだった。


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