第62話 それはダメでしょう
「ギガズ。お前、どのように伝言したのだ。様子を見に行かせた飛竜が、奴はハイエルフの里に2週間も止まって動かないとの報告だ。どうなっている?」
真祖アケマドーレが厳しく尋ねた。
「いえ、急ぐように強く言い聞かせました」
ギガズは地面に頭を擦り付けながら言った。
その姿を見ていたハイエルフの王女シアは、小さくため息をついた。
──このトカゲはきっと偉そうにアッシュ様を煽ったに違いないわ。
シアのそんな思いなど知らぬ真祖アケマドーレ。
「お前だけでは不安だな。そうだ良いことを思いついたぞ」
アケマドーレが巨大な口を大きく開いて言った。
その言葉を聞いてシアは嫌な予感を覚えて叫ぶ。
「待ちなさい。あなた達は本当に人の言うことを聞かない。いいですか、アッシュ様に歯向かってはいけません。あの方の魔法はどんな存在よりも偉大です」
アケマドーレは、そのシアの叫び声に不快そうに眉を顰めて、シア王女の持つ豚と桜のマフコットを睨む。
「小娘、騒ぐな。頭が割れるようだ」
アケマドーレは吠えるように言うと、巨大な首を持ち上げた。
それは山のように巨大だ。
「誰か、殲滅龍ディーガを召喚しろ」
その言葉にシアは息を呑む。
「待ちなさい。殲滅龍ですって、あなたはまさか伝説の邪竜ディーガを復活させるつもりなのですか?」
シアの叫びはしかし真祖アケマドーレの耳には届かなかった。
「ギガズ。お前は飛竜100頭を伴って殲滅龍とともに、そのアッシュとか言う大魔術師を丁重に連れて参れ」
「だから、そんな面倒な龍を派遣して無事に済むはずも……」
しかし、シア王女の言葉を聞く龍は一頭もいなかった。
☆★☆
その頃、アッシュ達一行は、ハイエルフ達に盛大に見送られながらハイエルフの里を後にしようとしていた。
ハイエルフの里人達の先頭に立つサヤ女王が隣に佇む精霊王に向かって言う。
「あれほどの神器級のアーティファクトがあれば、たとえ伝説の邪竜が復活しても負けることはないでしょう」
サヤ女王の言葉に精霊王は頷いた。
「あの方は本当に不可思議な方だ。あの方の周りには妖精たちが自然と溢れている」
精霊王にもアッシュが普通の人ではないと見えるらしい。
ハイエルフの女王は頷いた。
「あの方の魔法の恩恵は、他の方のとは全く違う感じがしますね」
「そう言えば、あまりにも古い記憶ゆえに真偽は定かではないがの、先代様は『古の神代の時代、神々は全てに宿っておった』と言う』
いつも読んで頂きありがとうございます。ブクマありがとうございます。執筆の励みになります。




